生き生きとした構造化方式の道徳授業 中学校

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「構造化方式」は指導の方法ではなく,どのような方法をとるにしても必要な指導の原理,筋道であり,どの指導過程にも当てはまるのである。


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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-800424-X
ジャンル:
道徳
刊行:
対象:
中学校
仕様:
A5判 120頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

まえがき

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道徳授業にはすぐれた実践が多いが,そうでない例も少なくない。『道徳教育』平成9年4月臨時増刊号に載せられた,道徳授業についてのアンケート結果でも,道徳授業が楽しいという子どもたちの反応が多い。しかし,楽しいという反応は小学校低学年で最も多く,発達段階が上がるにつれて減少し,中学生で最少となる。そして,道徳授業が「つまらない」という反応が増える。
道徳の授業は,子どもの心を育て,一人ひとりの人生をつくる能力を育てる重要な指導の場であり,また,いじめほかの問題行動の増加も心の問題から生じていると言えるから,道徳授業はすべての子どもの心を育てることができるようにしなくてはならない。教科指導では全員満点をとるわけではないが,道徳では一人の例外をもつくることはできない。
どのような子どもにも心から受け入れられる授業をつくり出すにはどうすればよいか。道徳授業を根本から見直し,指導の原理から考えなくてはならないのである。
どうすればそれができるか。子どもたちが喜んで受け入れている授業が現にあるのだから,そこにあるすぐれたものを導き出し,それを生かした指導を展開すればよいのである。すぐれた指導があるということは,道徳の授業が本来つまらないものではなく,子どもが受け入れないものでもないということを実証している。現にある指導の中からすぐれたものを見いだすということが,授業改善のための第一の着眼点である。
第二の着眼点は,教育を受ける子どもの反応から改善点を見いだし,そこから改善を図ることである。教育が効果を発揮しているかどうかは,子どもにどのように受け入れられたかを通してみなくてはならない。授業の改善は,子どもの反応をもとに行うことが最も重要である。その際,前掲の調査は重要な資料となる。
本書で述べている「構造化方式」は,上述の二つをもとに開発したものである。どのように問題をもっているように見える子どもにも,心にしみこむ指導をすることができる。堅苦しくなったり建て前だけになったりすることもないから,教師も子どもも楽しく授業を進めることができる。
授業がつまらなくなり,子どもが拒否反応を示すようになるのは,資料に表れている場面で,「どうすればよいか」,「どう考えればよいか」という方向で指導する場合が多い。このような指導は,子どもの行動を左右し,考え方を左右して子どもを鋳型にはめることになりやすいから,子どもの反応も芳しくなくなり,教師も建て前と感じて忸泥たる思いをもつため,生き生きした指導になりにくい。つまらない授業になってしまうのは,教師の,道徳というものに対するイメージに問題があるからである。
構造化方式では,道徳性を形成する筋道ないし原理がはっきりしているために,子どもの考え方や行動を左右することには全くならない。逆に,子ども自身の固有な判断や行動の基準を作ることになるので,子どもも教師も意欲的に授業を進めることができる。教師は自身の指導力に疑問をもつこともなくなる。師弟同行の意味が具体的にはっきりするからである。
構造化方式の理論は,『道徳授業の基本構造理論』(明治図書)に述べた。本書は,執筆して下さった先生方の協力を得て,それを具体的な授業展開の形にし,実践を経て授業の事例集としてまとめたものである。
現に構造化方式で指導を進めている教師たちからは,「子どもの反応が全く違ってきた」,「子どもが生き生きとし,教師も楽しく授業を進めることができる」等の感想が寄せられている。本書の事例が広く参考とされ,子どもたちのよりよい人生を切り開くことになることを願っている。
本書は,明治図書の仁井田康義氏のご支援があって誕生することができた。紙上を借りて厚くお礼を申し上げたい。
平成10年3月   /金井 肇
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