- はじめに
- 第1章 Q&Aで道徳授業の基礎知識を
- (1) 「要」って,どういうこと?
- (2) つまり,道徳の時間って何?
- (3) 道徳授業で,子どもは本当に変わるの?
- (4) 未熟な自分が道徳を教えられるの?
- (5) 子ども理解は,どう生かせばいいの?
- (6) 道徳の年間指導計画は,どうやってつくるの?
- (7) 「ねらい」と「評価」は,どうやって立てるの?
- (8) 資料選びのポイントは?
- (9) 資料提示では,何が大切なの?
- (10) 範読のコツは?
- (11) 指導過程にきまりはあるの?
- (12) 「展開前段」と「展開後段」とは,どういうこと?
- (13) 学習指導案は,どうやって立てるの?
- (14) なぜ,授業公開をしなくてはいけないの?
- (15) エンカウンターは,使ってはいけないの?
- (16) 子どもがタテマエしか,言わないけれど…
- (17) 板書には,子どもの発言をどこまで書けばいいの?
- (18) ワークシートは,使わなくてはいけないの?
- (19) 話し合いが活発にならないけれど…
- (20) 道徳の時間に「体験活動」を,どのように生かせばいいの?
- (21) 家庭や地域とは,どうやって連携したらいいの?
- 第2章 心が響き合った道徳授業
- (1) 道徳の時間の魅力,それは自分の思いを伝えられること〜体験入学生,徹也君との出会いを通して〜
- (2) みんななら大丈夫!〜子どもたちの実践意欲につながった道徳授業〜
- (3) あふれる感動を伝え合った道徳授業〜資料を大切にしながら授業に臨む〜
- (4) K君と私〜二人の心の成長と道徳の時間〜
- (5) 子どもたちが変化や成長のきっかけとする道徳の時間〜4月には道徳授業で学級のスタートを〜
- (6) 自分のよさに気付くきっかけとなった道徳授業〜劣等感が自信に変わる〜
- (7) はじめのいっぽ〜入門期の子どもたち,保護者と共に〜
- 第3章 だから,道徳授業が大好きになった
- 1 歌うとき踊れ
- 2 子どもを輝かせる時間=道徳
- 3 原点「ぼくのお母さん」
- 4 道徳に感謝!
- 5 道徳授業を大切にすることは,クラスを大切にすること
- 付録 全体計画・年間指導計画・学級における指導計画について
- おわりに
はじめに
本書「道徳授業が大好きになる本」は,道徳指導研究会(略称:道指会)の研究レポートをまとめたものです。
道指会は発足以来40有余年,毎月第3土曜日に研究仲間が集まり,研究活動を続けてきました。その研究内容は一貫して,道徳授業の事例を中心とした実践的なものでした。初代の主宰古島稔先生をはじめとして久保千里先生,荻原武雄先生からの熱いご指導をいただきながら,先輩から後輩へと研究は受け継がれてきました。
本会発足当時に比べ道徳教育を取り巻く状況や道徳教育上の課題は大きく変化してきましたが,いつの時代にあっても私たちは心豊かな児童の育成を願い,児童の心に響き心を耕す道徳授業の在り方を求め続けてきました。
折しも,平成21年度(2009年度)から「道徳」は新しい学習指導要領に基づいて先行実施されています。
今回の学習指導要領の改訂に際し,中央教育審議会では道徳教育上の課題として「生命尊重の心の不十分さ」「自尊感情の乏しさ」「基本的な生活習慣の未確立」「規範意識の低下」「人間関係を形成する力の低下」など子どもの心の活力が弱っている傾向を挙げ,加えて社会参画への意欲や態度の形成が求められていることを指摘しています。そして,こうした課題を克服するために道徳教育のさらなる充実と実効性のある推進を強く訴えています。
今回の改訂のポイントは,おおむね次のとおりです。
・教育基本法改正等を踏まえ,伝統や文化の継承・発展,公共の精神の尊重を道徳教育の目標に追加したこと。
・小学校の道徳教育では,基本的な生活習慣やきまり,善悪の判断,人間としてしてはならないことをしないことを重視することを規定したこと。
・道徳教育は,道徳の時間を「要」として学校の教育活動全体を通じて行うものであることを明確化したこと。
・道徳の時間の目標として,自己の生き方についての考えを深めることを追記したこと。
・児童の発達の段階に応じた指導の重点を明確化したこと。
・各教科等で,それぞれの特質に応じて道徳の内容を適切に指導することを明確化したこと。
・道徳教育推進教師を中心に,全教師が協力して道徳教育を展開することを明確化したこと。
・先人の生き方,自然,伝統と文化,スポーツなど,児童が感動を覚える魅力的な教材の開発や活用について明記したこと。
このように,新学習指導要領における道徳教育に関する記述は今まで以上に具体的かつきめ細かなものとなり,学校教育における道徳教育の重要性が一層強調される形となりました。私たちは従来から変わることのない道徳教育の基本方針に基づき,新しい学習指導要領の趣旨を踏まえた指導に全力で取り組まなければなりません。
こうした意味で,本書は時宜にかなったものになったと自負しています。
第1章では,Q&A方式で道徳授業の展開に必要な基礎知識について端的にまとめています。
第2章では,まさに新進気鋭の本会メンバーが自己の道徳授業実践に基づきながら事例を紹介しています。
第3章では,本会の先輩が自己の体験に基づきながら「道徳授業が大好きになった」きっかけを具体的に語っています。
その内容は道徳教育の基礎・基本と児童の実態を大事にした地道なものばかりです。特に児童への熱い思いは本会の研究の特色といってもよいでしょう。朴とつながら道徳教育への情熱だけは人一倍の教師たちが喧々諤々の協議を通してまとめたものです。
本書は自分の道徳授業について振り返り,検証してみたいと思っている先生や道徳教育推進教師の立場にある先生にぜひ読んでいただき,役立てていただきたい本です。
とりわけ,道徳教育推進教師の立場にある先生の役割は大きく,自校の道徳教育推進の,まさに「要」の役割を担っています。つまりその役割は,全教師が協力して展開する道徳教育を実現することにあるのです。
「好きこそものの上手なれ」道徳教育推進の任を負っている先生だからこそ,率先して道徳授業が好きになってほしいと願います。その姿から目に見えない魂の光が発せられ,推進の大きなエネルギーとなることでしょう。
このほかにも,「道徳教育の全体計画」「道徳の時間の年間指導計画」「学級における指導計画」の作成をはじめ,道徳授業の指導体制にかかわって道徳教育推進教師の働きに大きな期待が寄せられています。これらのことについても何らかのお役に立てることと思います。
おわりに,本会のよき理解者であり,陰に陽に適切なご指導・ご助言をいただいた明治図書の仁井田康義氏に心からの感謝を申し上げます。
平成21年7月 道徳指導研究会会長 /後藤 忠
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- 明治図書