- まえがき
- T こんな道徳授業を待っていた
- 一 残念な現状──道徳授業は「振り替え」のトップスター?
- 二 授業の証明──「道徳」が大好きな子供たち
- 三 「道徳」教材開発を
- U よりよく生きる勇気を
- 一 生きるってすばらしい──片腕の大リーガー・アボット投手
- 1 「アボット投手の授業」を創る
- 2 授業の実際
- 3 アボット投手──その後
- 二 「星野富弘さん」の世界
- 1 「星野富弘さん」の授業の広まり
- 2 私の「星野富弘さん」の授業
- 3 野口芳宏先生から
- 三 盲導犬サーブの真実の愛と勇気
- 1 私と盲導犬サーブ
- 2 紙芝居を作る
- 3 サーブ(銅像)に会いに行く
- 4 授業を終えて
- V 生き方のイメージトレーニングを
- 一 「いじめ」ってカッコ悪い
- 1 美意識を育てる
- 2 授業の実際
- 二 悲しい言葉と幸せな言葉
- 1 教師刺殺事件についての私見
- 2 授 業
- 三 世の中はマンガより美しい──課長『島耕作』電車の一場面を授業する
- 1 電車(バス)で席を譲るということ
- 2 『島耕作』の一場面を検討する
- W 「総合的な学習」へ発展する道徳授業
- 一 教材開発は海を越えて──褐色のバンドエイド
- 1 これは何?
- 2 実物がほしい
- 3 教材化へ
- 4 どんな授業を創るか
- 二 「環境」の教材開発──デポジット制度を考える
- 1 誌上模擬授業
- 2 授業プランができるまで
- X イラストで創る道徳授業(イラスト 前田康裕)
- 一 良心で生きよう──十円足りなかった男の子
- 1 だまっていようか
- 2 授業をどう創るか──授業構想
- 3 授業の実際
- 二 AorBではなくCを──誕生日の招待状をもらった女の子
- 1 日記文に見る三つの論点
- 2 授業の実際
- 3 別の選択肢Cを
- 三 弱さを見つめて、弱さを乗り越えて──マラソン練習での出来事
- 1 マラソン練習の日記から
- 2 授業の実際
まえがき
世の中、どうしても自分の好みにしっくりこないものが、一つや二つはあるものだ。
いくら、
「普通は、こうやるものだ」
と教えられても、性に合わないのだから仕方がない。
副読本を使い、「基本型」に基づいて展開されるあの道徳授業のスタイルは、私にとって性に合わないものだった。
自分が納得する既成の教材がないのなら、自分で創るしかない。
私は、自分の性に合ったネタ(別の言い方をすれば、自分の感性に響いたネタ)をもとにして、道徳教材を開発するようになった。
以来、十数年になる。
いったい、どれだけの授業を創ってきたのだろうか。
著書や道徳教育関係の雑誌に掲載した授業記録だけでも三〇本を越えている。その他の教育雑誌に執筆した授業や未公開の授業を加えれば、私が創出した道徳授業は、一〇〇本以上になるであろう。
二〇〇二年。
新教育課程がスタートし、日韓共催のサッカー・ワールドカップが開催される記念すべきこの年に、これらの授業記録の中から、ベスト・イレブンを選んでみたい。
佐藤幸司の道徳授業ベスト・イレブンである。
ただし、自分のお気に入りの授業を列挙するだけでは、それぞれの授業の主張がぼやけてしまう。いくつかの授業を組み合わせなおして、教材開発の眼目をより明確にしてある。その結果、授業実践の具体例は、第U章から第X章まで全部で四つの章に分けられた。
本書に収めた授業を追実践していただければ、著者としてこれほど嬉しいことはない。その願いから、発問や指示、説明などは、実際に子供たちに語りかけたそのままの言葉で明記してある。また、コピーしてすぐに使える資料も掲載した。諸事情によりそのまま掲載できない資料については、授業風景の写真で示したり、入手先を記載したりしてある。
すべて、授業の事実に裏付けられたベスト・イレブンである。
イレブンたちのこれからの仕事は、新しいグラウンド(教室)で、子供たちの心を育てることである。
新しい監督(担任の先生)のもとでの活躍を期待したい。
ベスト・イレブンを世に送り出すにあたり、明治図書の江部満氏をはじめ、たくさんの方々から応援をいただいた。心より感謝申し上げる。
二〇〇二年三月二十四日(春の訪れを感じながら……) /佐藤 幸司
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- 明治図書