- 特集 3学期の特選エクササイズ&上達講座
- 【巻頭】3学期の学級生活とエンカウンターの役割 /八巻 寛治
- 3学期の学級生活を充実させるエクササイズづくりの提案
- 自己理解をさらに深めるオススメのアイデア /吉澤 克彦
- 他者理解をさらに深めるオススメのアイデア /吉田 正太朗
- 子ども同士の共感性を促進するオススメのアイデア /石川 明代
- われわれ意識を育むことができるオススメのアイデア /藤井 弘
- 3学期の学級生活を充実させるエクササイズのバリエーション
- 朝の会で手軽に取り組めるミニエクササイズのアラカルト /山宮 まり子
- 帰りの会で手軽に取り組めるミニエクササイズのアラカルト /藤村 一夫
- 学級まとまりの雰囲気を盛り上げるエクササイズのアラカルト /平野 修
- みんなでやれた成果を確かめ合うエクササイズのアラカルト /鈴木 紀子
- 互いのよさを見つけるエクササイズのアラカルト /松永 裕子
- 新たな自己発見を意識するエクササイズのアラカルト /豊福 聡
- 3学期の学級生活で役立つ特選エクササイズと展開
- 1 月
- 低学年・新年のカルタ作りで自他を見つめる /橋 伸二
- 中学年・キラキラ生きる 自分が生きる /表 八栄
- 高学年・やりたいことベスト10 /平林 かおる
- 中学校・夢のある、楽しい中学校生活 /橋 俊裕
- 中学校・互いに自分のことを語り合おう! /本間 昇
- 2 月
- 低学年・生活科との関連を図って /長谷部 弘美
- 中学年・きらきらみーつけた! /中谷 浩子
- 高学年・ストレスと上手につきあおう /今市 清美
- 中学校・自分のあるべき姿を見つめて、新たな一歩を踏み出す /桑野 淳二
- 中学校・嫌な事も語り合えば… /長嶋 茂
- 3 月
- 低学年・心をつなぐ「ありがとうメッセージ」 /波田 淳子
- 中学年・10年後の自分へ〜2分の1成人式を祝って〜 /大歳 美恵子
- 高学年・自己肯定感を高める /佐藤 克彦
- 中学校・感謝の気持ちをメッセージに託す /植草 伸之
- 中学校・感動リレー /山崎 明彦
- 第2特集 初心者・ベテラン知って得するエンカウンターのなあるほど上達講座
- コーナー1 初心者でも大丈夫エンカウンターの上達講座 /八巻 寛治
- アレンジの際の配慮点は?/ シェアリングのアレンジの仕方は?/ エクササイズの展開でのアレンジの仕方は?/ インストラクションのアレンジのポイントは?/ インターベンション(介入)の際のアレンジの仕方は?/ ミニエクササイズへのアレンジの仕方は?/ 保護者会へのアレンジの仕方は?・小学校/ 保護者会へのアレンジの仕方は?・中学校
- コーナー2 ベテランももう一工夫でバージョンアップの上達講座
- 自己開示能力とは? /本間 寿美
- 抵抗が起きたとき /小林 靖直
- 新しいエクササイズづくりのポイント /野澤 一吉
- 効果の測定 /吉澤 克彦
- こんなときどうする@まとまりがないとき /吉澤 克彦
- こんなときどうするA同僚にアドバイスを求められた /潤間 るみ
- こんなときどうするB学年・学校で取り組むとき /中村 雅芳
- こんなときどうするCTTで取り組むとき /津村 誠
【巻頭】3学期の学級生活とエンカウンターの役割
「リレーションづくり」から「信頼関係の促進」へ
宮城県仙台市立東長町小学校 /八巻 寛治
私は最近,教育カウンセラーとして,教師サポート(先生方の悩み相談)にかかわるようになった。その中の特別活動(学級づくり)にかかわる課題としては,学級活動の指導や援助の仕方が分からないと悩む教師が増えていることである。
特に,活動内容(2)の中の「希望や目標をもって生きる態度の形成」「望ましい人間関係の育成」を,児童の実態に応じてどのように適切に指導・支援すればよいのかの難しさについて悩みが多いのである。中には自発的,自治的な活動という前に,子ども同士の関係や教師と子どもの信頼関係をきずけずにいるケースもある。
そのような時に私は,「われわれ意識」を育む学級活動(学級づくり)の実践を薦めている。最近の子どもたちが身につけにくいと言われる社会性を育むことが,人とのかかわりにとって重要な意味を持つことであると私は考えるからである。
「われわれ意識」とは,自分も含めた学級集団の仲間意識を育てることであり,子ども自身が自分の心の居場所と感じるような「自分が必要とされている存在」であることを認識できることにつながるのである。さらに,自分の存在が,周囲の人々から認められる(自己存在感を得る)ことで相互に差さえ合うような支持的な学級風土を醸成することにもなるということなのである。
そのようなクラスをつくるためには,普段から望ましい人間関係を育むような取り組みが必要になる。仲間意識を育むことで,子ども自らの人間発達の問題を,自らが見つけ解決していける能力を身につけることにもなるからである。
「われわれ意識」が育まれると,仲間意識が芽生え,好意的にかかわろうとする意識が出てくる。自分と心の通い合う仲間がいると,温かい友人の関係が育ち,そのことが学校生活を楽しく充実したものにさせる。例え多少のトラブルがおきたとしても,問題が深刻にならずに解決することが可能になったり,それを頼りに乗り越えたりすることができたりもする。気心が知れてくると,両親や教師との結びつきよりも友達関係の結びつきが強くなるという例もある。
子どもは独立した存在であっても,他の子どもたちとかかわりを通して成長していくもの,個人と集団の相互作用の中で生き,育つ(成長する)のであるという考え方である。その代表的例が構成的グループエンカウンターである。
3学期の学級生活では
3学期の学級生活の課題は,それまでに育まれてきた子ども同士の関係を、さらにどのように充実させるかにあるといわれている。1・2学期に培ってきた学級内の人間関係をさらに深めたり,まとまりのある学級集団として意識付けたりするなど,親しい関係ができる時期ととらえることもできることになる。
さらに,学校行事や児童会・生徒会行事など,様々な活動を通して仲間意識がさまざまなかかわりをする時期でもあり,ホンネとホンネでかかわれるようになるため個性同士がぶつかり合うことがあったり,自分をうまく出せずに孤立してしまったりする子などが見られ始めるのもこの時期である。
また,クラスの荒れやいじめ,不登校などの子どもの変化が見られるのもこの時期であると言われている。よってこの時期には,「みんな違ってみんないい」のように,個性を尊重しながらも支持的な雰囲気の安定した集団(個性がつぶれる豆腐集団ではなく,個性が生きる納豆集団)に変容させていくことが求められる。
新年を迎え「やる気」が感じられる1月
新年を迎え,いろいろな意味での「やる気」が感じられる1月。
この時期は,子どもたち一人一人が冬休み中に体験してきたことを生かして,新たな気持ちで頑張ろうというやる気をもったり,2学期に積み残した課題をやり遂げようとする意欲をもったりする節目の時期である。
子ども個々のやる気をまずしっかり自覚させることと,そのやる気をどのように集団へ反映させていくかという方向性をもたせるために,学級の中での自分の存在感や所属感を確認させることが課題になる。
行事に向けての雰囲気が盛り上がる2月
2月は,卒業式などの行事に向けての雰囲気が盛り上がるようになる時期である。
子どもたちの間に,お互いに認め合う関係を深めて(リレーションを促進して)いくことが課題になる。小学校の高学年から中学校にかけては,リレーションから一歩進んだ信頼関係(トラスト)づくりに高めていくことも可能である。
各自が個性を発揮しながらも,相手のよさを認め(他者理解),心のふれあいを目指す積極的な人間関係づくりが求められるようになる。
一年間の活動を振り返る3月
3月は,これまでの一年間の活動を振り返り,クラスで取り組んできた成果を生かして友達のよさや自分のよさを振り返ることができるじきである。われわれ意識を確認しながらも,新たな自分のよさを発見するなどの活動も考えられる。
構成的グループエンカウンターでは,「別れの花束」に代表されるように,節目を大切にするエクササイズがあり,「終わりよければ全てよし」の言葉通り,楽しいことや辛いこと,苦しかったことなど,いろいろな思い出はあるが,互いに切磋琢磨してきた思いやよさを確認し合うことで認め合える関係づくりができるのである。
本号では,こうした3学期の学級づくりに生きる構成的グループエンカウンターの役割とエクササイズを紹介していただいた。
また特集2では,アレンジする際の配慮事項や保護者会での活用,抵抗が起きたときのリーダーとして心構えなど,エンカウンターの要素を生かした様々な取り組みの例を紹介することで,介入の際のポイントを確認して取り組んでいただきたいと思う。
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- 明治図書