- 第T章 生活指導の目的
- 一 生活指導とは何か
- 生活指導か生徒指導か
- 生活指導とは何か―学校教育の構造
- 能力主義の教育
- 差別による人格支配
- 能力主義による人格形成
- 軍国主義的人格づくりとのかかわり
- 二 民主的人格と民主的思想の形成
- 知的教養と人格
- 人格とは何か
- 民主的主人としての能力=統治能力と全面的発達
- 生活認識の指導と思想形成
- 生活認識の指導の問題点
- 民主的思想形成の原則―見とおしの体系
- 見とおしの体系と集団づくり
- 三 人格形成と集団づくり
- 人格形成のすじみち
- 学習指導の独自性
- 環境の変革と自己変革
- 集団づくりの必然性
- 集団の教育的必要性
- 集団のちからと指導・管理
- 基礎的集団
- 校内諸集団
- 生活指導と民主勢力
- 「要求の組織化」について
- 第U章 学級集団の指導とその発展
- 一 民主的集団と教師の指導
- 集団づくりのテーマ
- 集団とはちからである
- 学級集団
- 民主的集団とはなにか
- 集団に対する教師の指導
- 二 集団における指導と管理
- 集団は指導を必要とする
- 指導は本来、集団の外側のものである
- 指導の自己指導への転化―指導の発展
- 指導と管理との癒着=管理主義
- 管理は本来、集団自身のものである
- 自主管理の発展
- 三 学級集団づくりのすじみち
- 集団の発展段階
- 学級集団づくりの三つの側面
- 班づくり
- 核づくり
- 討議づくり
- 学級集団づくりのすじみち
- 学級集団づくりの課題
- 第V章 学級集団づくりの方法 その1
- ―よりあい的段階―
- 一 班づくり
- 1 班とはなにか
- 班は集団を教えるための道具である
- 班と学級集団との関係
- 2 班の編成
- 班はいつつくるか
- 班をどうつくるか
- 班の数と人数
- 男女混合
- 班編成にあたっての教師の要求
- 3 班の活動
- 実践の広がりと行動の優位
- 班はどんな活動をするのか
- 学級のしごとの種類
- 当番活動と係活動の位置づけ
- 係活動の発展
- 指導と管理はだれが行なうか
- 4 班競争と班の評価
- 班競争をどう組織するか
- 班の評価
- 5 集団の認識と班の編成替え
- 班替えのモメント
- 班替えで何を教えるか
- 6 班長による班編成
- その意味
- 班長立候補制の導入過程
- 班長選出の形式
- 班の編成
- 二 核づくり
- 1 核とはなにか
- 指導は集団内部のちからに依拠する
- 核のイメージ
- 核の指導
- 2 核の予想・発展
- 核の個人的影響力
- 核の予想・発見における着眼点
- 3 核にたいする個別的接近
- 個別的接近とはなにか
- 核の個人主義的性格
- 4 班長会へのアプローチ
- よりあい的段階における班長会とは
- 班長会における指導
- 班長のリマール
- 男女二名の班長制
- 三 討議づくり
- 討議づくりとはなにか
- 1 総会の指導
- 総会は集団の意志ちからの表現である
- 総会準備過程での原案
- 原案作製の手順
- 総会討議・決定過程の指導
- 討議の二重方式と班一票制
- 総会場面での教師の指導
- 総会決定の実行過程の指導
- 2 日直の指導
- 管理の三要素
- 日直の実践形態
- 管理目標について
- 日直のしごと
- 日直に対する逆点検
- 3 追求とリコールの指導
- 追及とはなにか
- どのように追求するか
- 第W章 学級集団づくりの方法 その2
- ―前期的段階―
- 前期的段階
- 一 核の確立
- 1 班長立候補制の採用
- 班長立候補者の出現
- 集団が実質的に班長を選びきるとは
- 2 班長会の確立
- 核の確立
- 班長会の指導
- 前期的段階の班競争
- 班長会の確立
- 班長リコール
- 3 指導部の成立
- 核の確立
- 班長と核の分離の実践的局面
- 二 核の発展
- 班長と核の分離
- 指導部の発展
- 指導的核と行動的核への分離
- 三 前期的段階における取り組み領域の拡大
- 家庭生活への取り組み
- 児童会・生徒会・地域青少年組織
- 第X章 教科指導と学習集団の指導
- 一 授業における訓育のありかた
- 学校教育の基本構造
- 教科指導と生活指導の混同
- 教科指導の構造
- 授業における認識過程
- 授業における集団過程
- 授業における訓育
- 二 学習集団の指導と自己指導
- 自治的集団と学習集団の相違
- 「学習集団づくり」という用語法
- 学習集団の指導と自己指導
- 学習集団における小集団の問題
- 説明と学習集団の指導
- 問答と学習集団の指導
- 討論と学習集団の指導
- 学習集団形成の課題
- 第Y章 集団の遊び・しごと・行事
- 集団の民主的改造と集団生活の文化的向上
- 文化的活動の質を高めていくこと
- 文化的活動の組織論
- 集団遊び
- 集団遊びの具体例
- 学級集団のしごと
- 係活動から部活動へ
- 行事の教育的意義
- 行事の組織原則
- 第Z章 全校集団づくりと児童会・生徒会活動
- 児童会・生徒会民主主義の教育的意義
- 主権者としての統治能力の基礎の形成
- 全校集団づくりの三つの側面
- 全校集団づくりの発展段階
- 全校総会の指導
- 全校総会と週番活動
- 代表委員会と核づくり
- 児童会・生徒会役員会および代表者会の指導
- 基礎的集団の指導と教師集団
- 基礎的集団への転化
- 付録
- 1 参考文献
- 2 全生研の歩み
- 3 全生研指標・会則・会員の権利と義務
第二版 まえがき
旧著『学級集団づくり入門』が刊行されたのは、一九六三年のことである。ちょうど生活指導運動が、「仲間づくり」とよばれた実践から「集団づくり」とよばれる実践に移行した時期のことであった。旧著は、民主主義的、集団主義的な学級集団の形成にとりくんでいた実践を理論化したものであり、当時としては先駆的な業績であった。それは、特設道徳――生徒指導体制に反対して民主的な学級集団の形成を追究してきた数多くの教師や教育者に迎え入れられて版を重ね、一九七〇年までに二万数千部の発行をみたのであった。
このように、この八年間、旧著は生活指導運動の発展に少なからぬ寄与をなしたが、しかし、この間における生活指導運動の発展には、旧著の理論的成果をはるかに越えるものがあった。
まず第一に、運動の拡大と発展のなかで、生活指導とは、子どもたちの手で民主的な集団のちからを確立させることであり、そのことによって子どもたちを民主的な集団のちからの自覚的なにない手に育てあげていくものだと考えられるようになったことである。いいかえれば、それは、子どもたちに民主的な集団のちからの行使・表現を教えることによって、子どもたちのなかに集団の民主的主人としての自治能力と自覚とを、ひいては、民主的主権者としての統治能力と自覚とを育てあげる教育的いとなみだととらえられるようになったことである。
第二に、右のような原則的な観点にたつとき、集団づくりとはまさに民主的な集団のちからを確立していくことであって、心理的人間関係の調和をはかっていくことではないということが、これまでになく鮮明になったことである。旧著にはまだ幾分か「仲間づくり」「ヒューマン・リレーションズ」的な発想が残っていたが、こうした発想は、集団づくりの把握の深化と特設道徳――生徒指導体制にたいするたたかいの発展のなかで克服されたことである。
第三に、学級集団づくりの実践と研究の発展の結果、旧著では十分に明らかにしえなかった学級集団づくりのすじみちを前期的段階にいたるまで実践的に検証しえたこと、さらに学級集団づくりの周辺の問題、たとえば、学級集団づくりと学習集団の形成との関連性、文化活動・行事活動の問題、全校集団づくりの問題などが相当程度解明され、民主的学校の全貌がかなり見えはじめたことである。生活指導運動は、こうした成果にたって教育改革案の反動的学校観に対置して民主的学校観を提起できる日がそう遠くないと確信している。
本書は、このような生活指導運動の成果をとりこんで、まったく新しい構想にたって旧著を全面的に書き改めたものである。そのかぎりでは、本書はまったく新しい本である。それにもかかわらず、本書を『学級集団づくり入門・第二版』とよんだのは、生活指導運動のこの間の発展的成果を世に問いたいからにほかならない。
一九七一年六月 /全生研常任委員会
本書は子どもへの見方、教育観、学校観についての問題意識をかきたて、
実践の方向性への展望を切り拓いてくれた、かけがえのない文献でした。
復刊を心から歓迎します。
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