明るく楽しい構造化方式の道徳授業 中学校編

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生徒の心に道徳性を育て、喜びと充実感をもって道徳的価値の自覚を深める構造化方式の授業。この指導法を用い、様々な課題に応える各学年ごとの豊富な実践例を紹介する。


復刊時予価: 2,849円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-804426-8
ジャンル:
道徳
刊行:
3刷
対象:
中学校
仕様:
A5判 200頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

T 構造化方式のすすめ
1 道徳授業改善の課題
2 構造化方式の特色
U 生徒の心に寄り添う構造化方式の授業
1 心に葛藤を生じる場合
(1) 生徒の発達段階や特性を生かす指導
第1学年/ 第2学年/ 第3学年
(2) 悩みや心の揺れ,葛藤を生かす指導
第1学年/ 第2学年/ 第3学年
(3) 総合的学習と関連を図った指導
第1学年/ 第2学年/ 第3学年
2 生徒のよさを生かす場合
(1) 体験活動を生かす指導
第1学年/ 第2学年/ 第3学年
3 生徒の願いに根ざす場合
(1) 人から認めてもらいたい願い
第1学年/ 第2学年/ 第3学年
(2) 夢や希望を育てる指導
第1学年/ 第2学年/ 第3学年
4 人間を超えるところにかかわる場合
(1) 知りうることの限界にかかわる場合
第1学年/ 第2学年/ 第2学年/ 第3学年
5 感動する心に結びつく場合
(1) 感動を通して価値の自覚を深める指導
第1学年/ 第1学年/ 第2学年/ 第3学年

まえがき

 青少年の心の問題がますます大きな問題となり,道徳教育に期待する世間の声が大きくなっています。問題行動の根底にあるのは心,つまり価値の意識の不在,言い換えれば「道徳性」の不在です。価値の意識が育っていればそれが自らの生き方を見いだす能力となり,自分の生きがいの実現に向けて力強く生きることになるのですが,道徳性が十分育っていないために,自らの生き方が見いだせず,そのためにありとあらゆる非行に走ったり,無気力になったり,指示待ち人間になっていたりするのです。

 学校内にも問題行動や無気力な生徒が増え,指示待ち人間が多くなったという嘆きも多いのが現状です。

 道徳教育はこれらの課題にどう応えていけばよいでしょうか。

 問題行動が多いところから,先生方から行動化を直接目指す指導を強化しなくてはならないという声も聞きます。行動化を図る指導で行動をよくすることができるでしょうか。もしできるなら,これまでにできているはずではなかったでしょうか。行動についての指導は常に行ってきたはずですから。

 もっと根本のところから問題をとらえなおして,生徒の心の奥にあるものに目を向け,生徒の根元的な願いをとらえ,生徒の期待するところに応える指導をすすめる必要があります。生徒が生きがいある人生を見いだせば,その実現に向けて力強く取り組み,問題行動に走ったり無気力になったりしている暇はないのです。行動を正そうとするなら,こうした着眼点が大切です。

 道徳授業が重苦しいという声を相変わらず聞きます。指導しても実践につながらないからむなしい,という声も相変わらずです。

 一つの道徳的行為にはいくつもの道徳的価値がかかわり合っています。それなのに,授業で主題のねらいとして立てた道徳的価値だけで実践化を図ろうとすれば,生徒は何となくおかしいという感じをもってしまい,身に付いた指導とすることができなくなります。重苦しさもそこから生まれます。

 学習指導要領では,「道徳性」の育成を目指しています。道徳性は機能としては行動や判断の基準となりますが,構造としては「道徳的諸価値は一人一人の内面において統合されたもの」(解説)と説明されています。その道徳性を育てるのが道徳授業の目指すところなのです。道徳性を育てるために,主題のねらいの道徳的価値の自覚を深めるのです。つまり,心にしっかりと受け止めさせるのです。その集積として道徳性が育つのです。道徳性が育てば,あたかも池がいっぱいになれば水があふれ出るように,実践として表れるのです。

 道徳性育成の決め手となるのは,どのようにして価値の自覚を深めるかです。道徳的価値を外側から強制しようとしても生徒の心は受け入れてくれません。そこからも重苦しさが生じます。知的理解ですむ教育と違って,道徳的価値の自覚は,心が受け入れてくれなければ指導になりません。

 そこで構造化方式が重要になります。構造化方式は,道徳性を育てる筋道と道徳的価値の自覚を深める筋道を明確にしたもので,1970年代末ごろから筆者が形づくりはじめ,1996年の『道徳授業の基本構造理論』(明治図書)によって一応の完成を見たものですが,新学習指導要領が道徳性の構造をはっきりさせ,価値の自覚を深めることを目標に掲げ,道徳性を育成する筋道を示唆しているために,これにぴったりと合った指導論です。

 構造化方式は,道徳的価値の自覚を深める際,どの主題の指導においても,生徒の心が喜びをもち,充実感をもって受け止めるようにする授業論です。道徳授業の現在の問題点をすべて克服でき,明るく楽しく生徒が生き生きと受け入れてくれる指導論です。これによって,生徒の人生が切り開かれ,社会の期待に沿う道徳指導が展開されることを期待しています。

 本書は,明治図書の編集部長仁井田康義氏の企画と叱咤激励によって誕生することができました。構造化方式が道徳授業の活性化に役立つことができれば大変ありがたく,誌面を借りて深く謝意を表します。


  平成12年10月   /金井 肇

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