新しい道徳授業づくりへの提唱17
問題解決学習としての道徳授業

新しい道徳授業づくりへの提唱17問題解決学習としての道徳授業

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子どもたちが主体的に授業に参加し,生き方や在り方を自らの力で考え成長する力を育てるため,「問題解決的な学習」の具体的実践例を紹介する。


復刊時予価: 2,354円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-801516-0
ジャンル:
道徳
刊行:
対象:
小・中
仕様:
A5判 132頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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はじめに
1 「道徳力」を育てる道徳授業
(1) 本書編纂の意図
(2) 本書で主張する道徳授業の性格
(3) 問題と課題
2 こんな道徳授業はいかがですか
(1) 問題解決の一場面
(2) 問題解決に取り組むために
(3) 問題解決学習へのアプローチ
○1年生のお世話から学ぶ(6年)
○自由討論(5年)
○私の悩み「差別」を取り上げる(5年)
○「問題だ」と言える場の保障(6年)
3 道徳授業における問題解決学習はこんな力を育てる
(1) 問題解決の手順「育てたい三つの力」
(2) 問題解決学習が敬遠されてきたわけ
(3) 今こそ学習の形態を変えていくとき
4 問題解決学習にこう取り組んだ
(1) 問題発見のために 〜問題の課題化〜
(2) ねらいの設定
5 問題解決学習の実際
みんな仲よくしよう(1年) 〜一人ひとりへの願いをはっきりさせた例〜
みんなで緑をふやそうキャンペーン(2年) 〜総合学習と関連させた例〜
ほんとうの友だちがほしい(3年) 〜日記「心の旅」をきっかけとした例〜
だれもが楽しめるルールに(3年) 〜学級活動から発展した例〜
星子・月子・空子の場合(4年) 〜子どもの反応を受け、次の時間の資料を作った例〜
今、自分ができること(5年) 〜複クラス合同の学習(T.T.)として取り組んだ例〜
自分自身を見つめるこどもたち(5年) 〜一資料から複数主題を追求した例〜
きまりはどれだけ必要か(5年) 〜単クラスの学習として〜
命について考えよう(6年) 〜保護者・地域の方々と共に考えた例〜
自分の能力ってなんだろう(6年) 〜子どもが全体計画を作成し課題を追求した例〜
同じ人間として〜人の権利を考える(6年) 〜多時間扱いで追求する〜
おわりに

はじめに

 中教審の「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」一・二次答申、「幼児期からの心の教育の在り方について」の答申等や、それらを受けた教課審の答申という今回の教育改革の動きを通して、「心の教育」や「個性を大切にする教育」が強調されていることは周知のとおりであるが、端的に言ってこのことは、学校における道徳教育の重視という姿勢を改めて示していると考えられる。

 「心の教育」とは、子どもの心をある一定の方向に育てる教育ではないことは言うまでもない。子ども自身が人間として望ましい生き方をするために自らの心を育てることを援助する教育であると言えよう。

 であるから、「個性を大切にする教育」は「心の教育」の大切な営みでもあり、さらには人間としてよりよく生きるための基盤となる道徳性を培う道徳教育の問題となる。

 そこで取り組まねばならないことの一つは道徳の時間の充実である。今回の教課審答申の年間標準授業時数の改定では、各教科(生活科を除く)や特別活動の時数削減の中で、道徳の授業時数は従来と変わっていないが、このことは、道徳の時間が従来に比べてもっと充実し、もっと機能しなければならないという意味であることを肝に銘じたい。そしてまた、今こそ道徳の時間を充実させるための絶好の機会でもあることを、見落としてはならないのである。教課審答申が道徳の時間に関して、重点的な指導の工夫、さらにはボランティア活動などの豊かな体験を生かす工夫、子どもたちが主体的に授業に参加できるよう観察や役割演技などを取り入れた授業の工夫、地域の人々の授業参加や図書館、博物館等の活用による発展的な学習の工夫(これらの活動が道徳の時間にとって替わるのではない。あくまでも道徳の時間のために、これらの活動を生かすのである)などを挙げていることも、道徳の時間の改革のためにしっかりと受け止め、各学校の創意を生かし、「総合的な学習の時間」との関連を研究するなどして、積極的に活用していきたい。

 そもそも道徳の時間の学習は、子どもたち一人ひとりの心の問題である。“道徳の時間とは何か”の問いの答えに一例を挙げれば、それは“ねらい(道徳的価値)に照らして、子ども一人ひとりが自分自身の生き方(過去の体験、現在の思い、将来の希望)の中の課題について深く感じ、考える時間”ということができよう。であるから、たとえば学級に30人の子どもがいれば、中心となる発問に対してねらいに照らした30とおりの正答があり得る時間であるわけである。裏を返せば、道徳の時間は子どもたちが自らの心を動かし、主体的に学ぶ営みがなければ成立し得ないことになる。このことにかかわって、今までの道徳の授業はいかがであっただろうか。子どもたちが自らの心に問いかけた度合いは、自らの生き方の課題に立ち向かった度合いはどうだったろうか。そして、教師はそれらのことにどうかかわっていただろうか。さらには、これからの道徳の時間を、子どもたちと一緒にどのようにやりある時間にしていこうと考えているのだろうか。

 新教育課程における新しい道徳の時間は、“今まで”を土台により豊かなものでありたい。心が響き合う、あるいは心がおどる学習の時間でありたい。そうした熱い心の現れが“「知(認識)」と「情(感情)」を同時に磨きはぐくんでいく道徳授業の具現化”を目指し、「問題解決型道徳学習の実践」をかかげた本書の提案である。こうした提案が、“道徳の時間を充実させるための絶好の機会”を“ほんもの”にしていくことを信じてやまない。


   /荻原 武雄

著者紹介

荻原 武雄(おぎわら たけお)著書を検索»

青山学院大学講師

前東京都千代田区立麹町小学校長

清水 保徳(しみず やすのり)著書を検索»

東京学芸大学教育学部附属竹早小学校教諭

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
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      2015/5/17このシステム、続けてください。

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