- まえがき
- 第1部*人形劇編
- T 人形劇の種類
- U 人形作りの実際
- 1 頭の作り方
- 用意するもの/作り方
- 2 手の作り方
- 3 衣装の作り方
- 4 できあがり
- 5 保育者と作ろう
- 1 フェルト人形
- 用意するもの/作り方
- 2 発泡スチロール人形
- 6 表情の描き方
- 7 舞台の作り方
- 1 けこみ
- 2 背景幕(バック幕)
- 3 そで幕(見切り幕)
- 8 大道具・小道具の作り方
- 1 大道具
- 2 小道具
- 9 脚本の選び方
- V 人形の演じ方
- 1 人形の姿勢
- 2 人形の動き
- 1 歩く・走る・座る
- 2 方向転換
- 3 話す・聞く
- おじぎ/話す/聞く/笑う/喜ぶ/驚く/おこる/泣く/手を上
- W 人形劇の実践例
- 1 保育と人形劇
- 人形と子どもの出会い/人形を使っての遊び/セリフが生まれる/こどもに見せる
- 2 生活発表会で人形劇に取り組む
- 観る側から演技する側へ/お話づくり/紙芝居づくり/素材を決める/お話をセリフにする/役決めをし,練習をする/生活発表会当日
- 3 こどもが演じる人形劇 ―チータロウのぼうけん―
- 4 保育者が演じる人形劇 ―おだんごパン―
- 第2部*紙芝居編
- T 紙芝居の歴史
- U 紙芝居の構成・リズム
- V 紙芝居の演じ方
- 1 話し手
- 2 表現のしかた
- 3 舞台
- W 紙芝居の実践例
- 1 保育と紙芝居
- 1 グループわけ
- 2 お話づくり
- 生活をもとに空想の世界に/こどもの発言を聞きとる/場面ごとに絵にする/登場人物を選択し決める/表現方法を決める
- 2 こどもが作る大型紙芝居
- お話と場面を考える/登場人物と事物の形や色を考える/自主的な練習がはじまる/生活発表会当日/発表会までの留意点
- 3 舞台の作り方
- 材料/道具/作り方
- 4 大型紙芝居の実際
- 1 ブロックロボのぼうけん
- 2 あきらくんとこまのぼうけん
- 5 紙芝居と3歳児
- 紙芝居から劇ごっこへ/登場する動物の面を作る/劇ごっこをする/生活発表会の場で
- 6 保育者の手づくり紙芝居
- 身近な生活を紙芝居に/教訓的なものにならないように/絵は簡潔で遠目がきくように
まえがき
私が通っていた幼稚園は,大阪の吹田市の郊外,千里山の上に建っていた旭ケ丘幼稚園です。今も保育園として現存しています。
園長先生は僧侶であると共に,著名な口演童話家でもある上田顕光先生でした。童話家だっただけに,しょっちゅう童話を聞いた記憶があります。普段大変こわい先生で,そばにも近よれないのですが,童話を語る時の先生はニコニコ顔でしたので,この時間は楽しかったように覚えています。ただ何を聞いたのかはさだかではありませんが,おしゃかさまのことを覚えているので,多分仏教童話だったのでしょう。幼稚園時代に接した児童文化財は,この童話だけのようでした。幼稚園で人形劇・紙芝居を見た記憶は全くありません。紙芝居は街頭で見ました。本文でも記したように黄金バットです。それも小学校に入ってからです。紙芝居の歴史を見ますと,教育紙芝居が登場するのが昭和10年頃です。私の通園していたのは昭和5年頃ですから,保育界には紙芝居はまだ登場していなかったのですね。
人形劇に接したのは,ずっと後の終戦後です。今でも元気でご活躍の松葉重庸先生の移動人形劇場の実演を見たのが最初です。既にこの頃,児童文化に興味をいだいていた私は,人形劇を見ると共に,見ているこどもの表情を見るのも楽しく,人形劇半分,こどもの表情半分と見ていました。人形の一挙手一投足に目を輝かせて見ているこどもの表情,今でも忘れられません。人形劇に興味をいだいたのは,これが一つのきっかけだったように覚えています。
童話に始まり,街頭紙芝居,人形劇……と,児童文化財に接していき,そして,それがだんだん高じてきで,とうとう童話家になってしまいました。
今,こどもの世界は,童話・紙芝居・人形劇・ペーぷさーと・幻灯・テレビ・映画・ビデオ等,文化財に満ち溢れています。
保育者はいつでもこの文化財を自由に選んで,こどもに与えることができますし,こどもも好きな時にそれを求めることは可能になりました。ただ,利用しやすくなるということは,時には貴重な文化財を安直に扱う傾向も出てきがちです。やはり,丁重に,慎重に,十分気合を入れて扱うべきでしょう。
そこで皆様方と共に,これらの児童文化財をもう一度じっくり見直してみるのがいいのではないかと思い,ここに保育技術ハンドブックシリーズとして,3冊の本を出すことになりました。
長年の経験から論理面を私が,保育科卒業の男性保育者第一号であり現在幼稚園の主任として活躍している松永氏が実践面(各W章)を担当し,二人三脚でまとめてみました。この本を手本とするのではなく,皆様方の研究の土台としてお役に立てば幸いと思います。
遅筆な二人を明治図書の石塚氏があたたかく見守りながら,時にはおだてすかし,時には重い尻を叩いて励ましてくださいました。
お陰で,自分の蓄積してきたいろいろの児童文化財を,前まえからいつかまとめてみたいと思っていた宿願を果たすことができました。本当にありがとうございました。
1987年6月 /深川 一郎
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- 明治図書