- はじめに
- 「道徳シート」を活用した実践例
- 1 自分の目標を見つめ直そう 1−(2)
- 2 自分の個性を伸ばそう! 1−(5)
- 3 しあわせってなんだろう 2−(2)
- 4 ハンド イン ハンド 2−(2)
- 5 君はどんな友達がほしい? 2−(3)
- 6 上手に自分を主張してみよう 2−(5)
- 7 美しいものへ対する気持ち 3−(1)
- 8 メダカを覚えていますか? 3−(2)
- 9 ストーリーを作ってみよう!! 4−(1)
- 10 「規範意識」って何だろう? 4−(3)
- 11 やっていいこと!? いけないこと!? 4−(3)
- 12 自分以下を求める心 4−(4)
- 13 職業とは,働くとは 4−(5)
- 14 家族を大切にしてる? 4−(6)
- 15 「合気道」をあなたは知っていますか!? 4−(9)
- 16 世界に目を向けよう! 4−(10)
はじめに
道徳授業については,諸先輩を始め数多くの先生方による,道徳の時間のあり方や指導方法の研究が継続されています。
研究の中には,生徒に行動や,ある意味で設問に対する決意表明を求める授業,あるいは個における葛藤を追い続ける授業が生徒の心に響くよい授業であるとするものもあります。しかし,このような授業は,道徳的価値の自覚を深めることにはならず,生徒が生涯を通じて,どのような場面でもよりよく生きるための判断を主体的に行える「基礎的な力」(生きる力)を培う授業とは言えないのです。また,自ら豊かな生き方を求め,そのために自分はどうあればよいかを求める姿勢を身に付ける授業とは言えないのです。
これまでの道徳の授業の多くが,読み物資料に示される高度な道徳的価値と生徒の読解力に依存したものであることは否めない事実です。そのような点を,ときには道徳授業の形骸化と指摘されることもあります。読み物資料を中心とする授業が尊重されるのは,よりよい道徳的価値の陶冶という点で,どのような教師にも間違いのない指導ができるという最大の長所もあってのことです。
読み物資料に依存した授業の本当の弊害は,実は,資料(指導書)にしがみつく教師中心の,生徒の思いや重要な発言までもが置き去りにされた授業が横行するところにあるのです。本書に収めた道徳シートは,授業の中で,生徒が興味・関心をもち自らを分析し,道徳的価値の自覚を深めることができるようにと願ってつくられたものです。
本書の道徳シートは,これから改善の可能性を含むものです。先生方には,生徒の生活の実態を考慮して,自分のアイデアをさらに盛り込み実践していただきたいと思います。また,若い先生方には,年齢的にも感覚的にも生徒により近いところにあるのですから,ともに考え,ともに学ぶ授業を創造していただきたいと思います。人間形成はだれにとっても一生の課題であり,停滞することのないものです。若い教師として生徒を教え育てる誇りをもちつつも,一つの人間としてともに学ぼうとする姿勢は,何よりも子どもの心を動かすことでしょう。
<道徳授業の活性化のために>〜この道徳シートを使って〜
1 学習の主体者は生徒である
・生徒が本当に興味・関心をもっているのか。
・生徒の声をその時,その場で受け止めているか。
・生徒は授業をよかったと思っているか。
興味・関心とは,授業に対してでも,そのときの読み物資料に対する興味・関心でもよいのです。あるいは学ぼうとする道徳的価値についてでもよいのです。そんな話がしたかったと生徒は機会を待っているのです。活用に当たっては,生徒が学習の主体者であり,教師はそれを支える存在として互いに能動的であることが重要なのです。
2 安易に副読本に頼っていないか
先生方から時々このようなご質問を受けることがあります。「教材研究の時間が足らず,ただ読んで発問に対して答えや感想を書いただけで終わってしまった,どうしたらよいのでしょう」と。さて,先生方に足りないのは時間でしょうか。また,「副読本の指導書どおりの発問をした。生徒が乗ってこない,意見が出ませんねえ」。では,生徒か指導書に,問題があるのでしょうか。指導書どおりの発問をするだけなら機械でもできるのです。そのような時間を過ごしていては,生徒は道徳的価値を身に付けることもできないのではないでしょうか。
教師が願いをもち,生徒とともに学ぼうとする姿勢があれば,道徳の授業は,心(調和のとれた感性と理性)の成長を助ける,人生のマイルストーンにもなるのです。
この道徳シートは,これを使って道徳授業を生徒にとってすばらしいひとときになるようにと願ってまとめたものです。
○自分を映し出す鏡として
○話し合いやディスカッションを促す助けとして
○相互理解,自己理解を促すヒントを与えるものとして
などの効果をねらっています。他の教育活動との関連を図り活用していただきたいと思います。是非とも多くの先生方に実践,活用していただければ幸いです。
2003年8月 /賞雅 技子
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- 明治図書