- まえがき
- T 「大人になる」とはどういうこと
- Q1 なぜ性毛が生えるの
- Q2 なぜ私の胸だけ大きくなるの
- Q3 赤ちゃんはどこから来るの
- Q4 赤ちゃんはどうやってできるの
- Q5 性器はどんな形をしているの
- U 「女の子の体」はどうなっているの
- Q6 生理はどうしてなるの
- Q7 子どもを生むとき痛いの
- Q8 子どもでも赤ちゃんが生めるの
- Q9 なぜ女にはペニスと睾丸がないの
- Q10 マスターベーションを女の子はしてはいけないの
- V 「男の子の体」はどうなっているの
- Q11 何で男にペニスがあるの
- Q12 なぜペニスが固くなるの
- Q13 白い液体がペニスから出てきたから病気なの
- Q14 マスターベーションは体に悪いの
- Q15 何で女の子の下着が気になるの
- W こんなとき、どうすればよいの
- Q16 子ども部屋からヌード写真がたくさん出てきたとき
- Q17 スカートめくり等の性的ないたずらをしたとき
- Q18 「セックスって何」と尋ねられたとき
- Q19 「先生もセックスをしたの」と尋ねられたとき
- Q20 「変なおじさんにつけ回された」と言われたとき
- X 「エイズ」とはどんな病気なの
- Q21 性病とはどんな病気なの
- Q22 エイズはどんな病気なの
- Q23 エイズは小学生でもかかるの
- Q24 エイズはこんなときでも移らないの
- Q25 エイズにかかっている人に役立つことは何なの
- Y 性教育を明るくさわやかに行っていくために
- 一 性情報氾濫の中の教師修業 ――自己中心主義から抜け出そう――
- 二 もし自分がエイズにかかったら
- 三 個性尊重を性教育で教える
- あとがき
まえがき
命を大切にしない子どもが増えてきている。
テレビゲームやインターネットのゲームで育った子どもは、命もバーチャルリアリティの世界のものだと思っている。
低学年の子どもだというのに、「犬や猫が死んでも生き返ることができる」と考えている子どもがいる。
実に危ない子どもである。
このような子どもには、命の大切さが分からない。友達の命も自分の命も大切にしようと思わない。
命の大切さを学ばせるためには、性教育が効果がある。
命の誕生のドラマ。
命をはぐくむドラマ。
このようなドラマを学ぶことにより、子どもは命の大切さを知る。命の大切さが分かる。
本書の第T章から第V章までは、子どもが性についての疑問を出し、それについて答えるというQ&A形式で書いた。二〇年以上、子どもたちに性教育を行ってきたが、子どもたちには性についての疑問や悩みがいろいろある。それらの代表的なものを取り上げた。
第W章は、保護者からの、子どもの性についての質問に答えるというQ&A形式で書いた。
「ぜひ先生から子どもに話してください」
と頼まれるときがあった。
性教育には、どうしても陰の部分がつきまとう。私は、陰の部分があって当然だと思う。また、すべて陰の部分を陽に変える必要はないと思う。いや、変えてはいけないと考えている。
恥ずかしさはある。しかし、恥ずかしいから学習しないのではいけない。
恥ずかしくても、学習しなくてはいけないことがある。
学習しなくてはいけないことをきちんと教えよう。恥ずかしいからといって、逃げてはいけない。
一緒にTOSSライフスキル学習研究会を行っている武田敏氏(千葉大学)に恐ろしい話を聞いた。
数年前、日韓主催でサッカーのワールドカップが行われた。非常に多くの外国人が日本に来た。
ワールドカップは、日本チームの大健闘で大いに盛り上がった。
ワールドカップ後、驚くべき現象が起きた。若い女性たちの堕胎の数が急上昇したのだ。性病の罹患率が急上昇したのだ。
あまりにも、彼女たちは性に対して無知であった。彼女たちは間違いだらけの知識しかもっていなかった。
その結果がこれである。
彼女たちは産婦人科の医師に次のように訴えたという。
「学校で何も教えてくれなかった」
彼女たちに「無知なあなたが悪いのだ」と教師として言えるか。
「性は、大人になってから知ればよい」
と、まだ考えている大人がいる。
本当にそれでよいのか。
彼女たちは被害者だ。きちんと教育を行わなかった教師も痛みを感じるべきだ。
性教育は、自分の体の仕組みを知ることから始まる。異性の体の仕組みを知れば、お互いが労わり合わなければならないということが分かる。
性教育は、命の歴史を科学的に追究する学習でもある。
命は、元に戻らない。決して戻すことはできない。
命は、人間では作ることができない。たった一つの細胞から数多くの生体システムを作り出すことは不可能である。そのことも、子どもに教える必要がある。
性教育とは、
命の大切さを教えること
である。自分の命は当然であるが、他の人の命や他のすべての命も大切であることを教えよう。
/新牧 賢三郎
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- 明治図書