- はじめに
- 本書の使い方
- CHAPTER 1 新しい音楽科教育の授業実践に向けて
- [1] 中学校音楽科の課題と学習指導要領改訂の趣旨
- 1 ゆとりカリキュラムの課題
- 2 中学校音楽科の課題
- 3 学習指導要領改訂の趣旨
- 4 中学校新学習指導要領「音楽」の特色
- [2] 音楽の授業を魅力的に変えよう
- 1 学習指導要領の内容と音楽科で求められている学力を理解する
- 2 生徒の発達段階を理解する
- 3 生徒の実態を適切に把握する
- 4 多様な題材を扱う
- CHAPTER 2 中学校第2学年音楽科授業プランの新モデル15
- [1] 歌 唱
- 1 「浜辺の歌」の歌詞や曲想を味わって,工夫して歌おうA(1)ア
- ヒント 表現を工夫するまでの学習ステップをていねいに行う
- 解 説 歌唱共通教材「浜辺の歌」の魅力とは?
- 2 曲種に応じた歌い方を工夫しようA(1)イBアイ
- ヒント 比較鑑賞の工夫
- 解 説 曲種に応じた発声とは具体的にどのようなことか?
- 3 豊かな合唱表現をしようA(1)ウ
- ヒント 短時間で質の高い合唱を行うための教材・教具の活用
- 4 「夏の思い出」の表現を工夫しようA(1)アイ
- ヒント 曲にふさわしいピアノ伴奏,音楽記号と表現の工夫
- 解 説 歌唱共通教材「夏の思い出」の魅力とは?
- 5 速度の働きによる曲想の変化を感じ取って歌ったり聴き味わったりしようA(1)アBア
- ヒント 知覚・感受を深める手立て
- 解 説 音楽科における学習意欲の向上や学習習慣の確立の方法は?
- 解 説 歌唱共通教材「荒城の月」の魅力とは?
- [2] 器 楽
- 6 曲想を味わい,思いや意図をもってリコーダーを独奏しようA(2)ア
- ヒント 演奏活動だけに終わらないための工夫
- 7 ギターを弾こう〜ギターの基礎とアンサンブルの楽しみ〜A(2)イウ
- ヒント 学習ペアによる相互評価
- 解 説 ギターを指導する上のコツとは?
- 8 キーボードで和音を工夫しようA(2)アイ
- ヒント 「音符カード」と「音符見え消しシール」の活用
- 9 篠笛で郷土の音楽を味わおうA(1)ウ(2)イウBアイ
- ヒント 「聴く→表現する→聴く」の展開の工夫
- 解 説 音が出やすくなる篠笛の指導のポイントは?
- [3] 創 作
- 10 五つの音で曲をつくろうA(3)ア
- ヒント 取り組みやすさを生み出す工夫
- 解 説 改めて「拍」と「拍子」を考えてみると?
- 11 モチーフをもとに海の音楽をつくろうA(3)イ
- ヒント 活動を促進,深化させるために
- 解 説 生徒が取り組みやすい作品の記録方法とは?
- [4] 鑑 賞
- 12 多声音楽と和声音楽を聴こうBア
- ヒント 多声音楽と和声音楽をとらえやすくする三つのヒント
- 解 説 根拠をもって批評するための「根拠」とは?
- 13 総合芸術の多様な表現を味わおうBアイ
- ヒント 映像による比較鑑賞
- 解 説 音楽の背景や他の芸術を取り扱うこととは?
- 14 尺八曲の魅力を探り,そのよさや美しさを聴き味わおうBアウ
- ヒント 我が国の音楽の特徴から音楽文化や価値意識をとらえ,その多様性を理解する
- 15 身の回りの音と結び付いた音楽を聴き深めようBアイ
- ヒント 教材選択や提示の工夫
- 解 説 重要な視点です!「音楽の素材としての音」
- CHAPTER 3 中学校第3学年音楽科授業プランの新モデル15
- [1] 歌 唱
- 1 情景や心情にふさわしい歌い方を工夫して歌おうA(1)ア
- ヒント 歌詞と音楽の構造から曲を味わい表現を工夫するために
- 2 イタリア語の特性を生かした独唱表現の工夫をしよう〜揺れるナポリの歌心〜A(1)イ
- ヒント イタリア語の特性を生かす
- 3 曲の特徴を理解し,表現を工夫して歌おうA(1)アウ
- ヒント 日本歌曲・合唱曲の「原点」を見つめる
- 解 説 歌唱共通教材「花」の魅力とは?
- 4 歌詞に込められた思いを表現しようA(1)アイ
- ヒント 作詞者と作曲者の意図をとらえるワークシートの工夫
- 解 説 歌唱共通教材「早春賦」の魅力とは?
- 5 謡に親しもうA(1)イ
- ヒント ワークシートの工夫,視聴覚教材の活用,地域の実演家との連携
- 解 説 我が国の伝統的な言葉と音楽との関係を学ぶ工夫とは?
- [2] 器 楽
- 6 曲の特徴を理解し,表現を工夫して演奏しようA(2)アウ
- ヒント キーボードアンサンブル
- 7 三味線の面白さに迫ろうA(2)イ
- ヒント 知覚と感受,技能の習得が一体となる展開の工夫
- 解 説 三味線の魅力とは?
- 8 グループアンサンブルでアレンジを楽しもうA(2)ウ
- ヒント 要素の働きを実感したり,生かして工夫する方法
- 9 息を合わせて演奏しようA(2)ウ
- ヒント 和楽器を扱う場合には指導の意図を明確に
- [3] 創 作
- 10 言葉を音楽で表そうA(3)ア
- ヒント 言葉を旋律で表すために
- 11 「二つ」をもとに音楽をつくろうA(3)イ
- ヒント 教材や展開の工夫により創作の授業が変わる
- 解 説 創作活動が取り組みやすい工夫のあれこれ
- [4] 鑑 賞
- 12 情景を想像しながら音楽を聴こうBアイ
- ヒント 教材の活用の工夫
- 13 歌舞伎の音楽に親しもうBアイ
- ヒント 歌舞伎の理解を深め,よさをとらえるヒント
- 14 諸外国の音楽に親しもうBアウ
- ヒント ワークシートの工夫
- 15 間を感じ取って長唄の魅力を味わおうBアイ
- ヒント ワークシートと生徒の発言を活用しよう
- 解 説 「間」や「序破急」のよさを感じ取れるようになるには?
- 解 説 適切な観点別学習状況の評価を行うには?
- 付録 第2学年第3学年 年間指導計画について
- 執筆者一覧
はじめに
中学校新学習指導要領は,周知のとおり,平成20年3月に告示され,平成21年度から3年間の移行措置を経て,平成24年度に全面実施される。
今回の改訂においては,「生きる力」という平成10年告示の学習指導要領の基本理念を継承し,平成19年6月に一部改正された学校教育法によって,小・中・高等学校の教育を通して育成する「学力」の要素を盛り込み,次のように示している。
@ 基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させる。
A 上記@を活用して課題を解決するための必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくむ。
B 主体的に学習に取り組む態度を養う。
つまり,学習指導要領に示されたミニマムな内容を,確実に習得させること。知識や技能の習得だけを学習成果とするのではなく,学習プロセスにおける思考,判断,表現する能力をはぐくむことが必要であること。また,学習活動を支える学習意欲は,基礎的・基本的な知識・技能を習得させることが重要である。そして学習活動においては,これらの三つの要素をスパイラルに身に付けさせることが「生きる力」をはぐくむことになる。
音楽科においては,これまで,体験型の授業が多く,演奏や鑑賞することを体験し,演奏の楽しさや感想を発表することで終わっていた。つまり,「体験あって学習なし」である。
これからの音楽科教育においては,指導のねらいを明確にし,生徒が感性を働かせて感じ取ったことをもとに,思考・判断し表現する一連のプロセスを大切にした学習の充実が求められている。例えば,音楽を形づくっている要素や要素同士の関連を知覚し,それらの働きが生み出す特質や雰囲気を感受する力を身に付けることによって,音や音楽のよさや美しさなどの質的な世界を感じ取ることは,一連のプロセスを大切にした指導につながる。
本書では,各題材において,学習指導要領の指導事項とともに,生徒が学習するキーワードを冒頭に示した。そして,[3]題材の特徴(1)学習内容では,キーワードをどのように学習するかを記述し,(2)指導の工夫では,思考・判断・表現するための学習活動の全体像を記述している。
また,評価規準の観点については,平成24年度からの新学習指導要領の全面実施に伴い,新しい学習評価が始まることから,本書では,新しい評価の観点を示している。
本書が,感性の育成に重点をおき,授業を魅力的に変えるための役割を果たし,現職の先生や中学校教員を志す学生の皆様の指導書として,これからの指導方法や教材開発に役立ち,音楽科教育の発展に寄与できることを願っている。
最後に,本書の執筆にご協力いただいた,授業を魅力的に変えるために実践されている先生方にお礼申し上げるとともに,明治図書の木村悠氏に感謝申し上げたい。
平成22年10月 編著者 /原田 徹 /酒井 美恵子
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- 明治図書