エンカウンター学級づくりテキスト2
よりよいかかわりを生むエクササイズ集

エンカウンター学級づくりテキスト2よりよいかかわりを生むエクササイズ集

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触れ合うことで自分が変わり、仲間が変わり、関係が変わる

個々のつながりが薄れている時代だからこそ、子どもたちに他とよりよいかかわりを持つ力が求められています。本号はそのためのエクササイズを多数収録するとともに、シェアリング等の指導の急所も詳細に説明した役立つ1冊です。


復刊時予価: 2,101円(税込)

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ISBN:
978-4-18-874128-3
ジャンル:
特別活動
刊行:
2刷
対象:
小・中
仕様:
B5判 96頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

特集 よりよいかかわりを生むエクササイズ集
よりよいかかわりを生むエンカウンターの役割 /吉澤 克彦
よりよいかかわりを生むエクササイズの提案
小学校の発達段階を踏まえたオススメのアイデア /八巻 寛治
中学校の発達段階を踏まえたオススメのアイデア /吉澤 克彦
低学年 よりよいかかわりを生むエクササイズ集
学級活動でのエクササイズ
それがあなたの いいと・こ・ろ♪ /岩永 志保
学級活動でのミニエクササイズ
わたしはだあれ?(動物の名前あてゲーム) /今市 清美
朝の会帰りの会でのミニエクササイズ
ジャンケン スピーチ /下島 まさ子
各教科(国語),道徳等でのエクササイズ
しあわせのお手がみ /山宮 まり子
中学年 よりよいかかわりを生むエクササイズ集
学級活動でのエクササイズ
いいところさがし /中島 崇
学級活動でのエクササイズ
いいところさがし /大石 淳一
朝の会帰りの会でのミニエクササイズ
私のための朝の会・帰りの会 /伊東 和範
各教科(国語),道徳等でのエクササイズ
ストレス・マネジメントでさらに深い関わりを /坂江 栄市
高学年 よりよいかかわりを生むエクササイズ集
学級活動でのエクササイズ
自分と友を見つめながら /奥山 浩
学級活動でのエクササイズ
私を変えた3つのできごと /平林 かおる
朝の会帰りの会でのミニエクササイズ
ウォンテッド!仲間をさがせ /平野 修
各教科(国語),道徳等でのエクササイズ
アイ(愛)メッセージで川柳を作ろう /山田 弘史
中学校 よりよいかかわりを生むエクササイズ集
学級活動でのエクササイズ
続いて描いてみて! /柴田 祥宏
学級活動でのミニエクササイズ
学園祭と私たち /阿武 勲
朝の会帰りの会でのミニエクササイズ
キラキラーズを探せ /成田 隆道
各教科(国語),道徳等でのエクササイズ
こんな時,私はこう言う /植草 伸之
第2特集 エンカウンターQ&Aスキルアップ・2
Q設定のねらい・編集長からのメッセージ /吉澤 克彦
Q1 低学年でエクササイズを選ぶ場合の留意点は何か /橋 伸二
Q2 中学年でエクササイズを選ぶ場合の留意点は何か /小林 靖直
Q3 高学年でエクササイズを選ぶ場合の留意点は何か /塙 佐敏
Q4 中学校でエクササイズを選ぶ場合の留意点は何か /生稲 勇
Q5 エクササイズの選び方は? /八巻 寛治

よりよいかかわりを生むエンカウンターの役割

   新潟県教育庁下越教育事務所指導主事 /吉澤 克彦


よりよいかかわりを生む原理

 よりよいかかわりとは,言い換えれば,リレーションができるということです。

 リレーションは,自他を尊重する態度や行動から生まれます。

 自他を尊重する態度を養ったり,それらを実感するリレーション体験は,構成的グループエンカウンターの得意とするところです。

 ゆえに,構成的グループエンカウンターの実施は,よりよいかかわりを生むための効果的な取り組みとして価値があるのです。

 よりよいかかわりを体験的に学びながら,触れ合う中で,自他を尊重する心が育まれたり,自他を尊重することを体験したりすることが大切であり,かかわりのスキルだけを取り上げても実生活に役立つかかわりを生むことはできません。なぜならば,体験や実感が希薄である中で,「よりよいかかわり方は……」と言った話を聞いたり,にこやかにとか,相手の目を見てとか,座る位置は真正面ではなく少し斜めにとかいったことを練習しても,自分のものとはなりにくいからです。

 エンカウンターは,かかわり方のノウハウ獲得を第一目的として反復練習するのではなく,日常的な場面や自分の思いをお互いに披露し合いながら,回りの人との会話やグループでともに活動するといった触れ合い体験を重視します。これこそが,よりよいかかわり方を実感的に学び取っていく手だてであると考えているからです。

 デューイの「馬を水辺に牽いていくことはできるが,水を飲ませることはできない」という言葉を引くまでもなく,自分でそうしようと思ったり,ああそうかと気付いたりしない限り,どんな技術や理論も自分のものにならないのは明白です。


エンカウンターにおけるかかわり

 エンカウンターでは,例えば傾聴というテーマのエクササイズでも,最初に理想型を示して練習するのではなく,最低限のレクチャーで,まずお互い同士で話す・聞くを交互に行うところから始めます。

 そして,その時の気付きや感じたことをシェアリングし,「とても話しやすかった」とか「分かってもらえていない感じだった」ということをグループの中で自己開示します。

 そういうやりとりの中で,「ああそうか,自分の話し方や姿勢はこういう風に受け取られるのだな」とか,「相手の聴き方のこんなところがよかったな」などといったことに気付いていきます。

 その気付きがあるからこそ,日常場面でその人その人の行動や態度に変化が出始めるのです。エンカウンターを体験することで,行動変容するのは,かかわり方のマニュアルを身に付けるからではないのです。自分の言動や本音に気付く体験があるために行動変容するのです。


マニュアル重視の取り組み

 一方,よりよいかかわり方の型を教える効率よい仕組みもあります。ファーストフード店のアルバイトに対して,社員教育する場合などが端的な例といえます。

 私も,学生時代に大手コンビニエンスストアでアルバイトしました。その時のお客様に対応するマニュアルは,まさしく,摩擦を起こさず,効率よく仕事をするためのマニュアルであり,トレーニングでした。

 「いらっしゃいませ,何にいたしますか。○○は,いかがですか」といった客とのかかわりは,無駄なく簡潔で,どの店でも同じ対応であるため客に安心感も与えます。これも,効率といった面からは,よりよいかかわりと言えます。しかし,店の外で,そこで習ったかかわりかたで通用することはないのです。

 限定的な空間,限定的な時間にのみ通用する無駄を省いたマニュアルトレーニングです。

 学校で,これをやり始めたら大変です。担任の工夫や実態を踏まえた取り組みの幅が大きく制限されてしまいます。エンカウンターもマニュアルだとか,教師主導だと言われたこともありますが,エンカウンターは,アレンジしてこそのものであり,担任と目の前の児童生徒との間にこそ存在するものです。理論的な部分や基本的なフレーム以外は,とても自由度が大きいのです。

 昨今は,活動内容や手順,最たるものは話す言葉まで同じでなければならないといった厳しい枠組みがある金太郎アメのような取り組みが学校教育に入り込もうとしています。一人ひとりが,そして学校や教育委員会自体も,しっかり見極め,導入の正否を判断していくことが必要です。


エンカウンターの役割

 タイトルを「よりよいかかわりを生む」としたのは,トレーニング的な色彩よりも活動を通して生まれてくるもの,生み出されるものといったことを強調したいと思ってのことです。

 よりよいかかわり方を学ぶことは一般的にこういう行動をとることですとか,さあ,ではやってみましょうといった,よりよいかかわりかたをあらかじめ教えてやらせること,できなかったら繰り返しできるまで練習することでは,決してありません。

 エンカウンターは,エクササイズを遂行する中で,「触れ合い」を通してひたすら自他のかけがえのなさに気付いたり,自分の感情に気付いたりする活動です。そして,気付いたら行動してみようということです。

 エンカウンターの役割は,新たな自分に気付き,その気付きからよりよいかかわりや自分づくりに向かって,自らの行動を変えていく手助けをするところにあります。

 前出のデューイの言葉をもう一度引けば,「馬を水辺に牽いていく」(よりよいかかわりに導く)役割が教師でありエンカウンターであり,「水を飲む」(気付く,実行する)のは,あくまでも児童生徒自身と言うことになります。

 他の理論や技法に類を見ないほどの学校現場でのエンカウンターを用いた様々な実証的な研究や教育実践が,確かに水を飲んでいる(気付いている,実行している)ことを証明しています。


特集の構え

 今回の特集の「よりよいかかわりを生むエクササイズ」の構えとしては,「触れ合い」の場をどう設定しているか,その時の感情や行動をどう振り返って,日常にどう生かしていくかといった振り返りがあるかをポイントとしました。この部分を意識的に十分書き込んでもらっています。

 キーワードとしては,次の三つがあります。提案する実践が,この中の,いずれかにかかわっているのかを意識しているということです。

 @共感や一体感を体験するエクササイズ。

 A仲間意識やよりよいかかわりのある行動の場面があるエクササイズ。

 B自己開示や自己主張ということがあるエクササイズ。

 つまり,楽しくゲーム的にかかわるエクササイズであっても,単に他者と交流する場があるというだけではなく,上の三つのキーワードのどことかかわっているのかを意識して実践し,執筆しているということです。

 さらに,エクササイズ中に自分の感情に気付くために,自分を見つめる「自己洞察」活動や他の人の行動をまね「模倣」する活動,他の人の気持ちや感情に気付く「交流」活動,自己開示や自己主張場面がある活動などを意図的にセットしてもらっています。


『エンカウンターで学級づくり12か月』

 『エンカウンターで学級づくり12か月』小学校低・中・高学年,中学校1〜3(明治図書)に提案されているものは,よりよいかかわりという面からも参考にしていただけると思います。また,学校で行われるエンカウンターの全体像も把握できます。発達段階に応じてエクササイズを複数回組み立てようという方は,参考にしてください。

 本書や前記書籍の実践を,学級や学校,地域の実態,あるいは担任の経験や個性,得意な部分と組み合わすことにより,「友達ができない」,「あの人は気にくわない」,「自分はだめな人間である」,「誰も分かってくれない」といった思い込み,他者へのネガティブな感情,否定的な自己像などが払拭されることが期待できます。

 つまり,触れ合うことで,自分が変わり仲間が変わり関係が変わり,そして現在が変わるということを提案したいのです。


シェアリングについて

 エクササイズ中の気付きについては,「感情,思考,行動」の振り返りによって行います。

 これをシェアリングと言いますが,シェアリングは,やり方についての質問をしたり,エクササイズの内容などについて考えるものではなく,自分自身との対話の過程や気付いたことや感じたことを話すものです。

 どう思ったのかといった本音を語ることができると,自己洞察が深まるだけでなく,他のメンバーの洞察を深めることになります。小学校の低学年であっても素直な感情の表出があります。児童生徒の振り返りの中に,そのようなものがあれば,ぜひシェアリングのモデルとして全体に紹介するといいと思います。


思い

 私は,ここで提案したエンカウンターを実施することで児童生徒一人ひとりは「自分と仲間への温かい思いやりを育む」ことができるとの思いがあります。そして,そのことが,よりよいかかわりの基盤となり,いじめ・不登校,学級崩壊などといった教育の緊要課題の解決の端緒になるとも考えています。


実践を一つ

 最後に実践を一つ紹介します。よりよいかかわりは,自他を尊重することだと冒頭に書きましたが,そのことをねらいとした実践です。

 インストラクションは,実際に語りかける言葉で示しています。

 【感謝のメッセージ】『中学校学級づくり構成的グループエンカウンターエクササイズ50選』(明治図書)所収

 ねらい  級友のよいところを見付ける

      自分のよいところを再認識する

「インストラクション」 5分

 昨日○○さんが,階段の踊り場に落ちていたゴミを拾ったのを偶然見かけました。人の見ていないところでも環境美化に取り組む気持ちの素直さに感激しました。

 今日は,友達のよいところを取り上げて,感謝のメッセージを送ろうと思います。

 書く内容は次のようなことです。(板書)

 @ 感謝したこと

 A 回りの雰囲気を和ませていること

 B 見習いたいこと

 単に友達のよいところを上げるのではなく,「感謝」がポイントです。班や係活動などで「学級」へ貢献していたり,元気な挨拶をしてくれてありがとうなど回りの雰囲気を和ませてくれる行為,ちょっとした親切や目立たないけれど,地道に活動していることなどを書いてください。

「エクササイズ」 10分〜15分

 名簿の前後の人には必ず書くとか,班の人には全員書くといったことを決めておくと,全員に複数のメッセージが届く。

 メッセージを各自書いたら,一旦集め,書かれた人ごとに分ける。


   メッセージ例

 ・なごみ系の優花へ いっしょにいるだけで本当になごんだよ。私も見習いたいよ。ありがとう。

 ・修学旅行,一緒の部屋になってくれてありがとう。お風呂は泡風呂にしよう。思いっきり楽しもう。

 ・部活を楽しくしてくれてありがとう。あのドジ話は笑った笑った。これからもこのキャラでいてね。


「シェアリング」1 10分程度

 書いた後の気持ちをシェアリングする。班ごとや,隣同士などで「書いているときに気付いたこと・感じたこと」などを話す。

 最後に,何人かに発表してもらう。

「シェアリング」2 10分程度

 分けたカードをそれぞれに渡す。その後,メッセージをもらった後の気持ちを話し合う。

 シェアリングでは次のような話が出た。

・感謝することは色々あるんだなと思った。

・こういうあらたまった機会はあまりないのでとてもよかった。

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      明治図書

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