- はじめに
- 第1章 気になる子と受け入れのポイント
- 1.発達障害を持つ子の増加とその原因
- 2.発達障害を持つ子の受け入れにあたって
- (1)必要な発達の評価
- (2)評価には限界がある
- 3.できないのは障害?それとも未熟?
- (1)別の手立てを考えたい
- (2)理解力とは違うものがある
- 4.大切なのはチームワーク
- (1)同じ価値判断で指導する
- (2)子どもの姿を違った目で見る
- 5.保護者との協力
- 6.専門機関との連携
- [コラム1] 「困った親」と育児支援
- 第2章 発達障害とその姿
- 1.ことばの理解
- (1)ことばの理解と4つの段階
- (2)一度に記憶できることばの数
- (3)電車はわかるが「乗り物」はわからない
- 2.ことばでの表現
- (1)ものを、ひとを発見する
- (2)動作で示す
- (3)知らないことばを聞くとまねする
- (4)ことばを確認する
- (5)理由をいえない子どもたち
- (6)理由をいえない子への説明
- (7)なぜ理由がいえないのか
- 3.社会性の発達と判断基準
- T.取るー取られる
- U.いいよーいや
- V.好きー嫌い
- W.勝ちー負け/上手―下手
- X.善いー悪い
- [コラム2] 人との関わりが不器用な子ども
- 第3章 さまざまな発達障害とその特徴
- 1.知的障害
- (1)知的障害の定義と判定の難しさ
- (2)障害の程度による区分
- 2.自閉性障害
- (1)自閉性障害とその判定基準
- (2)強い再現欲求
- 3.注意欠陥・多動性障害(ADHD)
- (1)多動性……落ち着かない
- (2)注意の転導性……興味の対象が変わりやすい
- (3)衝動性……突発的に行動する
- (4)その他の特徴
- (5)ADHDの子は本当にいる?
- 4.学習障害(LD)
- 5.発達性協調運動障害
- [コラム3] 気持ちが伝わりにくい
- 第4章 あなたの保育・子育て相談室・・・Q&A30
- 1 偏食を直したい
- 2 ほかの子の物を取ってしまう
- 3 単語がいえるようにしたい
- 4 こだわりについて
- 5 いっしょにあそべない
- 6 泣いて騒ぐ
- 7 あそびが続かない
- 8 肥満と排泄の自立
- 9 一番にならないと騒ぐ
- 10 運動機能を高めたい
- 11 動き回る子
- 12 絵が描けない
- 13 話せない子への伝達の仕方
- 14 母親の叱り方
- 15 場面の変化に応じない
- 16 反抗挑戦的である
- 17 人の邪魔をする
- 18 昼寝をしない
- 19 睡眠時間が不安定
- 20 乱暴する
- 21 文字や時計にこだわる
- 22 ほかの子を噛む
- 23 ほかの子を罵倒する
- 24 ルールがわからない
- 25 すねる
- 26 自分の世界にいる
- 27 自分から表現できるようにしたい
- 28 進学のこと
- 29 ほかの子が世話をやきすぎる
- 30 障害の説明の仕方
- [コラム4] 文章にまとめる
- 第5章 医療機関におけるスピーチセラピー
- 1.言語聴覚士と子どもたちとの出会い
- 2.子どもの発達を知る検査
- (1)お口の中の検査
- (2)聞こえの検査
- (3)発達の検査
- (4)言語発達の検査
- (5)発音の検査
- 3.スピーチセラピー(言語聴覚療法)の実際
- 4.保育園、幼稚園、学校との連携
- 5.子どもたちの未来と私たちの役割
- 第6章 家族の思い・家族の願い・・・将来の社会参加を期待する
- 1.施設によって変わる指導内容
- 2.先生の悩み
- 3.素直に受け入れる姿勢
- 4.自由にあそばせる指導
- 5.あっという間に終わったセラピー
- 6.変化した保育指針
- 7.根拠のない慰め
- 8.確かな情報を求めて
- 9.親の思い
- 10.本心からの親の願い
- 11.必要な理解を求めての話し合い
- 12.「勉強しない」がいい?
- 13.考え方次第で変わる面がある
- 14.いずれは大人になる子ども
- 15.本当に身に付けさせるべきこと
- 16.いつかわかる日がくる
はじめに
20年余にわたり、週に一日ですが保育園での巡回相談を担当してきました。10年ほど前からは、学童クラブの巡回も行っています。この巡回相談は、本来は発達障害を持つ子が対象です。都内のある区では、一つの園に障害のある子の場合、受け入れはおおむね2人と決まっています。
■増えてきた「気になる子どもたち」
この10年ほどは、発達相談の対象の子が7人や8人ということが当たり前になってきました。いわゆる障害認定を受けていないものの、先生たちが相談したい子が増えてきたからです。その人数が認定を受けている子の倍、ときには3倍となります。一つの園の定員は、120名前後ですから相談の対象がたとえば8名だと、6%をこえることになります。
この本を出版する第一の目的は、通常の発達を踏まえながら、発達障害を持つ子の姿を示すことです。また、基本的な対応法を考えることです。なお、障害がはっきりとしている子ばかりでなく、いわゆる気になる子についてもふれていきます。
第二の目的は、実際に現場で抱えている問題に、できるだけリアルに答えていくことです。発達障害を持つ子についての相談内容は、ことばの発達やほかの子との関係、それに身辺自立や行動の問題など多岐に渡ります。それだけ、現場での悩みは多いともいえます。
ことばの面では「話を聞けない」「ことばが遅れている」「会話が成り立たない」などがあります。
特に最近増えているのが、ほかの子との関係です。「乱暴」が多くなり、次に「いっしょにあそべない」「ルールを守れない」などとなっています。
行動の問題では、「落ち着かない」「すぐに興奮する」「泣いて騒ぐ」「反抗挑戦的」などがあげられます。これらの質問について、巡回相談で筆者が実際に答えた内容などを紹介します。
そのほかの目的として、病院で行われているスピーチセラピー(言語聴覚療法)の姿を伝えることがあげられます。どういうことをやっているのか、園などでよく質問されます。言語聴覚士の願いも含め、久保さんには病院での実際を詳しく紹介してもらいました。
また最終章では、家族の思い、願いについて、岐阜で子育て支援をされている安江さんにまとめていただきました。思いや願いが、ストレートにこころに響いてくる文章です。
この本は、幼稚園・保育園で発達障害を持つ子や、気になる子の保育・指導に携わる方々のために書かれました。また、通園施設などの専門職の方々も想定しました。あわせて、ご家族にも読みやすいものをと心がけました。
この本が、子どもたちの健やかな成長に役立つことを願ってやみません。
この本は、明治図書の真鍋恵美さんの企画から生まれました。子育て真っ盛りの真鍋さんからは的確なアドバイスを受けました。真鍋さんの情熱と支援に対し、三人の著者を代表してこころよりお礼申し上げます。
二〇〇六年二月 子どもたちの健やかな育ちを祈って
編著者 /湯汲 英史
-
- 明治図書