- 提起文 算数授業―今、身につけさせたい「学び方」
- 出会いは価値観を共有する時間 /田中 博史
- 特集1 算数授業―今、身につけさせたい「学び方」
- 「学力」「学欲」を育てるEverydayMath /柳瀬 泰
- 能動的な学び(「あ・い・う・え・お」の聞こえる授業)を鍛える /宮本 博規
- 聞く側に立ち、短く切って、相手の反応を確認しながら説明する /真鍋 伸明
- 特集2
- 私のノート指導
- 考えた跡は、活用できる知識や考え方の宝庫 /夏坂 哲志
- 自分の考えをノートに表現する力 /中田 寿幸
- 私の発表のさせ方・聞かせ方
- 「話したい」「聞きたい」と積極的に関わろうとする子どもを /永田 美奈子
- 「形式」ではなく,「目的」を意識した指導 /山本 良和
- 4・5月教材攻略法
- 1年いくつといくつ /三田 美乃里
- 2年誕生月調べ(ひょうとグラフ) /中村 光晴
- 3年かけ算 /加藤 彰子
- 4年わり算の筆算 /橋本 哲志
- 5年小数のかけ算 /伊藤 幹哲
- 6年倍数 /千々岩 芳朗
- コラム
- 子ども発見! /渡部 恵・小野塚 恵
- 基幹学力研究会 新潟浜浦小学校大会報告 /尾ア 正彦
- 新潟サークル・国語、算数の本づくり奮闘記 /間嶋 哲
- リレー連載
- 副編集長のリレー連載 /盛山 隆雄
- 連載
- 田中博史の算数授業づくり講座123 /田中 博史
- 提言
- 算数は、世界共通語の「科学の言葉」 /町田 彰一郎
- 「算数・数学教育における表現体系」の活用 /中原 忠男
- グラビア
- 基幹学力研究会 新潟・浜浦小学校大会 :構成 /尾ア 正彦
- 提起文 国語授業―今、獲得させたい「学び方」
- 子どもたちに「学び方」を獲得させよう /二瓶 弘行
- 特集
- 国語教育における「学び方」学習の意義
- 「学び方」は、「真の学びの経験」によって身に付く /真鍋 佳樹
- 音読・朗読・語りの仕方
- 音読から朗読、朗読から語りへ /片山 守道
- 発言の仕方・聞き方・話し合い方
- 「獲得させたい学び方」とは /齋藤 純一
- ノートの書き方・使い方
- 3LS(スリーラインシステム)で学びの「習得」「活用」「メタ認知」を /森川 正樹
- 「明日」の国語授業を創る
- 物語 この授業で「言葉の力」をつける
- 子どもどうしのかかわりを生かす /中尾 真
- 説明文 この授業で「言葉の力」をつける
- 序論と結論から、本論の内容を予想して読む /井上 幸信
- 書く この授業で「言葉の力」をつける
- 書き慣れた筆速力こそ国語の授業の源である /芦川 幹弘
- 聞く・話す この授業で「言葉の力」をつける
- 簡単!5W1Hプラスワンインタビュー /小林 康宏
- 古典・詩・俳句 この授業で「言葉の力」をつける
- 俳句づくりは創った後が楽しい〜句会で伸びる俳句創作力〜 /田ア 伸一郎
- 漢字 この授業で「言葉の力」をつける
- 新出漢字は「文章作り」を通して /広山 隆行
- 特別企画
- 第7回基幹学力研究全国大会の感想 /長谷川 水緒・高橋 啓介
- ミニ連載 高知からの発信C
- 国語と算数教師ともに生きる熱き日々 /藤田 究・田中 元康
- リレー連載
- 仲間とともに学ぶ /灘本 裕子・中塩 曜子
- 二十代先生の国語授業日記 /出口 尚子
- 若き国語教師への手紙 /白石 寿文
- 国語授業は故郷を変える 研究主任奮闘記 /森 裕子
- 国語授業は学校を変える 指導主事奮闘記 /近藤 健一
- 連載
- にへいちゃんの国語教室通信 /二瓶 弘行
- 青木伸生の国語教室創造記 /青木 伸生
- 提言
- 「書く」活動の重視を /梶田 叡一
- 論理的な思考力・表現力の育成―根拠と理由を分けて主張しよう― /鶴田 清司
- グラビア
- 1年生はじめての公開研究会 :構成 /青木 伸生
算数 [提起文] 算数授業―今、身につけさせたい「学び方」
出会いは価値観を共有する時間
筑波大学附属小学校 /田中 博史(写真省略)
4月は、新しいクラスの子どもたちとの出会いのとき。
これから1年間つきあう子どもたちに新しい友だち、新しい担任と創る世界への期待を持たせる時間。大切な時間である。
昔から出会いの1か月、さらに3か月がすべてを決めるとも言われてきた。
だが、このとき、同時にきちんと「教えなければならない」ことがある。
それはクラスの仲間と担任教師とつくる約束。いや生活の土台となる学級での価値観の共有の時間と言い換えた方がよいだろうか。
ここで示す教師の価値観は、直接学級経営の指針にもなる。子どもたちに学級指導などの時間を通じて語りかけることも必要だ。
しかし、よく考えると、子どもとのつきあいの時間で、一番長いのは実は授業の時間である。
だから授業を通して伝わる教師の価値観のほうこそが子どもたちには一番実感を持って伝わるものだと私は思っている。
このときの教師の価値観は、先の学級づくりの価値観と一致していなければならない。
生活では、自由にアイデアを表現することを求めているくせに、授業になると教師の一方的な説明で終わっていたのでは、子どもたちは最初の約束を疑ってかかる。
大人は知らず知らずのうちに、重要だと思っているところで、本音を出しているから気をつけた方がいい。子どもはそれを敏感に見抜く。
その意味では、「学び方」を子どもたちに伝える時間は、そのクラスのすべての土台となる個々の意識、集団の風土、そして個と個の人間関係づくりにおいて、大切な価値観を伝えている時間となっている。
やはり授業こそが命。心して取り組むべし。
算数の「学び方」
このような大切な意味を持つ授業における「学び方」を教える時間について、本号は特集を組んだ。単に学習の効率を高めることだけが目的ではないのである。
さて、一口に「学び方」と言ってもいろいろな視点がある。
授業への取り組み方の約束という意味だけで考えても、荒く分けて個人としての約束、集団としての約束と2つの面がある。
さらに、それぞれの場合の形式的なルールを教える場合と、「心」を教える場合に分かれる。
ちなみに私は個人的には、あまり形式を早い段階から教えることは好きではない。
学びの形式を教えることは、速い変化を子どもの中に起こすことはできるけれども、子どもたちがその形式から脱却できないことが多いこともよく知っているからだ。
仮に形式を教えるにしても、細かなルールにしないで、いずれは子どもたち自身が変えていくことができるようにと意識した伝え方の方がいいと最近は考えるようになった。
個人を育てる場面に絞っても次の3つの場面が考えられる。
◎発表の仕方
◎友だちの発表の聞き方
◎ノートの取り方
これらは子どもが授業に参加するときに、必ず必要な技術だが、この3つの面だけを考えただけでも、教師の価値観によって方法はいろいろである。
発表は挙手されて行うのか、自由に行っていいのか、立ってするのか、座ったままでいいのか…。
聞く時は、発表者の方を向くのか、記録をとりながら聞いていいのか、反応を返すのか、返さないのか…。
ノートはどのように書くのか、定規を使うのか、フリーハンドでいいのか、黒板を写すだけでいいのか…。だめならば何をどのように書くのか、いつ書くのか…。
どうだろう。これだけを考えても、指導者側に確固たる信念が必要であることがわかる。
だが実を言うと、私自身は、最近はこのようなルール作りを早い段階からしていない。
算数の場合は、大切なことは、いかにして子どもたちを自然体にするかだと思っているから、出会う子どもたちのパワーに合わせて形式を取り入れたり、ルールを開放したりしている。でも、若き読者の先生方には私のこの方法はお勧めしない。ある程度経験を積んでからの方が、クラスが混乱しなくていいだろう。
その意味では、ルールを早い段階で決めるのは若い教師にとっては楽である。しかし、医学と一緒で効果の早い方法には必ず副作用があるもので、楽な指導方法には欠点もあることを知っておいてほしい。それをよく理解した上で、バランスよく方法を活用するのがいい。さらにもう1つ。昔うまくいった方法が新しい子どもに通用するのかどうかを考えることも必要だ。
都会で学級崩壊している教師が新人だけではないことをご存じだろうか。出会う相手に合わせて必要な方法を学び取り入れていくのは、教師にも必要な学び方である。特集2では、日々子どもたちと授業をしている先生たちにノートの指導だけに焦点を絞って紹介してもらっている。それぞれの読者の先生が、必要感に合わせて選んで活用するといい。
私はこの春、3年間もった子どもたちを卒業させたばかり。そして新しく出会うのは何と1年生。本当にゼロからの出発である。
本誌が世に出るころには私も6歳の子どもたちとの出会いに悪戦苦闘していることだろう。新しい時代の子どもたちには新しい方法が必要だ。私も模索の春になる。
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- 明治図書