- まえがき
- 第1章 中学生に必要な道徳授業像
- [1] たとえ拙くても,教師の「本気」が生徒に届く /櫛引 丈志
- 1 「今の自分自身でぶつかるしかないんだよ」
- 2 思いが強ければ道は開ける
- [2] 「立志」を育てる最先端の授業 /松原 大介
- 1 新しい道徳授業を提示する
- 2 河田孝文氏の授業
- 3 新しい道徳授業を当たり前にしよう
- [3] 生徒の「実践力」を高める授業:ノートスキル編 /川神 正輝
- 1 『東大合格生のノートはかならず美しい』の授業プラン
- 2 TOSSランド発・オススメ「読み聞かせ資料HP」
- [4] 観光立国教育を通して《生きる気力》を育てる /染谷 幸二
- 1 生徒自身に長所を気づかせる教育
- 2 観光立国教育を教室で実践する
- 3 「世界遺産・知床」の授業
- 4 「生きる気力」を育てる教育
- 第2章 学級経営とリンクさせる授業づくりのポイント
- [1] 北国発の世界最先端・DMVを授業する /染谷 幸二
- 1 《生き方》を伝える授業
- 2 北の大地が生んだ世界最先端技術 DMV
- [2] 中学1年生1学期 個性や立場を尊重する /三並 郁恵
- 1 入学後のトラブル
- 2 『十人十色なカエルの子』を教材にする
- 3 指導の流れ
- [3] 生徒が進んで掃除をするようになった道徳の授業 /野口 敦広
- 1 道徳の授業は担任の思いを生徒に伝えるチャンスである
- 2 実在する人物の生き方が生徒の心を揺さぶる
- 3 自分自身の生き方を考え直させる
- 第3章 こんな道徳授業とはオサラバ!
- [1] 「暗い・批判」から「明るい・取るべき行動」へ /橋 薫
- 1 事実であっても優先順位はどうなのか
- 2 タイガー・ウッズと帽子の授業
- 3 手縫いのサッカーボールの授業
- 4 具体的な行動をしたクレイグ・キールバーガーさんの授業
- [2] 道徳は息抜きではない! 生き方を伝える場だ /山口 俊一
- 1 やらなくても平気な道徳授業との決別
- 2 どんな生き方を教えたのか
- 3 確かな手ごたえ
- [3] 副読本から離れて《本物》を生徒に伝える /志田 智明
- 1 教師のひと手間が道徳の授業を大きく変える
- 2 事実を扱って生き方のヒントを伝える
- 3 TOSSランドの実践が道徳の授業を活き活きと変える
- 第4章 授業づくりの第一歩 私のネタ発見法
- [1] 《力のある資料》を発見する4つの方法 /芦田 まゆみ
- 1 TOSSランド・インターネットで検索する
- 2 本を見る 本屋に足を運ぶ
- 3 テレビ番組をチェックする
- 4 新聞から情報を手にする
- [2] アンテナを張り,普段に生かす /古松 育代
- 1 いつもアンテナを張る
- 2 生徒と一緒に読む
- 3 私のネタ発見法
- [3] 日常にあるネタを生かすも殺すも教師の腕しだいである /風林 裕太
- 1 アンテナを張っておく
- 2 テレビ番組を録画しておく
- 3 追試をする
- 4 本を使って授業をする
- [4] 「本・新聞・テレビ」からネタ発見 /冨士谷 晃正
- 1 本からネタ発見
- 2 新聞からネタ発見
- 3 テレビからネタ発見
- 第5章 実践 「生き方の原理原則」を伝える授業
- [1] 『ハチドリのひとしずく』で「まず自分ができることをしよう」を伝える /伊藤 和子
- 1 TOSS道徳・生き方の原理原則
- 2 「まず自分ができることをしよう」を伝える
- 3 修正プラン〜プラス思考で考えさせる,生徒の意見を活かす〜
- [2] アニャンゴ『夢をつかむ法則』の授業 /山本 雅博
- 1 向山恵理子さんの紹介
- 2 歌い手を目指して
- 3 ケニアでの伝統音楽修業
- 4 卒業試験
- 第6章 実践 「日本人の気概」を伝える授業
- [1] 野口健さんの生き方から「本当のかっこよさ」を伝える /坂本 育朗
- 1 本当のかっこよさ
- 2 授業の実際
- [2] 日本とトルコの心の絆「エルトゥールル号の授業」 /染谷 幸二
- 1 苦い経験を繰り返さない
- 2 中学生に夢を与える授業をする
- 3 授業の実際「エルトゥールル号事件」
- 第7章 実践 「規範意識」を育てる授業
- [1] 人を傷つける言葉がある,人生を壊すいじめがある /櫛引 丈志
- 1 荒んだ言葉が飛び交っている
- 2 死ぬという言葉を簡単に使うな
- 3 いじめは何を壊すのか?
- 4 すべての親が我が子を大切に思っている
- [2] 中学生を納得させる語りで「規範意識」を育てる /山本 真吾
- 1 趣意説明をするための教育相談便り
- 2 実践例@ なぜ,ルールを守らなければならないのか
- 3 実践例A なぜ,茶髪はダメなのか
- 4 実践例B なぜ,制服を折ったり切ったりしてはダメなのか
- 5 実践例C なぜ,授業をきちんと受けなければならないのか
- 第8章 実践 「ボランティア意識」を育てる授業
- [1] たった一人が世界を変える:森田三郎さん /橋 薫
- 1 谷津干潟を救った森田三郎さん
- 2 資 料
- 3 立派な行動だけど手伝えない
- 4 立派な行動が仕事仲間や家族に理解されない
- 5 立派な行動が地元の人に理解されない
- 6 感 想
- [2] ORSから国際問題を考える /風林 裕太
- 1 ポイント@ 実物を使う
- 2 ポイントA 資料を使う
- 3 ポイントB 体験させる
- 4 ポイントC キーワードでまとめる
- 第9章 実践 「愛国心・愛郷心」を育てる授業
- [1] 自分や学校を知り・好きになり・誇ることが第一歩 /佐藤 泰弘
- 1 自分自身,学校に誇りを持たせる
- 2 外国の生徒と関わる機会を増やす
- 3 外国の生徒との関わりを通して日本と外国の関わり方を知る
- 4 外国の生徒との関わりを通して日本について学ぶ
- [2] 先人の生き方から日本の良さを学ぶ /上野 一幸
- 1 戦場で敵の兵士を救助した日本人
- 2 遭難者を献身的に救助した日本人
- [3] 日本の主権を授業で扱う 「尖閣諸島」の授業 /染谷 幸二
- 1 日本の教師が持つべき授業観
- 2 国後島を臨む地区の「北方領土授業」
- 3 授業の実際「日本の領土 尖閣諸島」の授業
- 第10章 評価の問題点,そして課題
- [1] 長い目で見ていかなければ,正確な評価はくだせない /染谷 幸二
- 1 卒業式の朝の写真
- 2 生徒の涙に騙されない
- 3 「道徳」は《生き方の指導》である
- 4 卒業式後の教室の写真
- [2] 「道徳性」「道徳的実践力」の評価と「取り組み」の評価は別である /川神 正輝
- 1 道徳の授業(道徳の時間)・「読書会」への取り組み
- 2 だから「道徳」の評価は難しい
- 第11章 忘れられない道徳授業の思い出
- [1] 力のある資料は,生徒の心を動かす! /星由 紀枝
- 簡単な努力を続けることの大切さ
- [2] 心から共感し褒めること,感動を呼び起こすこと /寺田 加奈子
- 1 「道徳」は自己表現の場だった
- 2 教育実習で学んだこと
- 3 初めて手ごたえを感じた道徳の授業
- 4 教師の「生き方」が問われる
- [3] 明るく全員が納得! 「いじめの正体」 /倉 豊彦
- 1 「よくわかった」と大反響
- 2 道徳「いじめの正体」田上善浩氏(TOSSランドNo.1270027)の追試
- 3 明るい雰囲気で授業が進むポイント
- [4] いじめをしない,させないための話 /小山 典子
- 1 協力社会の話
- 2 いじめと脳の話
- 3 悪口と愛語の話
- 第12章 ベテラン教師からのメッセージ 「道徳」の授業向上策
- [1] すぐれた実践を学び,蓄積していこう /鈴木 勝浩
- 1 まずは学級経営に全力を
- 2 すぐれた実践に学ぶ
- 3 自分が感動したものを授業しよう
- 4 長谷川博之氏の実践からみる道徳の授業
- 5 田上善浩氏の実践からみるTOSS道徳の授業
- [2] 力のある資料を授業の中核にそえる /田中 克彦
- 1 道徳の授業で中学生に何を教えるか
- 2 「力のある資料」とはどのようなものか
- 3 「力のある資料」をどのようにして集めるか
- [3] 「まね」と「憧れ」は授業の向上の早道だ /横山 宏樹
- 1 追試する
- 2 見 る
- 3 書 く
- [4] 道徳は人の生き方を繰り返し教える /山下 修
- 1 気持ちより人の生き方に目を向ける
- 2 模擬授業挑戦が「道徳」授業を変えた
- 3 生徒は人間の生き方に興味を強く持った
- 4 「TOSS道徳」が提起する5つの内容
- 5 若い先生方にアドバイスできること
- あとがき
まえがき
教員1年目,私は素敵な校長先生に出逢った。
入学式を翌日に控えた日の午後,私を生徒玄関に連れて行き,次のような話をしてくれた。
教室での生徒の表情や態度は,ある意味,仮の姿です。生徒の本当の姿は,靴箱に表れます。
靴がきちんとそろっている生徒は,真面目に努力している生徒です。
靴が無造作に置かれている生徒は,心のどこかに問題を抱えています。教師が真剣に見てあげなければならない生徒です。
この言葉が,今の私を支えている。
私は1日に2度,生徒玄関に足を運ぶ。1度目は朝。朝の職員打ち合わせが終わり,教室に向かう際に立ち寄る。一瞬で欠席した生徒がわかる。連絡がなければ,職員室に戻り家庭に電話をする。
雨の日は,靴が濡れていないかを確認する。靴が濡れているなら,制服も濡れていることが予想される。すぐに着替えさせた方がいい。思春期の中学生は自分から着替えを申し出ることをためらう傾向にある。教師から「着替えた方がいいですよ」と言ってあげることも教師の優しさだ。こうした情報も,靴箱が教えてくれる。
生徒が帰宅した放課後にも,靴箱を見る。
きれいに靴を入れていた生徒が,急に乱れ始める場合がある。こういった場合は要注意だ。直接,その生徒に話を聞いてみる必要がある。私の経験では,友人関係に悩んだり,卒業後の進路のことで保護者と意見が食い違っている場合があった。
逆に,急に靴をきれいに入れ始める生徒もいる。何か目標を見つけ,それに向かって集中して生活をしている証拠だ。こういった生徒には,日常のさり気ない行動を褒めてあげればいい。急激に力を発揮するはずだ。生徒の心の変化を靴箱が教えてくれる。
私にとって,靴箱は《定点観察の場》である。
生徒に靴箱をきれいに使わせたい。
これは,本当に大変なことだ。学校単位で考えるならば1年以上かかる。学級でも3か月はかかる。まさに,生徒と教師の根比べである。きれいに使っている生徒を褒め,乱れている靴を直す。1週間で,乱れている靴が半減する。
ここまでは手応えがある。ここからが本当の勝負だ。なかなか100%に到達しない。誰かが,無造作に入れてしまうからだ。
直接注意することは簡単だ。しかし,生徒の心に問題があるのだから,その問題を解決してあげなければ,すぐに元の状態にもどってしまう。
靴箱を正常に使わせたかったら,靴箱以外の部分も指導しなければならないことに気がつく。教室の机や椅子,給食に使う白衣,掃除用具箱,生徒用ロッカーといったさまざまな部分が正常でなければ,靴箱も正常にならない。まさに,総合力が問われているのである。
勤務校の靴箱である。
どのような感想を持たれただろうか?
(写真省略)
環境が,生徒の行動を規定する。
学校の顔である生徒玄関。生徒が毎日使用する靴箱。ここから学校のすべてが見えてくる。ここに気を配れる教師でなければ,学級経営も,生徒指導も,部活動経営も,もちろん授業も「その程度」である。
一事が万事。
すべてがつながっているのである。
本書はTOSS中学で学ぶ教師が,日々の実践の中で感じたこと,考えたこと,学んだことを中心に執筆した論文集である。《生徒にとって価値ある教師でありたい》という共通の志を持った仲間と1冊の本を完成させた喜びは格別のものがある。
我々と同じく,《生徒にとって価値ある教師でありたい》という志を持った教師に読んでいただきたい1冊である。
TOSS中学 /染谷 幸二
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- 明治図書
- 具体的に授業ができるようになっているのが良かった!2020/4/2540代・中学校教員