- はじめに
- 第1章 「生命の教育」の必要性と授業のデザイン
- 1 「生命の教育」のキーワード
- 2 学ぶことと生きること
- 3 学び続ける子どものために
- 4 子どもの感性の発達
- 5 子どもは「生命」をどのように感じているのか
- 6 学年発達に応じた「生命の教育」のデザイン
- 第2章 1単位時間の道徳授業で「生命の教育」の実践
- [1] かがやく生命
- 〜一生懸命に生きる生き物の姿に学ぶ〜 「うみがめのあかちゃん」
- [2] 大切にされている自分の生命
- 〜わが子への親の思い〜 「ぼくの生まれた日」
- [3] 自分の生命は自分で守ろう
- 〜わが子への家族の思い〜 「ぼくのじこ」
- [4] 「生きている喜び」を感じ,生命を大切にする意欲をもつ
- 〜「生きる喜び」を扱った道徳の時間〜 「ふしぎな音」
- [5] 「生きる喜び」・「死」から生命の大切さを学ぶ
- 〜豊かな体験活動を生かした道徳の授業〜 「忘れないよ,ゴン太」
- [6] からだの声,心の声
- 〜からだの働きから生命を見つめ直す〜 「かさぶたくん」
- [7] 生命を育てるということ
- 〜飼育体験を通して生命を考える〜 「ぽち」
- 第3章 長期に渡る「生命の教育」の実践
- [1] 「生命は大切だ」ということ
- 〜生命の大切さを感じる〜 「トルビ−のなみだ」
- [2] 動植物とともに生きる
- 〜子羊「ラッキ−」との生活を中心として〜 「みんな仲よし」
- [3] 食と生命の教育
- 〜「鮭の日」の実践を通して〜
- [4] 飼育から共生へ
- 〜ピーターラビットのこと〜
- おわりに
はじめに
子どもを取りまく現代の社会は,「生命を大切にする」ということとはかけ離れた事件が多発している。子どもの教育にとって悪い環境となっている。これだけ「生命の教育」の必要性が叫ばれている時代はない。
「道徳教育推進状況調査」(文部科学省,平成15年度実施)を見ても,学校が重点を置いて指導する内容として「自他の生命を尊重する」が,小・中学校とも第1位に選択されている。
平成17年度に改訂された「心のノート」でも,「生命尊重」のページが増補された。
また,中教審の「豊かな心をはぐくむ教育の在り方に関する専門部会」でも,子どもたちの道徳性育成上の問題状況として,「自信のなさ,無気力な子の増加」「規範意識の低下」「人間関係をつくる力の不足」とならんで,「生命に対し実感をもって理解できていない」が挙げられている。今後の道徳教育の動向として,「生命の教育」が一層重視されることは当然のことと言える。
では,「生命の教育」で,どのような「資質・能力」を育てたらよいのだろうか。
誘拐や通り魔を想定して,護身術を教えることをプログラムしている学校も増えている。火事や地震だけでなく,不審者を想定しての避難訓練も広く行われるようになった。そうした不測の事態に備えて「訓練」することは決して悪いことではない。しかしそこには,世をはかなみ,人を疑う心ばかりが膨らむことになるが,しかたがないのか。
本書で目指す「生命の教育」は,むしろこの世に生まれてきたことに感謝し,生きている喜びをかみしめることのできる心を育てることを目的としている。それはまさに,自他が充実した人生を築いていくために欠くことのできない重要な資質なのである。
では,「生命の教育」は,どのように行われたらよいのだろうか。
「生命は大切だ」と百万遍唱えたところで,その思いは言葉として伝わっても心には染み込まない。
動物を飼って,えさを与え小屋を掃除し,やがて来る死をみとるだけでは,「また新しい動物をもらってこよう」の繰り返しとなる。
「生命の教育」だけでなくどの教育も,子どもにとって「自分ごと」にならない限り,本当の学びにはならない。子どもにとって必然性のある学びを創り出すために,「生命の教育」をどのようにデザインしたらよいのか,これまでの慣習にこだわらず,子どもの学ぶ姿に着目しながら追究していきたい。
また,前出の調査で,道徳の時間を「楽しい・ためになる」と感じている児童・生徒の割合が,学年段階・学校段階を追って下がっていくことも明らかにされた。子どもの成長・発達に即した,子どもにとって学び甲斐のある学習内容や指導法の開発も望まれる。
これらの課題を受け,1時間の道徳授業での実践と,複数時間に渡る総合的な実践を本書に収録した。
本書の,実践を通した「生命の教育」への提案を,少しでも参考にしていただければ幸いである。
2006年6月 編著者代表 /清水 保徳
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明治図書
















