人権教育を生かした学級づくり2
私を創ったもの
いのちの輝きを綴る

人権教育を生かした学級づくり2私を創ったものいのちの輝きを綴る

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差別と選別の中に生きる子どもたちに真正面から向き合い,その子たちとの格闘を通して,自分を,社会をするどく見つめる著者の生き様は,今をどう生きるかを語りかける。


復刊時予価: 2,926円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-906210-3
ジャンル:
人権教育
刊行:
18刷
対象:
中学校
仕様:
A5判 212頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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まえがき
第1章 安心して自分を開ける場づくり
[1] 本音を語り合う班ノート
ほんまにつながって/ キャッチボール/ 学級通信へ/ 先輩の登場/ 語ろうと思える場を
[2] 言葉は言葉でしかないけれど
二冊のノート/ こんなに面倒くさいことを,なぜやるのか/ なぜノートなのか/ ノートの魅力/ ノートの落とし穴
[3] 学級集団づくりマニュアル手帳
なんのための取り組みか/ ご開帳・マニュアルT〜X
[4] 実践記録によるダイエットのすすめ
なんとブヨブヨ太ってしまったことか/ ブヨブヨの贅肉を筋肉化する実践記録/ したたり落ちるあぶら汗/ ところで今日は,何があったの?/ 日々のダイエットには学級通信を/ 贅肉のない実践はない
[5] 1年9組はアカネいろ
出会い/ とにかく学級に置いといて/ なんであいつだけ……/ 傷つくアカネ/ 問題はやっぱりアカネやな/ 「精神」は「薄弱」じゃない/ うめくように泣いた
[6] 野生の王国3年1組
稔の父の死/ 和也の失敗/ 稔が立つ/ 学芸発表会/ 進路
[7] 3年6組で起こったこと
学級開き/ ヒロシマ平和学習の旅/ 涙の球技大会から助け合い学習へ/ 2学期…サットン学校やめます事件/ どうせ俺はじゃま者やねん!/ 自分を語る学芸発表会へ/ まだまだ続くサットンの綱引き/ サットン,班長に立候補/ 進路学活,ユウコの思いをみんなの問題に/ サットン・イチロウとともにK高校へ/ K高校を断念するジャミ・マッチャン/ 卒業式前日,涙の誓い/ おわりに
[8] 笑って 生活 語ろうや
校区めぐりから発表会へ/ 嵐の夏休み明け/ 文化祭―カズマの分まで/ 父母集会/ 2年生―再びの「荒れ」/ 宿泊学習,クラスミーティング/ 在日を生きる朝鮮人との出会い
第2章 私を創ったもの
[1] 私を創ったもの
――受容と再生についてのお話@――
3年1組学級通信より抜粋/ 人の幸と不幸について/ 人を創るということ
[2] 今ある命を尊敬の対象としてみる
――受容と再生についてのお話A――
カッコイイ/ ミニクイカオモ,ウケトメテルンカ/ カタリニ,カタリカエシテ,ツナガル/ アンタラニナラ,ウラギラレテモイイ/ ヒトトノツナガリハ,ヒトヲイヤス/ ソツギョウブンシュウ/ アタリマエニハナセナイッテ,ナニ?/ ズット,マッテタキガスル/ ニンゲンニ,フノタチバハナイ/ カンケイナイ
[3] 差別の中にいる自分を語ることから
――受容と再生・その前提となるものB――
めっちゃ,しんどい学年です/ やるべきことが,丸見えです/ 課題は何より,まず学力です/ わからん自分が隠せない場をつくります/ まずは班で,つながってもらいます/ 語る気にさせるのが,人権学活です/ もっともっと,打つしかないのです/ ゲップが出たみたいな気分です/ ここからが,はじまりです
[4] しなやかに生きはじめたアキラ
――再び,受容と再生のお話――
僕は自分に誇りが持てません/ 自己肯定だけでは自尊感情は芽生えない/ 何より集団をつなぐこと/ 暮らしを語ることは苦痛です/ 語ることで苦痛でなくなっていくのです/ 生い立ちは自慢話です/ ユウにこだわり続けるアキラ/ アキラはそんなヤツとは違うんじゃ/ ぐにゃぐにゃアキラ
[5] 信頼ということ
つっちい,にんそうわるいから/ ちゃんと顔確かめて,教室行きや/ これで自分を見つめなさい/ ヨンヒの往診/ 拒絶からのスタート/ カンエの涙/ トウコウとの確執/ ヨンヒの本名宣言/ 徹底的な人間への信頼/ 思いが届かぬことを前提にした信頼/ 信頼ゆえの絶望/ 闇からの再生/ 信頼しているから話すのです/ 自分を信頼する力
[6] それぞれの場所で精一杯生きていることを胸に
――受容と再生についての道程――
かわいそうと言ってほしい/ イヤらしいチズ/ 確かな場所がほしいのだ/ 屈折ブリッコ,やーめた/ 一所懸命を一生懸命にやる/ もっと仲良くなろう/ 母が私たちを結びつけたのです/ ヨンヒに言えるのか/ どこにいても心がつながっているから
[7] 過去を受け入れる力
何かが足りない/ 後ろを見るのがこわかった/ 過去を見つめる子どもたち/ 過去とは乗り越えるべきものなのか/ 私が自分の親を見つめるところから/ 学級通信/ 子どもたちの連鎖
[8] 出会い直すということ
めっちゃ,ええヤツなんです/ イツコの変身パートT〜W/ 今,なぜイツコか/ 進路を見つめる中で/ 通信から/ 親としゃべりたがる子どもたち/ イツコの変身パートX
[9] 親に手紙を書くということ
半年に一度の差別事件/ ノンの歩み/ 立ち上がる子どもたち/ なぜお母さんは黙っているの!/ 親に手紙を書こう/ 「親ときちんとむき合う姿」の伝播/ 地域が子どもを育てていた頃/ 孤立する親たち/ 孤立する親を救うもの/ 去った親を見つめる子どもたち/ 学級通信/ けれど……
[10] 母から私へ,私から息子へ
大きく産んで小さく育った息子/ おばあちゃんには内緒やで/ 小学校からの電話/ ぼくはこせいをもっている/ 息子の夢/ 大阪城の崩壊/ 子どもにプレッシャーをかけるな/ 家庭は鍛錬の場だった/ 息子の挫折/ 人生の同志
[11] 受容から再生までの道のり
孤立をあきらめてきた子どもたち/ 孤立をおそれていた子どもたち/ 孤立に気づかぬ子どもたち/ 自分の暮らしを恥じていたヒロ/ 私,生まれてきてよかったんかなあ/ お父ちゃんに言わなあかんやろ/ 父と向き合うということ/ 去った母と向き合うということ/ 母は去ることによって私を育てたのです/ 保護者からの総括/ 受容から再生へ/ 語る力があったから生きてこられた
あとがき

まえがき

 スカートが見つからなくてここ1週間ほど眠れないでいる。綿のスカートにはまだ早いが,厚手のウールでは少々重たいと感じる4月半ば,半年ぶりに薄手のスカートばかりを入れている洋服ダンスを開けた。そのとたん私の目の前には,去年「たかだか夏のスカートにこんな値段は……」と,ずいぶん悩んだ末に手に入れた,お気に入りの麻のスカートが現れた。「あんたをはくにはまだ早い。もうしばらく,ここで待っててね」と,そのフレアースカートと,周りにいた同じく麻のスカートたちに声をかけ,薄手のウールのスカートを何枚か取り出したはずなのだ。

 さあいよいよ麻のスカートがおかしくない陽気になり,例のタンスを開けてみてびっくり,何枚もの麻のスカートがごっそりなくなっているのだ。娘は私とは全く趣味が異なり,Gパンしかはかない。母とはサイズが違う。まさか夫や息子が持ち出すはずもなく,かといってわざわざ泥棒さんが,着物や宝石には目もくれず麻のスカートだけを持ち去るとは思えない。家人はこぞって私の記憶違いだと言い,誰も相手にしてくれない。私はひとり呆然としている。

 2階へ上がってはみたものの,何をしに来たのかわからないなどということはしょっちゅうで,とにかく近々にやらなければならない仕事は全て書き出し,ひとつ終わるごとに消していくということをしないと,落ちてしまう。ひどいときは,その書き出したメモを一日中探しているという日もある。

 待ち合わせの時間が守れなくなった。階段が駆け上れなかったり,手すりを持たないと下りられなかったり,忘れ物に気づいて途中で戻ったり,今開けて入った鍵をどこへ置いたかわからなかったり。最近は,待ち合わせ時間より大幅に早く家を出て,本を読んで待つことにしている。

 老いた。


 そんな時に「今まで書いたものを一冊にまとめてみないか」というお話をいただいた。諸先輩から見ればまだまだ駆け出しの私が,こんなことを思うこと自体,はなはだ生意気極まりないのだが,自分の体力と能力をよく自覚しているものとして,「一度,来し方を振り返ってみるのもよいだろう」という気になった。


 子どもが好きで,おしゃべりが好き。ただそれだけで教員になり,25年が過ぎていこうとしている。この間,私はいったい何人の子どもたちと出会ってきたのだろう。その一人ひとりの子どもたちに支えられて,今私はここにいるのだと,そんなことがよくわかる年になった。自分らしくありたいと願いながら,人と違う自分を恥じ,自分ではない自分を演じている子どもたちがいる。そんな子どもたちが自分であることに安心し,ゆったりと生きてくれたらどんなにいいか。そう願ってひたすら「安心できる場づくり」に取り組んできた毎日だった。人と人とのつながりの温かさを知っていれば,独りで命を絶つことはない。命を全うしてほしい。おおらかに自分を生きてほしい。幸せになってほしい。それだけを思ってきた。そんな25年の,出会いの記録集である。

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