- まえがき
- 第1章 砂場で遊ぼう!子どもの心身を育む砂遊びの魅力
- 1 子どもは砂場が大好き
- 2 発達に応じて遊びも変わる――年齢別で見る遊び方の段階
- 3 砂遊びは季節で異なる――月別で見る遊びの内容
- 第2章 砂場の不安を解消する管理とメンテナンスのポイント
- 1 「砂場は汚い!?」の不安にこたえる衛生・安全のアドバイス
- 2 楽しい砂遊びは環境作りから――チェックシートと道具の一覧
- [コラム] 砂場の枠は特別な境界線
- 第3章 砂遊びがもっと楽しくなる言葉がけと援助のポイント
- 砂場で遊ぶ子どもたちの俯瞰図
- @ 砂場に行こう,砂に触ろう 初めての砂遊び
- (1)砂遊びをしたことがない,経験が少ない子ども・砂に触ることができない子ども
- 事例1 初めて自分から砂に触れたカナ
- (2)様々な理由で砂遊びをしたがらない子ども
- 事例2 チエの作ったケーキを壊してしまったアスカ
- A 砂って気持ちいいな 感覚を育てる砂遊び
- (1)砂の感触を味わっている子ども
- 事例3 ひたすら砂を触り続けるヒロノリ
- (2)砂と水の混ざり合いを味わっている子ども
- 事例4 川作りから泥遊びに発展したヨシオたち
- B 砂場で大発見! 科学する目を育てる砂遊び
- (1)砂で何かを作っている子ども
- 事例5 コーヒークリームケーキを作るマイ
- 事例6 チョコレートケーキを作るイヨとマイ
- 事例7 自分で作った白砂でだんごを固めるオサム
- (2)大きな山作りに挑戦している子ども
- 事例8 空まで届く大きな山作りに挑戦するケイタ
- 事例9 自分たちの掘った穴の深さに興奮するリョウタとタケシ
- C 作って,壊して,想像して 想像力・創造力を育む砂遊び
- (1)山作りをしている子ども
- 事例10 砂をバケツに入れたり小さな山を手で固めるミカとヒロノリ
- 事例11 道具を使って山作りをするタカシたち
- 事例12 山と穴を同時に作るトモヤたち
- 事例13 先生と対話をしながらトンネルを掘るタツヤたち
- (2)作ったものを壊している子ども
- 事例14 おもしろがって山を壊すユウマたち
- 事例15 作った山を壊すヤスシと怒るトモヤ
- (3)見立て遊びをする子ども
- 事例16 「あしゆ」を楽しむアリサ
- 事例17 ケーキ作りをするナルミとヒヨリ
- D 1人でじっくり,みんなで楽しく 1人1人の心と子ども同士のつながりを育む砂遊び
- (1)1人でじっくりと遊ぶ子ども
- 事例18 夢中でどろんこになるエイキ
- (2)先生と一緒に遊ぶ子ども
- 事例19 保育者と一緒に砂に絵を描くタクヤ
- 事例20 無言で穴掘りをするマユコ
- (3)友達とつながっていく子ども
- 事例21 おとなしいアヤノと暴れん坊のヒロキ
- 事例22 砂場で地震を再現するヒサシとタクマ
- (4)遊びが広がる・遊びがつながる――砂場での1時間ウォッチング
- 事例23-@ 泥をチョコレートに見立てるケンタたち
- 事例23-A 掘り出した砂から山作りを始めたマイ
- 事例23-B 山作りから公園作りに発展したユウヤたち
- 事例23-C 道をつなげるフミキたちと嫌がるエリ
まえがき
どこの幼稚園や保育園,公園などでも,子どもが砂遊びをする姿を日々見ることができます。砂遊びは子どもが好きな遊びの1つと言えるでしょう。そして,子どもが夢中で砂遊びをしている姿を見るのは,大人にとっても楽しいものではないかと思います。
私は数年前に,砂場で夢中になって山を作っている子どもたちの姿に心を奪われてから,保育園や幼稚園での砂遊びを追ってきました。大きな山を協力しながら作るなど,ダイナミックに遊びが展開する子どもたちがいるかと思えば,何をしているのかはよくわからないけれど,1人真剣な表情で,ただただ砂をぺたぺた触っている子どももいました。展開される砂遊びの多様さと,遊んでいる時の子どもの表情の豊かさは,未だに私の心を惹きつけています。
子どもたちの砂遊びを見ているうちに,砂遊びのおもしろさは,砂を思い通りに動かせることだけではなく,砂と対話しながら遊びが進んでいくところにあるのかもしれない,と思うようになりました。動かしたり,崩れたりと,遊んでいるうちに起きていく(起こしていく)砂の変化によって,次にどのように砂と関わるかを子どもたちが決めていくことに気づいたからです。また,砂で遊ぶ経験を通して,砂の性質を知り,さらに豊かな砂遊びをすることができるようになっていくこともわかってきました。
同時に,砂遊びが子どもたちにとってより豊かなもの,楽しいものになっていくために,保育者は何をすればよいのだろう,とも考えるようになりました。保育者の方に実際にお話を伺ってみると「遊びを見つけられずにいる子も,砂場に連れていけば遊び出すので,まずは砂場に誘ってみています」という声がよくきかれました。それと同時に,「子どもが砂場にいるのを見れば,とりあえず遊んでいるなって思ってしまいます」「砂遊びが子どもにとって楽しい遊びだということも,様々な側面が育つ遊びだということも,とてもよくわかっているのですが,何が育ったかがはっきり見えにくいので,何をどう援助していいのか困ることもあります」という声もありました。子どもが好きな遊びだからといって,全く関わらなくていいか,というとそうではなく,保育者の関わりによって,ぐっと遊びが深まるようです。だからといって,保育者が関わりすぎてしまったり,口を出しすぎたりしてしまうと,他の遊び以上につまらなくなってしまうようです。子どもたちが好み,よく遊ぶ遊びであるからこその,言葉がけや援助の難しさがあるのかもしれません。
この本では,初任の保育者の方に向けて,砂遊びをしている子どもたちに対する言葉がけや援助をする際のヒントを,事例と共に挙げてみました。ただし,残念ながら,こう言えば(すれば)必ずうまくいく,というものではありません。また,何かを育てるための言葉や援助のような書き方をしている部分も多くありますが,こう言えば(すれば)育つ,というものでもありません。しかし,この本の内容をきっかけにして,砂遊びをする子どもの傍らに身を置き,「子どもたちと砂との対話」に耳を傾けていただければと思っています。そのことによって,この本に挙げた言葉がけや援助よりもずっと,子どもたちの姿に沿った言葉がけや援助が生まれて来ると思うのです。保育者が子どもたちと砂との間の対話を支えていくことにより,子どもたちが満たされていったその先に,結果として様々な育ちがあるのではないかと思っています。
この本が発刊されるにあたり,事例を提供してくださった帝京大学の岡田たつみ先生,砂場で遊ぶ姿を見せてくれた保育園や幼稚園の子どもたちと先生方に,心より感謝を申し上げます。
2009年9月 /箕輪 潤子
-
- 明治図書