- 小学校・特別活動+総合的学習の展開プラン集
- まえがき
- 1章 特別活動と総合的学習が調和する関連のあり方
- §1 特別活動と総合的学習の位置付けを整理する
- 1 学習指導要領上での両者の位置付け
- 2 総則の「総合的な学習の時間の取扱い」であることの意味
- §2 両者が調和する関係の提案
- 1 特別活動における実践上の課題
- 2 今次の改訂に対応するためにも
- 3 両者の関係づけの意義及び方法
- 2章 関連を成功させる構想の基本アイテム12
- アイテム1 関連によって活動に「ゆとり」を生み出す
- アイテム2 子どもの発意・発想で特別活動と総合をつなげる
- アイテム3 子どもの主体的活動で学習の軸をつくり連続させる
- アイテム4 豊かな直接体験の機会を両面から拡充する
- アイテム5 特別活動で得られたノウハウを総合的学習に生かす
- アイテム6 学校行事がつくるフィールドで総合的学習をすすめる
- アイテム7 ボランティア学習を関連の中で充実させる
- アイテム8 多様な交流を取り入れ様々な生き方に触れさせる
- アイテム9 多彩な学習集団や学習形態を柔軟に取り込む
- アイテム10 発掘した地域素材と人材リストを共通に生かす
- アイテム11 時間割の弾力化を生かして関連させる
- アイテム12 共通理解と協力体制で豊かな活動を引き出す
- 3章 小学校・特別活動+総合的学習の展開プラン集
- 1_1 中学年/ 「買い物集会をしよう」での展開プラン
- 【お米って,いいな】
- 1_2 中学年/ 「私たちにできるバリアフリー」での展開プラン
- 【共に生きる,バリアフリーをめざして】
- 1_3 中学年/ 「通学路や遊び場の安全」での展開プラン
- 【ぼく,わたしの町の自ぜんをみつけよう】
- 1_4 高学年/ 「健康な生活と食事」での展開プラン
- 【健康な生活と食事】
- 1_5 高学年/ 「私達のまちから発信」での展開プラン
- 【人に優しい学級・学校づくりをしよう】
- 1_6 高学年/ 「将来の夢を語り合おう」での展開プラン
- 【手仕事,再発見】
- 2_1 代表委員会活動での展開プラン
- 【アルミ缶を回収して車椅子を贈ろう】
- 2_2 保健委員会の保健コーナーでの展開プラン
- 【自分の体をもっと知ろう】
- 2_3 飼育栽培委員会(児童集会〔ショート〕)での展開プラン
- 【身近な素材から環境を見つめ直そう】
- 2_4 全校児童集会活動での展開プラン
- 【アメリカンスクールとの交流を深めよう】
- 2_5 △△小案山子祭りでの展開プラン
- 【地域とのふれあいを深めよう】
- 2_6 △△小祭りでの展開プラン
- 【お年寄りとのふれあいを深めよう】
- 3_1 クラブ発表(学期に1つ)での展開プラン
- 【クラブ発表会を通して活動を活発に】
- 3_2 パソコン通信での展開プラン
- 【インターネットを利用して他の小学校と交流しよう】
- 3_3 交流活動での展開プラン
- 【朝鮮学校の友達とのふれあいを深めよう】
- 4_1 儀式的行事―開校記念式での展開プラン
- 【校歌のルーツを探れ】
- 4_2 学芸的行事―学芸会での展開プラン
- 【広めよう,学芸会の取り組みを】
- 4_3 学芸的行事―学習発表会での展開プラン
- 【スペシャル3劇団○○小公演を成功させよう】
- 4_4 健康安全・体育的行事―運動会での展開プラン
- 【外国人学校とのふれあいを深めよう】
- 4_5 遠足・集団宿泊的行事―林間学校での展開プラン
- 【自分たちの力で成功させよう林間学校】
- 4_6 遠足・集団宿泊的行事―修学旅行での展開プラン
- 【伝えよう,修学旅行における学びを】
- 4_7 勤労生産・奉仕的行事―飼育・栽培活動での展開プラン
- 【収穫祭・もちつき大会】
- 4_8 勤労生産・奉仕的行事―福祉施設との交流活動での展開プラン
- 【ようこそ△△小・ふれあい交流会】
- 4_9 勤労生産・奉仕的行事―地域清掃での展開プラン
- 【地域を流れる川のテーマ曲をつくろう】
まえがき
現在、文部省は「新しい学習指導要領で学校は変わります。」というパンフレットを作成して全国の教育委員会をはじめ各種研修会等において配付している。学校だけではなく、保護者や地域社会などにも理解と協力を得ながら学校週5日制のもとで「生きる力」をはぐくむ新しい学校教育を目指す必要があることから、<学校教育が大きく変わるということ><何が新しいのか>等についての啓発資料をもっていわゆるPRに努めているのである。
その変わった部分の目玉となるのが「総合的な学習の時間の創設」である。しかも、それは学校に任せるというのであるが、小学校では第3・4学年が105時間、第5・6学年が110時間配当されている。平成12年度と13年度は各学校は研究と馴らし運転の期間であるとはいえ、全国的に見れば暗中模索といった状態の学校が多いようである。国立阿蘇青年の家主催事業として行われた総合的な学習の時間の研修会では、参加者の質問事項として、おおよそ次のような項目が多く挙がっていた。
○総合的な学習の時間の具体的な展開は、どのようにしたらいのか。
○児童主体の学習活動だというが、具体的なイメージがつかめない。体験活動を充実するとなれば学校の外での学習が多くなろうが、様々な課題や児童への指導や安全への対応など指導体制はどうすればよいのか。
○特色ある教育活動を実施しなさいといっても、幾つかのパターンにまとまっていくのではないか。学習指導要領の「総則」に示されている課題以外には、どのようなものがあるか。
○児童が自ら学び、自らよりよく問題を解決する力を身に付けるようにするためには、児童一人一人が意欲的に取り組めるような問題意識をもたせることや動機付けが必要であるが、どのようにしたらよいか。
○全教職員の共通理解を図るにはどのようにしたらよいか。
○特別活動との関連が深いように思われるが、どのように考えたらよいか。
○総合的な学習の時間の評価はどのようにしたらよいか。
など、様々なことである。
そこで、特別活動と総合的な学習の時間の相違や類似性などを押さえ、好ましい関連の図り方などを各学校現場に提供しようというのが本書の編集意図である。各学校、個々の教師が考え方を整理したり実践研究のヒントにしていただくために示したのが、「2章 関連を成功させる構想の基本アイテム12」である。実績事例としての特別活動の各内容ごとの「展開プラン集」は、現段階での試し運転段階のいわば試案的なものである。研究段階であることや限られたスペースで説明しようとしていることもあって、事例などによっては説明不足になり誤解を受けるようなものもあるかもしれないが、どうかご容赦いただきたい。
ところで、総合的な学習の時間において児童が自ら課題に気付き、意欲的、問題解決的に課題に取り組むようにするには、いかに動機付けるかが重要なポイントになろう。その意味では例えば、学校行事の体験的な活動との関連を効果的に図って総合的な学習活動に導く方法が有効であるということは言えるのではないだろうか。行事体験の感動や問題意識が調べようとする課題設定に役立つということ、行事体験の感動や問題意識が課題解決意欲を強めることになるであろうということ、などは十分考えられることである。近年、修学旅行や自然教室などを単なる一過性の体験にとどめず課題研究的な要素を組み入れるようになってきていたが、総合的な学習の時間が設定されたことによって、学校行事として担うことと総合的な学習の時間で受け持つ探究的な活動とを分けたり、重ねたりして効果的な関連を図り、いろいろ工夫して実践することが可能になったと考えることができるのである。
いずれにしても、特別活動も総合的な学習の時間の学習活動も教科書がない。各学校の創意工夫で創り上げていくものである。特色ある教育、特色ある学校づくりの代表選手として活躍するのは総合的な学習の時間であることは間違いない。しかし、特別活動もまた学校の特色のある取り組みなのである。そうした意味で、学校行事はこれまでも「学校の顔である」と言われてきたのであり、今後も変わるものではない。むしろ、総合的な学習の時間とのよい関係をつくり、効果的に関連を図って、特色ある教育、特色のある学校づくりを推進していくことが期待されるところなのではないかと考えている。
どうか、本書の意図するところや願いを受け止めていただき、まとめた内容が若干でも今後の各学校の取り組みの参考になるならば幸いである。忌憚のないご批判、そしてご指導を賜りたい。
最後に、本書を刊行するに当たり、明治図書の安藤征宏氏には企画・編集のすべてにわたり大変お世話になったことを、ここに記して感謝を申し上げたい。
平成12年7月 編者 /宮川 八岐
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