子ども同士の関係性をどうつくるか学級集団づくりの技術と方法

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結びつきが弱まるばかりの子ども同士の関係性を復活するには、学級が真に子どもの「居場所」になる必要がある。そのための学級集団づくりの技術と方法を具体的に詳述する。


復刊時予価: 2,618円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-826604-X
ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2刷
対象:
小・中
仕様:
A5判 168頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
T 子どもとどう出会うか
1 安心が信頼をつくる
1 まず安心をあたえる
2 信頼の基盤をつくる
3 体制的不安をほぐす
2 安心をあたえる言葉
1 大好き・ひいきしない
2 人間にくずはない。暴力・体罰はしない
3 成績で人間の値うちは決まらない
3 行動でも安心をつくる
1 ともかくいっしょに楽しむ
2 子どもの話をよく聞く
3 やさしさを態度で
4 気がかりな子への対応
U 子ども同士の関係性をつくるには
1 班を手がかりにして
1 班が役にたつ理由
2 店班ぎらい点にしないために
3 班のつくりかた
4 座席は? 手のかかる子には
5 班員同士の交わりをつくる
6 班の係・部活動
7 ほめる・叱るの基準をもって
2 話し合い・討論のできる力を
1 子どもの話しやすい条件
2 話し合いの楽しさを
3 班会議のすすめかた
4 学級会と班長会のやりかた
5 トラブル・事件があったとき
3 リーダーをつくる・育てる
1 リーダーがいない、どうしたらよいか
2 選ぶことを大切にして
3 班長・班長会を拠りどころにして
4 点検とまとめのしかた
5 やりがい・やる気を引き出すには
6 リーダーの権限も教える
V 学級集団をより高めるには
1 班替えを進歩・向上のチャンスに
1 班替えと発展のさせかた
(1) 班替えの方法の発展
(2) 班長の選びかたの発展
2 活動の総括をやり、つぎの課題へ
3 よさを発見しあう関係も
2 活動を充実させ力を伸ばす
1 班・学級活動の充実のさせかた
(1) 遊び・楽しい行事
(2) 班内の問題の解決
(3) 班勉強
2 係・部活動の充実のさせかた
(1) 係活動
(2) 部活動
3 児童会・生徒会と結びつけて
(1) 要求の提出・提言
(2) 選挙
(3) 活動する子どもを育てる
3 自分たちで問題解決できる力を
1 いじめ問題への取り組みかた
(1) 緊急に対応しなければならないとき
(2) 学級でやること
(3) 学級会で話し合うときは
(4) 注意すべきこと
2 校則・きまりの不満解決へ
(1) 木登り問題
(2) 頭髪問題
3 授業の充実をめざす取り組み
(1) 学級集団づくりと授業のかかわり
(2) 班・グループの活用
(3) 班勉強の充実
(4) 自主学習会
W 学級集団づくり・こんな時どうする!
1 指導の糸口がつかめないとき
1 学級が崩壊状況にあるとき
2 不登校への学級集団としての対応は?
2 困難な問題でつまずいたとき
1 虐待・いじめの心的外傷をもつ子がいて
2 暴力的言動をくり返す子がいて
X 学年・父母とも共同して
1 学年の連帯をつくりながら
1 教師同士の連帯を
2 学年集会を創造的に
2 学級集団を父母との共同で充実させる
1 共通理解をつくる努力を
2 班を生かした学級懇談会
3 学級行事で連帯をつくる
あとがき

まえがき

 子ども同士の関係性が、いま深刻です。人間的な結びつきが弱まるばかりで、「これで未来の社会がつくれるだろうか」と危惧する声が全国的に広がっています。

 たとえば、友だちと遊べない子、友だちがつくれない子が多くなったというのは、二〇余年前からの話でした。ところが今はより深層におよび、不登校の激増に加えて閉じこもり・対人恐怖症の子が急速に増えています。またいわゆる普通の子の場合でも、対話や交流をきらい共同行動に参加したがらない子が目立ちます。ですから学級の中にいじめ、暴力があっても自分たちの力で解決できず、突発的な反乱や学級崩壊の状況をつくり出したりしています。まさに、ただならぬ事態です。

 しかしこれは、子どもが好んでそうなったのではありません。金とものが支配的な政治・社会が、心の結びつきの大切さを見えにくくしました。競争と管理の教育・受験体制が、友だちと交わる機会を奪いました。そして家庭と地域もその流れのなかで、人間に欠かせない協力・共同を体感させることが少なくなりました。その結果が、子ども同士の関係を裂いてきたのです。

 このことを考えるとおとなたちは、改めて子ども同士の関係性に真剣な眼を注ぐ必要があります。なかでも学校では、子ども同士が民主的(一人ひとりが主人公)で自治的(力を合わせて自分たちでやれる)な集団生活ができるよう指導に力を注がなければなりません。それには、学級集団づくりが重要です。学校生活の土台とも依りどころともいえる学級が店心の居場所点とならなければ、子どもは何についてもやる気を起こしません。文部科学省が推奨する少人数授業(小人数学級とはちがう)などやってみても、この根本問題を解決しなければ本来の意欲は育たないでしょう。

 では、学級集団づくりとは何か――これは決してむずかしいことではありません。子どもへの愛と情熱をいだく教師なら、誰でも実践できるものです。

 学級集団づくりでは、何よりも子どもの要求(自立への発達要求)を大切にします。そしてその要求にもとづく取り組みを、店みんなで決めてみんなで実行点していくのです。ですから子どもたちに画一的な行動を強いたり、集団というワクにはめこみ個人を埋没させてしまうような教育方法ではありません。創造的な活動を多彩に展開しながら民主的で自治的な力を培い、一人一人とみんなが豊かな人格に育つことをめざして実践するのです。その意味では子ども同士の関係性が危機にあるいま、これほどすぐれた教育方法はないと断言してよいと思います。

 こうした思いから本書では、学級集団づくりの技術と方法を具体的に述べることに努めました。また指導に困難をともなう子の多いこともふくめ、その取り組みかたも示しました。ぜひご活用いただき、明日へのエネルギーにしてほしいと思います。


  二〇〇一年六月一〇日   /坂本 光男

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