- まえがき
- 一章 子ども同士の笑顔をつくろう
- 一 友だちがいて、ぼくがいる
- 1 縄跳びのできない子
- 2 長い討論
- 3 友情では一位だった
- 二 小学一年生のけんが
- 1 泣く子が二倍も三倍も
- 2 けんからしいけんか
- 3 けんかを劇で再現
- 三 どの子もどこがで役に立っている
- 1 私立受験に落ちた子
- 2 にぎやかに遊ぶ
- 3 子どもでしか通じない世界
- 二章 教師は子どものために笑おう
- 一 忘れられない言葉
- 1 ぼく、頭が痛いの
- 2 おじさん、またきてね
- 3 学校の中のエアポケット
- ニ 腹を立てないでよかった
- 1 美代の顔のあざ
- 2 無理に笑みを見せて
- 3 封筒の中の三千円
- 三 土建の仕事をやりたいと言う子
- 1 おほくろさん
- 2 なぜ宇宙人なのか
- 3 いっしょに山へ登ろう
- 4 淳におくる詩
- 三章 笑顔の教師になるポイント
- 一 活動させて長所をほめる
- 1 まず遊ぶことかう
- 2 何をほめるか
- 3 活動の事実でほめまくる
- 二 友だちづくりへのアイディア
- 1「誕生を祝う会」を環にして
- 2 働きかけ合う内容で
- 3 時間をかけて合意を
- 三 学び合いをつくり育てる
- 1 学習での共同こそ大切
- 2 質問が学び合いのキーポイント
- 3 小さな討論から広げる
- 四章 子どもの味方になって怒ろう
- 一 児童会の役員選挙を守ろう
- 1 腹の立つこと・ベストテン
- 2 養護の先生の助言
- 3 子どもに向ける忙しさなのか
- 二 ともかく子どもの声を聞こう
- 1 ナイフ狩り・持ちもの検査の波紋
- 2 ナイフ狩りは危ないよ
- 3 生徒も考えているのだから
- 三 教師は自分のためにも怒ろう
- 1 二一世紀は庶民の学校が消える
- 2 教師の危機は子どもの危機
- 3 現場教師が未来をひらく
- 五章 庶民の要求で学校をつくろう
- 一 要求が大きな共同をつくった
- 1 もう一名、教員がほしい
- 2 みんなでつくった財産
- 3 教育協同の原点
- 二 頭髪自由化を協同の力で
- 1 校則を変えろ、バカ!
- 2 親が変われば
- 3 生徒たちをほめてやりたい
- 三 小さなことでも大きな意味がある
- 1 昼休みに遊べない
- 2 腹の虫が治まらない
- 3 活発な母親たちの動き
- 四 子どもの行事を守りぬく
- 1 わらび刈りのピンチ
- 2 宿題をやるからやめないで
- 3 人間の真実も守った
- 五 困難でもやれることがある
- 1 卒業式は最後の授業
- 2 結びつけるものが一つあれば
- 3 教師と父母の気楽な関係
- あとがき
まえがき
北陸からの帰路、わたしは若い先生からいただいた学級通信のなかに、心を引く一つの詩を見つけました。
小四・城 信也
〈習字の時間〉
すみをすっていたら
手がすべってぴしゃっとはねた。
黒い水が先生のシャツにもとんだ。
おこられる! と思ったら
先生は「ドキッ」といって笑った。
ぼくも「ごめん」と笑った。
先生とぼくと
みんなにないしょで笑った。
この詩が、なぜ心を引くのだろう。わたしは、しばらくして思いあたりました。希望を見つけたのです。
昨年来、子どもたちの悲惨なニュースがつづきました。教師の受難時代だと、いろいろ耳にもしました。けれども、子どもたちがすべてそうなのではない。教師が心を注げば、信頼でつながることができる。「先生とぼくと、みんなにないしょで笑った」という言葉が、それの証言のような気がしたからです。
そういえば全国のどこの学校・団体のアンケート調査でも「笑顔の明るい先生がいい」と、回答の上位を占めています。やはり子どもの指導に、教師の笑顔は欠かせないものといえるでしょう。
もちろん教育現場の忙しさ、神経を疲れさす競争と管理のもとでは、笑顔を見せたくても余裕がもてない事情があると思います。そのせいか最近は、「暗い先生が多い」「学校が冷たい」と子どもや父母の声を聞くことが多くなりました。
しかし、これは重大事です。見過ごしていたら、ほんらい味方同士である子ども、父母、教師の絆が断たれてしまいます。
考えてみれば、それらの原因は矛盾にみちた政治と文教政策にあります。味方同士は、いたわり合わなければなりません。まず元凶に眼を向けること。そして改善要求をしつつ、子どもたちにはやさしい笑顔を注ぐこと。それがいまを生きる教師に、いちばん大切なことなのではないでしょうか。
この本は、こうした思いのもとに書いたものです。
主な内容を示すと、
@ 子どもの可能性はどこにあるのか。
A どうすれば笑顔のある教師になれるか。
B 父母、地域の人とどう協同したらよいか。
というようになります。
これらを多くの事例にもとづいて述べ、経験の長・短にかかわりなく、すぐ役立てていただけるように編みました。
二一世紀の教育が大きく変えられようとしているいま、“明日をひらく実践"にこの本を役立てていただけたら幸いです。
ぜひ、ご一読ください。
1998年5月 /坂本 光男
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明治図書















