基幹学力の授業 国語&算数12
“学習の基礎技能”を多用する学力づくりの授業

基幹学力の授業 国語&算数12“学習の基礎技能”を多用する学力づくりの授業

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『反復』学習を成功に導くアイデア満載!

基礎的・基本的な知識・技能をより確実に子供たちに身につけさせるためにはどうすればよいのか。その一つの方法は『反復』学習。新学習指導要領における「スパイラル」の解釈から、計算・漢字練習の具体的なアイデアまで、『反復』学習を成功に導くアイデア満載です。


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ISBN:
978-4-18-887218-5
ジャンル:
授業全般
刊行:
対象:
小学校
仕様:
B5判 72頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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算数
提起文 スパイラル指導にすると定着する算数の基本
「スパイラル指導」の解釈で試される教師の教育観 /田中 博史
特集1
スパイラル指導に求めるもの
同一内容を発達段階に応じた指導方法で /赤井 利行
使える基礎技能の獲得のために
「なぜ」の説明を通して、使える基礎技能を獲得する! /盛山 隆雄
特集2
1年の計算指導 /中田 寿幸
2年の計算指導 /奈良ア 芳晴
3年の計算指導 /金澤 央広
4年の計算指導 /山本 良和
5年の計算指導 /羽染 聡
6年の計算指導 /植松 仁
9・10月教材攻略法
1年 かたち
まず、絵や図で表してみよう! /大桑 政記
2年 計算のしかたをくふうしよう
追究型計算練習 /小松 信哉
3年 あまりのあるわり算
ぴったり分けられなくてもわり算なの? /東郷 佳子
4年 面積
試行錯誤の体験を通して、豊かな量感を育てる /竹尾 智登志
5年 分数
大きいのはどれ? /尾崎 伸宏
6年 平均
何人乗れるの? /千々岩 芳朗
リレー連載
基幹学力研究会サークル報告記 /尾ア 正彦
若手教師の奮闘記 /木下 幸夫
副編集長のリレー連載 /夏坂 哲志
連載
田中博史の算数 /田中 博史
アメリカにおける教育改革 その1 /村田 亜季
提言
評価にこだわることと、習得・活用・探求のバランスを /加藤 明
多様性を大切にしよう /長崎 栄三
リレー連載
国語教師から算数教育へ /浜本 純逸
グラビア
ITCを算数授業に生かす:構成 /夏坂 哲志
国語
提起文 反復して『習得』させたい国語科の基礎・基本
「生きる力」としての国語の「基礎・基本」を /二瓶 弘行
特集 反復して『習得』させたい国語科の基礎・基本
「読むこと」物語 低学年 /田中 元康
「読むこと」物語 高学年 /松岡 俊宏
「読むこと」説明文 低学年 /岩崎 直哉
「読むこと」説明文 高学年 /佐藤 浩一
書くこと 低学年 /森川 正樹
書くこと 高学年 /福田 秀貴
「聞くこと・話すこと」 低学年 /小林 圭
「聞くこと・話すこと」 高学年 /田ア 伸一郎
音読・朗読 /片山 守道
語り /城戸 睦美
漢字 低学年 /広川 隆行
漢字 中学年 /中尾 真
漢字 高学年 /遠藤 裕一
言語事項 低学年 /小田 浩平
言語事項 中学年 /菊地 英慈
言語事項 高学年 /藤井 大助
「明日」の国語授業を創る
物語 この授業で「言葉の力」をつける
読みの観点を活用する授業づくり /永井 弘毅
説明文 この授業で「言葉の力」をつける
多様な説明文を利用して……「必要感」をもって文章を読むことで力をつける!! /井上 幸信
書く この授業で「言葉の力」をつける
「たとえ」を使って書く /真鍋 佳樹
聞く・話す この授業で「言葉の力」をつける」
生きた感想交流を毎日こつこつ積み重ねる /山本 敦子
古典・詞・俳句 この授業で「言葉の力」をつける」
物語をズバリと表現しよう〜「夏のわすれもの」での俳句づくり〜 /武市 親典
漢字 この授業で「言葉の力」をつける
楽しみながら漢字の構成を見抜く力をつける /豊田 益子
リレー連載
二十代先生の国語授業日記 /堀江 尚子
若き国語教師への手紙 /大西 多江子
国語授業は学校を変える 研究主任奮闘記 /小林 洋之
国語授業は故郷を変える 指導主事奮闘記 /齋藤 純一
連載
にへいちゃんの国語教室通信 /二瓶 弘行
青木伸生の国語教室創造記 /青木 伸生
提言
「言葉の力」の豊かさと確かさと /梶田 叡一
グラビア 野火っ子たち4年生
初めての公開授業研究会:構成 /二瓶 弘行

算数 [提起文] スパイラル指導にすると定着する算数の基本

 「スパイラル指導」の解釈で試される教師の教育観   /田中 博史


1 スパイラル指導と、算数教育観の成熟

 スパイラルという言葉から、どのような学習を想起するだろうか。

 同じ学習をともかく反復練習すると言うイメージが浮かばないだろうか。小学校教育においては、確かにそれもある一時期必要なのだろうとは思う。例えば一位数同士の加減、九九を覚えるなど、いやもっと広く言うと、初めて学んだものを自分の身につけるには、どうしても反復練習は必要なのである。

 しかし、それは当たり前のことであり、今更、取り立てて言うほどのことだろうか。

 そして、その重点化はかつての「追いつけ追い越せ時代」の日本の教育が散々行ってきたことであり、既に日本の教育は体験済みである。その結果がどうだったかというと、計算力は確かにあるが「使えない学力」「勉強嫌い」「指示待ち人間」を大量に生み出してきたのではなかったか。

 教育界の人間は、百マス計算に代表されるように、ともかく子どもが黙々と何かに集中して取り組んでさえいれば、安心する傾向がある。あの静かな教室に鉛筆の音だけが走る時間に酔いしれるのである。でもそれは懐かしき時代の郷愁に浸る方たちの「教育観」だ。反復練習に精力をつぎ込めば、確かに今の3割削減時代よりは、子どもが少しはたくましくなるだろうが、これまで言われた課題の解決にはならないではないか。これまでの反省点をどのように活かすのかを考えた反復練習の新しい提案をして欲しいと思うのである。

 これまで、ある部分だけに特化して鍛えた力が他にどのように転移されて生きるのかについては、真剣に吟味されたことはないのではないか。いやあるとしてもその研究はまだ充分ではないだろう。

 私は算数でも表現力育成の研究をしてきたが、例えば国語の朗読がうまい子が算数の時間も話すことが得意であるかと言うと、そうではないとはっきり断言できる。

 私はNHK教育テレビ番組を4、5年レギュラーでやってきたが、その中で授業した子どもたちの多くは劇団の子どもたちだった。芝居をやらせれば、見事な台詞回しだし、感情を入れた表現も巧みである。しかし、台本のない私の番組の収録になると、途端に幼くなる。あの堂々とした表現力は何だったのだろうかと思わせるほどに、拙くなる。要するに予め用意したものを表現するのと、その場で考えたことを表現するのでは、まったく能力は異なるものを使っているのだということがわかる。算数に限定して言うと、計算だけに特化して計算の天才を生み出したとしても、その計算を具体的場面に適用して使う能力となると、まったく異なってしまうのと似ている。その「つなぎ」をどのようにするのか、方法はいろいろだろう。

 一つは「基礎技能を定着してから使う場面をたくさん経験させる」というこれまでどおりの方法だ。もう一つは「基礎技能を定着させる段階から使い方を意識させる」という方法である。前者のほうが定着には能率がよい。しかし、それで「使える力」は育たなかったではないか。ならば、今度は別の方法を考えてみよう。それが今回の指導要領でも、「活用」と「基礎技能の反復による定着」という二大キーワードに込められた想いだと解釈した。日本の算数教育感は、未だ成熟しきっていない。このスパイラルをどのようにとらえるかで、日本の算数教育が前進するか、はたまた再び訓練学習に没頭する時代に戻るのか、大きな分かれ目になる。本号では、この大きな変化につながる指導要領のキーワード、「スパイラル」について、特集を組んだ。

 さらに、この言葉によって影響を受けると思われる計算指導について、どのように考えていくべきなのかについて、基幹学力研究会の精鋭たちによって提案してもらっている。

 さてさて彼らの算数教育観の成熟は如何に。


2 複数学年にまたがって学習することの価値

 と述べてきたが、実は今回の指導要領には、この反復が複数学年にまたがって学習することだといっていることに注目したい。

 これは、先ほどまでの私の心配を少し軽減してくれる言葉である。

 これまでの算数のカリキュラムは、その学年で習得しないとあとから取り返すことがなかなか難しい構成になっていた。ある意味断片的だったといえる。それが今回は、複数の学年にまたがって少しずつ成長していくことを求めているところがよい。それも、まったく同じことを学習するのではなく、少しずつ視点も変化したり、内容も深まっていくようにと構成されている。この信念がそのまま実現されれば、すばらしいことである。人間が物事を学ぶときには、その場では明確に分からなくても、繰り返し使っているうちに、その意味が見えてくることもある。

 ある方向で考えているうちには、わからなかったけれど、別の場面で教えてもらったら、意味が結びついてすっりしたという経験もある。

 スパイラル指導が、このような概念で取り入れられるのなら、子どもたちにも優しい指導理念になると思う。

 内容がどっさりと増えて、それだけでも子どもたちにも負担は大きい。さらに現場の教師たちの負担も大きくなるだろう。

 そんな中で、このスパイラルというキーワードが子どもにとってどのような環境をつくりだしてくれるのだろうか。

 内容の定着に追い立てられたゆとりのない教師による冷たい単なる反復学習の時間の増加となるのか、本質を見極めて、ゆったりとした成長を見守る教育観の中で育つことにつながるのか、大きな違いである。その意味では、これから本当の意味での教師の力が試されるのではないかと私は真剣に思う。本号がそんなことを考えるきっかけになるとうれしい。

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      明治図書

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