- まえがき
- 第1章 おにごっこするものよっといで! 遊びの特徴と発達からみるおにごっこの魅力
- 1 シンプルだけどスリルとバリエーションが満載
- 2 おにごっこの特徴をみてみよう
- 事例1 笑顔のおいかけっこ(幼稚園 3歳児 4月)
- 3 「こわさ」は子どもの成長に必要な体験
- 4 おにごっこも成長する?! 年齢でみるおにごっこの発達プロセス
- 5 おにごっこは子どもの学びの宝庫
- 6 魅力あるおにごっこをつくるのは保育者の腕次第
- 7 エピソードから学ぶおにごっこの世界
- 第2章 楽しくて学びがいっぱいのおにごっこをつくる
- 1 おいかけっこ
- おいかけっこで遊ぶ子どもたちの俯瞰図
- @ おいかけっこをし始めた子どもたち
- 事例2 偶然の出会いから始まるおいかけっこ(3年保育 年少 7月)
- A おいかけっこに興味を抱いていない子ども
- B 追いかけられるのをこわがっている子ども
- 事例3 こわいよ!やめさせて!(3年保育 年少 春)
- C 途中から追いかけられるのがこわくなってしまった子ども
- 事例4 楽しかったけれど,急にこわくなる(3年保育 年中 春)
- 事例5 つかまらないところをつくろうよ!(2年保育 年少 夏)
- 事例6 あっオニだ!(3年保育 年少 秋)
- D おいかけっこをみんなで楽しんでいて部屋に戻ってくれない子どもたち
- 事例7 誰が早くできるかな?(3年保育 年少 春)
- E 自閉的な傾向をもつ子どもたち
- 事例8 逃げて!逃げて!(幼稚園 年長 6月)
- ◎遊びのバリエーション
- 2 むっくりくまさん
- むっくりくまさんで遊ぶ子どもたちの俯瞰図
- @ こわがって参加しない子ども
- 事例9 こわくて動けない(3年保育 年少 春)
- A クマにたたかいを挑んでくる子どもたち
- 事例10 退治してやる!(2年保育 年少 春)
- B 異年齢で遊ぶ子どもたち
- 事例11 「去年やったなぁ」(2年保育 年少 春)
- ◎遊びのバリエーション
- ◆コラム@◆ 身体の接触をいやがる子ども
- 3 しっぽとり
- しっぽとりで遊ぶ子どもたちの俯瞰図
- @ 参加しない子ども
- 事例12 先生,行ってくるね!(3年保育 年少 春)
- A しっぽをとられて泣いてしまう子ども
- B しっぽを持ったまま逃げる子ども
- C つかまりたくない子どもたち 〜自分たちの遊び方を生み出すとき〜
- 事例13 オレたちは人間だから!(2年保育 年少 10月)
- D グループ分けがうまくいかない子どもたち 〜強い子ばかり集めたグループをつくっているとき〜
- ◎遊びのバリエーション
- ◆コラムA◆ 異年齢との触れ合い
- 事例14 タッチしていいよ!(3年保育 年中 春)
- 4 ひっこしおに
- ひっこしおにで遊ぶ子どもたちの俯瞰図
- @ 追いかけられるのをこわがる子ども
- 事例15 どこに逃げたらつかまらない?(2年保育 年少 春)
- A やりたくないと言いはる子ども
- B オニになりたがらない子どもたち
- C オニになりたがる子どもたち
- 事例16 「ここは日本」「ここは中国」(3年保育 年中 冬)
- D 走ったり逃げたりするのが苦手な子ども
- 事例17 「森の中のうみってことね」(2年保育 年少 夏)
- ◆コラムB◆ 動物の遊び,ヒトの遊び
- 5 高おに
- 高おにで遊ぶ子どもたちの俯瞰図
- @ 興味をもっていない様子が見られる子ども
- A 仲間入りを拒む子ども
- 事例18 「さんにんしかだめ!」(3年保育 年中 春)
- B 高い場所に逃げたまま動かない子どもたち 〜高おにのルールが決まらないとき〜
- 事例19 「おりなさいよ!」「ずるいよ!」(3年保育 年長 春)
- C オニがまちかまえていて動けなくなった子ども 〜遊びが動かなくなるとき〜
- D 「ずるいよ」「つまんないよ」と言う子どもたち 〜遊びが膠着するとき〜
- 事例20 「どうしておりないの?」(2年保育 年少 冬)
- ◎遊びのバリエーション
- ◆コラムC◆ 保育者のあいだで伝わる「おにごっこ」
- 6 けいどろ(どろけい)
- けいどろ(どろけい)で遊ぶ子どもたちの俯瞰図
- @ チーム決めでいざこざがおきている子どもたち
- A 作戦をたてる子どもたち 〜どうやったら助けられるの?〜
- 事例21 「つかまっていいよ。たすけにいくから」(2年保育 年長 秋)
- ◆コラムD◆ 陣地づくりを工夫しよう
- 事例から考えてみよう! おにごっこにみる子どもたちの学び
- 事例22 走りごっこ(年少 春)
- 事例23 みんなで逃げる(年少 秋)
- 事例24 いざこざからおいかけっこ(年少 冬)
- 事例25 さんにんしかだめ!(年中 春)
- 事例26 「追う」と「逃げる」の交代(年中 秋)
- 事例27 子ども同士の高おに(年長 春)
- 事例28 お姉さんの存在(年長 秋)
- 事例29 何して遊ぶ?(年長 冬)
- 引用参考文献一覧
まえがき
「おにごっこ」はきっと誰もが遊んだことのある遊びです。みんなで走り回った「おもしろさ」とオニの役をひきうけ,一人で立ち向かわねばならないときの「こわさ」とは,私自身が大人になった今でも身体のどこかに残っている気がします。このような複雑な気持ちとともにある,でもとても魅力のある「おにごっこ」について,改めて考え,味わう機会をこの本で頂きました。
保育の場面における遊びとしての「おにごっこ」は,このようなさまざまな感情を味わう子どもたちが,さまざまなことを学んでいく機会としても位置づけられます。実際に,保育場面で楽しまれている「おにごっこ」を見ていると,さりげない保育者の支えにより子どもたちはさまざまなことを学んでいきます。この本では,そのような保育者が子どもたちを理解し,そのときの子どもたちの気持ちにそった遊びを支える営みを「言葉がけ」という視点を中心にみていくことを試みています。保育場面で出会った,「こんなときどうしよう」と迷われるときのヒントになることが見つかるようにと願っています。
ただ,はじめにひとつお断りしておきたいのはご存知のように「こういう子には,このように声をかけましょう」という正解は決してひとつではないことです。そのときそのときの子どもたちの姿,保育の状況から生まれてくる「ものがたり」はひとつとして同じものはありません。そのため,この本ではひとつのことがらについていくつもの言葉がけを考えてみたり,子どもたちの気持ちを理解することを試みることができるような具体的なエピソードから始まっていたりします。これらの言葉がけのヒントやエピソードから,子どもを理解する皆さんの心の中のひきだしが増え,子どもたちと一緒に楽しみ,遊び,学ぶ世界を広げるヒントとなっていることを願っています。
この本をまとめる上で,たくさんの保育場面での「おにごっこ」について語り,教えて下さった林浩子さん,久保寺節子さん,宇田川久美子さん,浅見佳子さんに心より感謝申し上げます。また,長い期間にわたり私に子どもたちの遊びを考える機会を下さっている関本泰子先生,瀬川千津子先生をはじめとする同仁美登里幼稚園の先生方と子どもたちにも心より感謝申し上げます。なおこの本のエピソードは,プライバシーなどを考え,いくつかのものを混ぜ合わせるなどした架空のものとなっており,名前も仮名となっていることをご了解ください。
最後になりましたが,この本を書く機会を下さり,筆の遅い私をあたたかく見守って下さいました明治図書の木村悠さんにも心よりお礼申し上げます。
2010年2月 /岩田 恵子
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- 明治図書