- まえがき
- T なぜひとりぼっちになるのか
- 一 誰もが求めているもの
- 1 友よ、北の空へ
- 2 友情への担任のプレゼント
- 3 教師も願いは同じ
- 二 孤立に追い込む政策・矛盾
- 1 教師も子どもも苦しんでいる
- 2 すべての根源となる問題
- 3 子ども・父母・教師の分断化
- 4 規制緩和のハードな競争と管理
- U 教職員同士の働きかけ合いと創意を
- 一 職員室を居場所に
- 1 小さなことで人の役に立つ
- 2 職員室を居場所にする四つの条件
- 二 行事は働きかけ合うチャンス
- 1 全校かくれんぼ大会
- 2 給食での働きかけ合い
- 三 授業での協力・共同を
- 1 質問・悩み相談がいっぱい
- 2 授業交流・交換授業を
- 四 会議を自分たちのものに
- 1 小さな提案を出し合って
- 2 私的なことも話せる会議に
- 五 きらいな同僚・気の合わない同僚とも
- 1 好きでなかった同僚が
- 2 ビシビシ・体罰の同僚には
- V 自分を変え、元気をつくり出そう
- 一 暗い自分を変えるには
- 1 対話で心がけること
- 2 メリハリのある話のくふうを
- 二 悩むのはいいことなのだ
- 1 悩みを潜在させている先生に
- 2 プライドを見つめ直すといい
- 三 集まると元気が出る
- 1 しゃべるだけでも満足できる
- 2 実務・連絡にも心をこめて
- 四 子どもの親からも元気をもらう
- 1 親の目線で話すといい
- 2 「わが子の自慢」を学級通信に
- W 共同のちからで展望をひらく
- 一 自主研究で高め合おう
- 1 見えないものを見る
- 2 ヒトはヒトによりてヒトとなる
- 3 外へのちから・内なるちから
- 二 組合は自分のためにあるのだから
- 1 初心を忘れず大切に
- 2 「なぜか」を問い「いっしょにやろう」と
- 3 組合をもっと大きくしよう
- 三 学校・教師の意識を変えて
- 1 子どもの可能性を伸ばす共同を
- 2 問題行動克服への共同を
- 3 広い視点からの共同を
- あとがき
まえがき
いまは教師にとって、きびしい時代だと言われています。かつてなかったほどの困難が迫り、二一世紀においてもそれは増幅されるだろうと予測されるからです。
そうした中でも挫けず元気に頑張りつづけている先生が、全国にはたくさんいます。とくに若い先生たちが「若者のつどい」「元気の会」「明日の希望をみつける会」と銘打って学び合ったり、「名景探訪ツアー」「北海道まるごと食べる会」などの共同行動で励まし合っている姿は、じつに頼もしく、また新鮮でした。
しかし一方、ひとりぼっちの先生が増えているということも数多く耳にします。教室にばかりいて職員室に寄ってこない先生、ワープロやパソコンと向き合っているだけで談笑しない先生、悩むことがあっても誰にも相談せず、研究会や会議でも黙っている。そしてそういう先生は子どもたちと対話・遊びをするにも消極的で、父母との懇談を極端にきらう。そのくせプライドには、妙にこだわるということなどです。
教育という営み、子どもの未来にかかわる仕事をする教師が、このような状態でよいとは思えません。協力・共同してこそ充実した指導ができ、学び合いや討論をしてこそ指導力を高めることができるからです。けれどもこのことを個人の性格・ポリシーの問題とだけみるのは、誤りでしょう。なぜならそれは、政治・社会・教育政策の諸矛盾がつくり出した結果だからです。日本の政治は一貫して店ものと金点を優先させ、人間に大切な協力・共同を軽視してきました。学校教育でも競争と管理によって子どもたちの要求を抑圧し、受験競争では友だちを敵ととらえさせるような風潮を広げてきました。そして二一世紀を迎えたいまは店規制緩和点という名で市場原理を導入し、いっそう苛酷な競争にかりたてつつ人間同士を分裂と孤立に追いこんでいます。ですからひとりぼっちの先生が増えているのは、これらの矛盾によります。またそれは現代の子ども、おとなのすべてに、深く共通する問題だといえるのです。
どうでしょう。このように要因をみると、ひとりぼっちの先生を傍観しているのは好ましいことではありません。また当の先生も「これでいいんだ」と、自分を諦観しているのもよくないでしょう。ひとりぼっちの先生をつくらないための働きかけ合い、ひとりぼっちにならないための自己努力を、今こそみんなでやらなければならないときだと思います。
この本はこうした現状をふまえ、ひとりぼっちをなくす具体的な方法と課題を提言したものです。そして私がこの本にこめた思いを一言でいえば、〈集まれば元気・学び合えば勇気・共同すれば拓ける〉ということに尽きます。ご一読いただき、明日への元気の糧にしていただけたら幸いです。
二〇〇一年一月一五日 /坂本 光男
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- 明治図書