- まえがき
- 第一章 「学ぶ」とはどういうことか
- ・幼児期って遊ぶだけなのか
- ・「学びの過程」とは
- 第二章 生涯学び続ける力を育てるための「学びの過程」
- ・生涯学び続ける力とは
- ・「自ら学ぶ」子どもたち〔事例〕
- ・自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する力――について
- ・「自らを律する」子どもたち〔事例〕
- ・自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性――について
- ・「たくましく生きる」子どもたち〔事例〕
- ・たくましく生きるための健康や体力――について
- 第三章 「学びの過程」を支えるために
- ・「学びの過程」の各段階で大切となる環境構成・教師の援助
- ・アフォーダンス理論でみる「子ども」と「環境」の関係
- ・アフォーダンスと教育環境
- ・アフォーダンスと教師の援助
- 第四章 教育課程の土台となる発達特性の見通し
- ・「教育課程の土台となる発達特性の見通し」ができるまで
- ・「発達特性の見通し」と各年齢の特徴
- ・三歳児について
- ・四歳児について
- ・五歳児について
- ・「発達特性の見通し」ができた成果
- 第五章 教育課程と指導計画
- ・教育課程を作るにあたっての考慮点
- ・本園の教育課程
- 本園の教育課程の特徴
- 「期」と「変わりめの目安」
- 教育課程の不易の土台としての「学びの過程」
- ・本園の指導計画
- ・本園の教育課程
- 三歳児・すみれ組
- 四歳児・もも組(新入園児)
- 四歳児・さくら組(進級児・新入園児混合)
- 五歳児・きく組・あやめ組
- ・本園の指導計画
- 三歳児・11月
- 四歳児・11月
- 五歳児・11月
- 第六章 見通しの中で援助する教師
- ・本当に子どもが見えているか
- ・小学校教諭から幼稚園教諭になってわかったこと
- ・教師自身が変わる
- 第七章 保護者との連携
- ・保護者との関係
- ・保護者も共に育つ
- ・わが園での子育て支援について
- ・園長・副園長との懇談
- ・お誕生会の保護者の参観とその後の交流会
- ・降園時の担任からの話
- ・学級通信・学年通信・保健だよりなどの配布
- 第八章 幼稚園と小学校の連携
- ・小学校低学年・高学年の学級崩壊から学ぶ
- ・附属小学校との連携
- あとがき
まえがき
最初にお願いさせて下さい。本書の扉の裏の図表を、まず、じっくり眺めていただけないでしょうか。眺めながら「そうかなあ」と疑問を感じられる用語や位置づけがあるかもしれませんが、たった一枚の紙面に幼児期の三年間の育ちをすべてひっくるめて表現しようとした限界を大目にみて、見逃して下さいませ。
そして、頁をめくっていただくと、まあ! 出てくるわ! 出てくるわ! 同じ言葉と同じ図表が!
「学びの過程」という言葉と、この図表の内実となる事例や理論が終始一貫、繰り返し出てくるのに、お気づきになるでしょう。そうなのです。これが「本を書こう!」ということになった動機なのです!
「子どもが無心に遊んでいる」かのように見える活動のなかに、たくましく生きる力の原動力となる「自ら学ぶ」力がどのように育っているのだろうか? という問題意識をもって研究に取り組んだのは四年前のこと。
その問題意識をもって観察していると、子どもも大人も何かを「真に自分のものにしていくとき」つまり「学ぶ」ときは共通の道筋をたどることが見えてきました。その道筋を「学びの過程」と呼ぶことにしました。
人間は、幼児期から学びたがっている! 学んでいるときは真剣である! 三歳の子ども・四歳の子ども・五歳の子どもは、関心のもち方が確実に変遷していくけれど、「学ぼう!」とする意欲と、「学ぶ」営みは共通している。
そんな事実が明らかになっていくと、「発達特性」も明白につかめるようになったのです。
本書は、三年間かけて観察と文献研究から発見してきたことですが、不思議なくらい、二〇〇〇年からの幼稚園教育要領改訂のポイントと共通しています。新しい問題意識をもつ方々が、きっと様々の箇所で共感して下さるのではないかと期待し、最初の図表とその由来を述べた第一章からお目通し下さいますようにお願い申し上げます。
二〇〇〇年一月 滋賀大学教育学部附属幼稚園園長 /相良 敦子
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- 明治図書