- はじめに
- 本書の使い方
- CHAPTER 1 新しい音楽科教育の授業実践に向けて
- [1] 中学校音楽科の課題と学習指導要領改訂の趣旨
- 1 ゆとりカリキュラムの課題
- 2 中学校音楽科の課題
- 3 学習指導要領改訂の趣旨
- 4 中学校新学習指導要領「音楽」の特色
- [2] 音楽の授業を魅力的に変えよう
- 1 学習指導要領の内容と音楽科で求められている学力を理解する
- 2 生徒の発達段階を理解する
- 3 生徒の実態を適切に把握する
- 4 多様な題材を扱う
- CHAPTER 2 中学校第1学年音楽科授業プランの新モデル24
- [1] 歌 唱
- 1 校歌を大切に歌おうA(1)ア
- ヒント ワークシートの工夫
- 解説 道徳との関連の図り方は?
- 2 長唄を歌おうA(1)イ
- ヒント 教材選択,歌詞の音読,ワークシートの工夫
- 解説 変声期の生徒への配慮は,具体的にどのように行えばよいのか?
- 3 声部の役割を意識した合唱表現を工夫しよう〜13歳のパートワーク〜A(1)ウ
- ヒント すべての道を「目標」に向けて指導案をつくる
- 解説 合唱コンクールと授業とのかかわりは?
- 4 階名唱に挑戦しよう 〜音名と階名って何?!〜A(1)ア
- ヒント 調号のきまりを探し出す活動
- 解説 器楽での読譜と移動ド唱法の関係はどのように考えればよいか?
- 5 「赤とんぼ」を歌い継ごうA(1)ア
- ヒント J-POPと日本の歌の比較
- 解説 歌唱共通教材「赤とんぼ」の魅力とは?
- 6 「花の街」の思いを工夫して表現しようA(1)ア
- ヒント 学習カードの工夫
- 解説 歌唱共通教材「花の街」の魅力とは?
- 7 郷土に伝わる民謡を歌おうA(1)イ
- ヒント わらべうた,郷土の音楽の教材化
- 解説 我が国の伝統的な声の特徴を感じ取れる1年生向けの歌唱教材とは?
- [2] 器 楽
- 8 アドバイスを生かして表現しようA(2)アウ
- ヒント 教材や学習形態の工夫
- 解説 〔共通事項〕の用語や記号を音楽活動を通して理解するとは?
- 9 リコーダーの音色や曲の雰囲気を生かしてアンサンブルを楽しもうA(2)イ
- ヒント 教材や学習形態の工夫
- 解説 〔共通事項〕の用語や記号を音楽活動を通して理解するとは?
- 10 声部の役割を感じながらアンサンブルしようA(2)ウ
- ヒント 声部の役割を感じ取り演奏を工夫するには
- 解説 表現方法や表現形態を選択する具体的な取組みは?
- 11 コミュニケーションを活用した授業をしようA(2)アウ
- ヒント コミュニケーションの活用場面の設定
- 解説 コミュニケーションを図る指導のねらいは?
- 12 日本の音色「筝」を奏でようA(2)イ
- ヒント 興味をひき,意欲が高まる工夫
- 解説 伝統的な歌唱や和楽器における姿勢や身体の使い方とは?
- 13 和太鼓に親しもうA(2)イウ
- ヒント 扱う教材の工夫と活用
- 解説 我が国の伝統音楽における和楽器のよさを味わえる工夫とは?
- [3] 創 作
- 14 作曲に挑戦しよう 〜音楽の構成を生かして〜A(3)ア
- ヒント 「音楽の構成」を生かした創作の工夫
- 解説 生徒に伝えたい音楽の知的財産権の知識と意識
- 15 和太鼓で郷土を表現しよう〜グループアンサンブルを通して〜A(3)イ
- ヒント リズムカードやワークシートの工夫
- 解説 単なる即興ではない音を音楽に構成する体験とは?
- 16 「平調子」の音階を使って曲をつくろうA(3)ア
- ヒント ワークシートの工夫
- 解説 生徒が創作に生かしやすい音階は?
- 17 リコーダーで「名脇役」の旋律をつくろうA(2)ア(3)ア
- ヒント 使用するコンピュータの機能を限定し実際の音とかかわらせる
- 解説 歌唱,器楽,創作,鑑賞が特定の活動に偏らないためには?
- [4] 鑑 賞
- 18 筝の魅力を見付けようBア
- ヒント ワークシートの工夫,ゲストティーチャーとの効果的な連携
- 解説 重要なキーワード「知覚」と「感受」の考え方とは?
- 19 能の世界を味わおうBアイ
- ヒント能に親しませる工夫
- 20 我が国とアジア諸地域の雅楽を味わおう〜楽器の音色や響き〜Bアウ
- ヒント 効果的に知覚・感受を深める「比較聴取」
- 解説 アジア地域の諸民族の音楽は,鑑賞でどのように取り上げると効果的なのか?
- 21 私のイメージを広げようBアイ
- ヒント音楽の要素を楽しく知覚し感受させるワークシートの工夫
- 22 暮らしの中の音や音楽とのかかわりに気付こう〜「四季」の鑑賞からイメージ〜Bア
- ヒント 意図的に音楽用語で発表させる
- 23 詩のイメージを感じ取って聴こうBア
- ヒント教材の活用とねらいの焦点化
- 24 「越天楽」の特徴と歴史的背景を探ろうBアイ
- ヒント 雅楽に親しませる工夫
- 解説 新たなキーワード「テクスチュア」のとらえ方や指導の仕方は?
- 解説 評価規準と評価基準の違いは?
- 付録 第1学年 年間指導計画について
- 執筆者一覧
はじめに
中学校新学習指導要領は,周知のとおり,平成20年3月に告示され,平成21年度から3年間の移行措置を経て,平成24年度に全面実施される。
今回の改訂においては,「生きる力」という平成10年告示の学習指導要領の基本理念を継承し,平成19年6月に一部改正された学校教育法によって,小・中・高等学校の教育を通して育成する「学力」の要素を盛り込み,次のように示している。
@ 基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させる。
A 上記@を活用して課題を解決するための必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくむ。
B 主体的に学習に取り組む態度を養う。
つまり,学習指導要領に示されたミニマムな内容を,確実に習得させること。知識や技能の習得だけを学習成果とするのではなく,学習プロセスにおける思考,判断,表現する能力をはぐくむことが必要であること。また,学習活動を支える学習意欲は,基礎的・基本的な知識・技能を習得させることが重要である。そして学習活動においては,これらの三つの要素をスパイラルに身に付けさせることが「生きる力」をはぐくむことになる。
音楽科においては,これまで,体験型の授業が多く,演奏や鑑賞することを体験し,演奏の楽しさや感想を発表することで終わっていた。つまり,「体験あって学習なし」である。
これからの音楽科教育においては,指導のねらいを明確にし,生徒が感性を働かせて感じ取ったことをもとに,思考・判断し表現する一連のプロセスを大切にした学習の充実が求められている。例えば,音楽を形づくっている要素や要素同士の関連を知覚し,それらの働きが生み出す特質や雰囲気を感受する力を身に付けることによって,音や音楽のよさや美しさなどの質的な世界を感じ取ることは,一連のプロセスを大切にした指導につながる。
本書では,各題材において,学習指導要領の指導事項とともに,生徒が学習するキーワードを冒頭に示した。そして,[3]題材の特徴(1)学習内容では,キーワードをどのように学習するかを記述し,(2)指導の工夫では,思考・判断・表現するための学習活動の全体像を記述している。
また,評価規準の観点については,平成24年度からの新学習指導要領の全面実施に伴い,新しい学習評価が始まることから,本書では,新しい評価の観点を示している。
本書が,感性の育成に重点をおき,授業を魅力的に変えるための役割を果たし,現職の先生や中学校教員を志す学生の皆様の指導書として,これからの指導方法や教材開発に役立ち,音楽科教育の発展に寄与できることを願っている。
最後に,本書の執筆にご協力いただいた,授業を魅力的に変えるために実践されている先生方にお礼申し上げるとともに,明治図書の木村悠氏に感謝申し上げたい。
平成22年10月 編著者 /原田 徹 /酒井 美恵子
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- 明治図書