- はじめに
- 第1章 道徳授業が苦痛…
- 1 来週の道徳授業は,何をするかな?
- 2 何か,いい資料はないかな?
- 3 まあ,副読本の資料でいいか!
- 4 「何を中心に話し合いをさせたい?」と言われても…
- 5 指導案は必要なの?
- 6 生徒からの反応がない…
- 7 ワークシートは,いったい何の意味があるの?
- 8 板書は,どのようにすればいいの?
- 9 授業で学習したことが実践化されない!
- 10 「心のノート」は,どのように活用すればいいの?
- 第2章 生徒の心に響く道徳の授業に出会った!
- 1 道徳授業を参観するのですか? そんな暇ないし…
- 2 何かが違うぞ??
- 3 導入から違う!
- 4 資料提示が,こんなにも大切なのか!
- 5 どんなふうに? どのように? どんなことが?
- 6 板書も違う!
- 7 何とすばらしい表現力なんだ!
- 8 できることから始めてみよう!
- 第3章 さあ,生徒の心に響く道徳授業を始めよう!
- ―二人の先生の授業実践から
- 1 「願いや思い」をもつことから始めよう!
- 2 資料探しが違う!
- 3 資料を探したら,教師自身の手で改善しよう!
- 4 指導案には,教師の「思いや願い」をまとめよう!
- 5 A先生の道徳授業の実際
- 6 B先生の道徳授業の実際
- 7 B先生から学ぶ,授業づくりのテクニック
- (1) 補助発問について
- (2) 板書について
- (3) 表情・反応・声の大きさについて
- (4) ワークシートについて
- (5) 机間指導について
- (6) 評価について
- (7) 「心のノート」について
- 生徒の心に響いた道徳授業
- 【実践例】1 「新垣勉さんの世界」
- 【実践例】2 「キッズコスメ」
- 【実践例】3 「遊ぼうよー」
- 【実践例】4 「あこがれの先輩」
- 【実践例】5 「試合に出られなければ意味がない」
はじめに
「いじめは絶対に許しません! このクラスからいじめをなくします!」
「立派な意見に聞こえるけど…。明らかに生徒は教師の期待する答えを先回りして発言している。今日の授業は,生徒の心に響いているのかな? 決して響いていないだろう…」
いじめ問題を取り上げた道徳授業を参観して,このような思いにかられました。もちろん,これは憶測に過ぎません。しかし,毎週,生徒と向き合っていると,生徒の心に響いているか,いないかぐらい分かるようになります。
今どきの中学生ときたら,「こんな発言をしたら,先生は喜ぶだろう」と考え,先回りして発言します。しかし,生徒は分かりきった発言をしたところで,心に何も響いてはいません。
道徳授業は,教師が生徒の内面を見つめ,心をゆさぶる時間です。このような時間をつくり上げていくためには,教師は,「願いや思い」をもつことから始めなければなりません。そして,その時間こそが,生徒の心に響く道徳授業につながるのです。
かつて,私の道徳授業は,「願いや思い」をもつことがありませんでした。とりあえず授業をこなすことが目的だったからです。毎回,無計画の「でたとこ勝負」で,生徒の心に響かない道徳授業を行っていました。今,思い出すと,とても恥ずかしい気持ちで一杯です。
あるとき,運命を変えるほどの授業に出会いました。そのとき,「願いや思い」の大切さを知りました。しかし,それだけでは不十分でした。どのように授業を改善すればいいのか分からなかったからです。
資料を十分に読み取り,指導案を綿密に作成し,補助発問を駆使し,するどい感受性をもち,板書・ワークシート・机間指導などを充実させなければならないことを知ったのは,それから何年も経った後のことでした。結局,「これでいいのか?」と感じながらも,生徒の心に響かない道徳授業を続けていったのです。
しかし,そのとき,「願いや思い」をもつことから始める大切さを知ったからこそ,細々と道徳授業を積み重ねていくことができました。あるときは研究授業を行い,またあるときはほかの先生の研究授業に足を運びました。そして,生徒の心に響く道徳授業の手応えを少しずつ感じられるようになりました。
今回,このような経験を生かして,同じような悩みを抱えていらっしゃる先生方のために,本書を刊行させていただくことになりました。本書に登場する若手の先生,A先生,さらにはB先生など,すべてこれまでの私自身をモデルにして書き上げたものです。決して,架空の先生の話をつくったものではありません。したがって,同じような悩みを抱えている先生方には,少しでもお役に立てるものと確信しています。
ただ,私の乏しい経験など,全国におられるベテランの先生方に比べれば,まだまだ未熟なものに過ぎません。ぜひ,一人でも多くの先生方にお読みいただきまして,ご批正,ご助言をいただけましたら幸いと存じます。
終わりになりましたが,出版に当たって多大なるご尽力を賜りました明治図書の仁井田康義氏・近藤博氏に厚く御礼申し上げます。
2009年3月 /松原 好広
-
- 明治図書