一人一人を生かす保育カウンセリングの理論と実践

一人一人を生かす保育カウンセリングの理論と実践

投票受付中

保育者が子どもと親に個別の適切な援助ができるための基本書

保育の場において特別に配慮を要する子どもを含めて子ども一人一人に適切にかかわれるよう、また、親に対して適切な指導援助ができ、さらに子育て相談や保育相談にも信頼が得られるよう、努めることを願いたい。そのために何を知り、何を学ぶとよいかを本書にまとめた。


復刊時予価: 2,618円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: 未販売

電子化リクエスト受付中

電子書籍化リクエスト

ボタンを押すと電子化リクエストが送信できます。リクエストは弊社での電子化検討及び著者交渉の際に活用させていただきます。

ISBN:
978-4-18-907322-2
ジャンル:
幼児教育
刊行:
2刷
対象:
幼児・保育
仕様:
A5判 168頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
第1章 子ども(幼児)を知る
1 子どもを知るとは
2 子どもを知る視点
(1) 発達的にとらえる
(2) 家庭環境との対応でみる
(3) 個人差をみる
(4) いろいろな角度からみる
(5) かかわり・指導援助の手がかりからみる
3 子どもを知る方法
(1) 行動をみる(観る)
(2) 話をきく(聴く)
(3) 絵をみる
第2章 特別に配慮を要する子ども(幼児)を知る
1 発達のつまずき
(1) 発達につまずきのある子とのかかわり
(2) 発達につまずきのある子への指導援助
(3) 周りの子ども(たち)への指導援助
(4) 発達につまずきのある子の親への指導援助
(5) 発達につまずきのある子のきょうだいへの援助
2 障害を考える
3 知的障害
4 自閉性障害(自閉症)
(1) 対人関係(人とのかかわり)の特徴
(2) コミュニケーションの特徴
(3) 行動の特徴
(4) その他
5 注意欠陥/多動性障害(ADHD)
(1) 不注意の行動
(2) 多動・衝動の行動
6 学習障害
7 言語障害
(1) 言語発達遅滞
(2) 音韻障害(構音障害)
(3) 吃音
8 行動問題
(1) 人見知り・分離不安
(2) 選択性緘黙
(3) 登園しぶり
(4) 登園拒否(不登園)
(5) 乱暴行動
第3章 外国人(外国籍)の子ども(幼児)を知る
1 外国人  (外国籍)とその子どもの居住実態
2 幼稚園・保育所の外国籍の子どもたち
(1) 幼稚園・保育所への入園(所)状況
(2) 年齢別幼稚園・保育所入園(所)状況
(3) 国籍別幼稚園・保育所入園(所)状況
3 外国籍の子どもの幼稚園・保育所での生活状況
4 外国人(外国籍)の子どもの保育
(1) 外国人(外国籍)の子どもへの対応
(2) 外国人(外国籍)の子どもの親への対応
(3) 幼稚園・保育所における多文化共生教育の取り組み
第4章 保育カウンセリングを学ぶ
1 カウンセリングとは
2 保育カウンセリングとは
3 保育者による保育カウンセリングの意義と必要性
4 保育カウンセリングの対象
5 保育カウンセリングの扱う内容
(1) 発達の問題
(2) 行動の問題
(3) 生活習慣の問題
(4) 行動習慣の問題
(5) しつけの問題
(6) 家族の問題
(7) 保育・教育の問題
6 保育カウンセリングの方法
(1) 子どもに対して
(2) 親に対して
7 保育カウンセリングの対応
(1) 受けとめる
(2) 聴く
(3) 感じる・分かる
(4) 問いかける
(5) 伝える
(6) つなぐ
8 保育カウンセリングが目指すもの
9 カウンセラー(保育者)としての姿勢
(1) 保育者としての資質を持つ
(2) 人の話を聴くことが好き
(3) どんなときでも受け入れられる心の温かさと広さを持つ
(4) 子どもや親の心を分かろうとする
(5) 気長に見守れる(待てる)
(6) おせっかいでない
(7) 口が堅い
10 カウンセリング・マインドとは
第5章 親とのかかわりを学ぶ
1 親を知る
(1) 親をやる
(2) 子育ての恵み
2 子育て支援を考える
(1) なぜ,子育て支援か
(2) 子育て支援の目指すところ
3 親(家庭)との連携を考える
4 親との対応の難しさを知る
(1) 自分の子を中心に考える親の立場を理解しない対応
(2) 親の気持を察しない対応
(3) 非難されたとの感情を持たせる対応
(4) 親との年齢差がもたらす対応
5 親との対応の基本
(1) 親を否定的に見ない
(2) 親に対し善悪の判断をしない(裁かない)
(3) 親の立場を理解し,受入れる
(4) 話をよく聴く
(5) 指導は具体的に,支持を大事にする
(6) 親を支えることを大事にする
(7) 記録をとる
(8) 秘密を守る
6 親指導の実際
(1) 待つ
(2) 叱る
(3) 認める
(4) 聴く
(5) 話す
第6章 虐待を学ぶ
1 虐待を知る
(1) 虐待とは
(2) 虐待の実態
(3) 虐待の種類
(4) 虐待の実際
2 虐待,なぜ起きるか
(1) 虐待の背景
(2) 最近の子育て事情と虐待
3 虐待,なぜ問題か
4 虐待に気づく
(1) 園(所)の生活場面における観察
(2) 身体測定・着替え時における観察
(3) 親とのかかわりにおける観察
5 虐待にどう対応するか
第7章 心のケアを学ぶ
1 心のケアを知る
2 ストレス反応を理解する
(1) 災害・事故・事件後のストレス反応
(2) 直後から1か月ごろまでのストレス反応(ASD)
(3) 約1か月以降のストレス反応(PTSD)
3 心のケアを考える
(1) 心の傷
(2) 子ども(幼児)の心のケア
4 子ども(幼児)の心のケアの基本
(1) 子どもに安全感を与え,安心させる
(2) 子どもと向き合い,子どもに感情を自由に表出させる
(3) 子どもの活動を確保する
(4) 子どもの気持をリラックスさせ,落ち着かせる
(5) 行動(症状)への対応
(6) 問題に立ち向かう力をつける
(7) 身近な人の死(喪失体験)への対応
5 幼稚園・保育所の対応
(1) 園長・所長の役割
(2) 保育者の役割
(3) 保護者説明会の開催

まえがき

 幼稚園や保育所(民間保育所は一般的には○○保育園と呼称するが,以下ここでは公立および民間を含めて保育所と記す。)における保育は,形の上ではクラスを単位とする集団活動を中心に展開されるが,保育者(幼稚園教諭と保育士を含めて,本書では保育者と記す。)は子ども一人一人を理解し,その上で,子ども個々の発達レベルや発達特性を考慮して保育するよう求められている。また,幼児は発達の過程にあり,心と共に生活面の自立がまだ不十分であるため,保育者の手助けと教え,つまり養護と教育を必要とすることが多く,保育者と子ども一人一人とのかかわりの度合いは,学校における教師と児童生徒とのかかわり合いに比べて,確実に濃密である。

 平成20年3月に改訂された「幼稚園教育要領」(第1章総則)に幼稚園教育の基本として,幼児一人一人の特性に応じ,発達の課題に即した指導を行うことと記されている。また,同時に改定された「保育所保育指針」(第1章総則)にも,保育の方法として一人一人の発達過程に応じて保育することと記されているように,幼児教育・保育は子ども一人一人の個人差や特性を踏まえて保育することを基本としており,保育は個別性の高い営みであると言える。

 ところで,保育の場には発達上の問題や行動上の問題に関して,特別に配慮を要する子どもがいる。保育者にはこれらの子どもへの理解と共に適切な対応が求められる。と同時に,保育者はこれらの子どもの家庭と連絡をとり,家庭における親(親を含めて児童を監護している者を保護者というが,本書では一般的な呼称としての親を使用する。)の子どもへのかかわり方などについて助言や指導をする。

 また,保育者は子どもの養育のことで心配する親から日常的に相談を持ちかけられる。さらに幼稚園や保育所においては子育て支援の一環として,子育て上の問題や保育上の問題に関して在園(所)児の親だけでなく,地域の親からも相談を受け,助言や指導をする体制を整えるよう要請されている。従って,保育者は子どもを保育することの他に親指導,それに親からの相談にも積極的に応じなければならない。

 そこで保育者には,保育の場において特別に配慮を要する子どもを含めて子ども一人一人に適切にかかわれるよう,また,親に対して適切な指導援助ができるよう,さらに子育て相談や保育相談にも信頼が得られるよう,努めることを願いたい。そのために何を知り,何を学ぶとよいか,それに,近年社会問題となっている児童虐待と保育の新しい課題である心のケア及び外国人(外国籍)の子どもの保育の章を加えて本書をまとめることとした。

 なお,本書のタイトルを「保育カウンセリングの理論と実践」とした。「保育カウンセリング」という用語はまだ一般的とはなっていないが,筆者は保育カウンセリングを“子ども及び親にかかわる保育技能の一つと考え,保育者が保育の場で実践するカウンセリング的心と技法を取り入れた個別援助法である。”と捉え,本書を構成した。また,サブタイトルを「一人一人を生かす」とした。保育カウンセリングは個別援助であり,保育カウンセリングは一人一人を生かすことにつながる実践であり,そうあって欲しいとの願いを込めたものである。

 本書に記した事例は,筆者がこれまで相談及び保育の場において,あるいは保育者との研修の場でかかわった事例である。個人情報に配慮して記させていただいた。この書が保育者の皆さん方にとって,子ども及び親に対する個別援助の基本をふり返る書となり,より適切な指導援助を目指す上でお役に立つところがあれば幸いである。


  2009年1月   /浅野 房雄

著者紹介

浅野 房雄(あさの ふさお)著書を検索»

現在 つくば国際短期大学教授(保育科長) 臨床心理士(元茨城県臨床心理士会会長) 茨城県教育庁・電話相談に係る家庭教育特別相談員 茨城県家庭の教育力向上推進委員 茨城いのちの電話研修委員長 湯原病院カウンセラー 下妻小友幼稚園非常勤講師(相談室担当) 下妻市保健センター相談員

略歴 1943年茨城県生まれ 千葉大学文理学部(心理学専攻)卒 栃木県精神衛生センター・栃木県立岡本台病院,茨城県土浦・下館児童相談所各心理判定員 土浦児童相談所指導課長を経て95年より現職

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
    • この商品は皆様からのご感想・ご意見を募集中です

      明治図書

ページトップへ