- まえがき
- 第1章 伝え合う内容重視の英語活動とは
- 1 笠原型コンテント・ベイスト(content-based)による授業
- 2 年間指導計画の作成
- 3 ねらいの設定
- 4 1単位時間の指導過程
- 第2章 小学校英語活動を支えるE活動
- [1] 英語でHi! みんな友だち 「Hi! I’m Yuji. Nice to meet you.」
- [2] だれにでもあるよね,すき・きらい 「Do you like math?」
- [3] 今日は何年,何月,何日 「When is your birthday?」
- [4] 数えるのって楽しいね! 「How many legs does a spider have?」
- [5] 教えて,君の家族のこと 「Who is this?」
- [6] クイズの達人は誰だ? 「Can you guess?」
- [7] 好きなものは何? 「What color do you want?」
- [8] お願い! それ見せて 「Show me your card.」
- [9] 今日は何して遊ぶ? 「What shall we do today?」
- [10] えっ! これ何? あれ何? 「What’s that?」
- [11] 教えて,きみの得意わざ 「Can you do this?」
- [12] きみの町はどんな町? 「Where do you live?」
- [13] これ,だれの? ぼくのだよ 「Whose is this? It’s mine.」
- 第3章 伝え合う内容重視の小学校英語活動実践例
- 1 つくし学級(特別支援学級)の実践
- 2 第1学年の実践
- 3 第2学年の実践
- 4 第3学年の実践
- 5 第4学年の実践
- 6 第5学年の実践
- 7 第6学年の実践
- 第4章 伝え合う内容重視の小学校英語活動指導細案
- 1 つくし学級(特別支援学級)の指導細案
- [1] 先生,はじめまして(生活単元学習)
- [2] お楽しみ会をしよう(生活単元学習)
- 2 第1学年の指導細案
- [1] かたちであそぼう(算数科)
- [2] どうぶつずかんを作ろう(生活科)
- 3 第2学年の指導細案
- [1] 水に入れると…?(生活科)
- [2] 知ってる? 海の生き物のふしぎ(図画工作科・国語科・生活科)
- 4 第3学年の指導細案
- [1] わたしの好きなおべんとう(社会科・算数科)
- [2] わたしたちのゆめの町(図画工作科)
- 5 第4学年の指導細案
- [1] 夏の図鑑を作ろう(理科)
- [2] あなたのあこがれの職業は?(社会科)
- 6 第5学年の指導細案
- [1] お米で世界を感じよう(社会科・総合的な学習の時間)
- [2] 世界を知ろう(社会科)
- [3] クリスマスデザイナーになろう(図画工作科・算数科)
- 7 第6学年の指導細案
- [1] 何に見える?(図画工作科)
- [2] 食べ物のルーツをさぐれ(社会科)
- [3] どこへ行きたい〈世界編〉(社会科)
まえがき
岐阜県多治見市立笠原小学校は,笠原中学校とともに文部科学省から研究開発学校(英語)の指定を平成15年度からの3年間,さらに更新して平成18年度からの3年間受けた。当時は折しも平成14年10月から,笠原幼稚園・笠原保育園・笠原小学校・笠原中学校で,「笠原校区幼保小中一貫教育推進協議会」を設置し,「英語教育」「心づくり読書」「心づくり道徳」の推進を始めていた時でもあった。英語活動について言えば,小学校・中学校のみならず,幼稚園・保育園にもALT(外国語指導助手)が訪問するという下地がすでにできあがっていた。
そのような時に,文部科学省から指定を受けたのである。そこで,「小中の連接を踏まえた英語教育の在り方」を研究主題とし,それからの6年間,実践に取り組んできた。
本書はそのうちの小学校英語活動の実践についてまとめ,その手法を提案するものである。
笠原の幼保小中で英語を学べば,中学校卒業後には,「一人で英語圏へ海外旅行ができる子どもに育てよう」,これを目標とし,また,キャッチフレーズとしている。そのためには,英語に慣れ親しむことはもちろんであるが,英語を使って積極的にコミュニケーションを図ろうとする意欲を育てることが肝要である。すなわち,「聞く必然」「話す必然」のある英語のコミュニケーション活動を行うことを目指してきた。そのために英語活動の授業では,子どもが興味・関心をもつ内容を題材にするのである。
それを笠原小学校では,算数や理科などの教科で学習した内容に求めた。そのメリットは,
@ すべての子どもにとって,共通の内容(話題)であること
A すべての子どもは,既習事項を基盤にしてコミュニケーション活動がしやすいこと
である。そこで教師側としては,
@ 教科の既習事項の中から,子どもがより興味を示した題材を選ぶ
A 授業構成を,問題解決的な英語活動に仕組む
のである。そのことによって,子どもが題材に興味をもち,英語を使って意欲的にコミュニケーション活動をし,楽しい英語活動を成立させることができるのである。
ここで誤解のないように記すが,笠原小学校の英語活動は,「教科で学習した既習事項をもとにした英語活動」であり,「英語活動で,教科の内容を学習するのではない」ということである。
つまり,「伝え合う内容を重視し,他教科での学習内容を題材とする英語活動」を開発,推進してきた。これを「笠原型コンテント・ベイストの手法」と名付けている。
また,小学校英語活動をより効果的に実践するためには,英語活動のみならず,英語環境の設定が大切である。笠原小学校では,英語活動(E学習)だけでなく,英語の日常化として,全校で取り組む朝の英語活動(E活動),外国の人との交流活動(E体験),そして昼の放送や集会に英語を使ったり,教室や校内掲示を英語で表示したりする環境(E環境)を整えてきた。さらに,小学校では英語の免許を持っていない教師も多い。そこで教師の英語に関する資質向上を図る研修(E研修)も進めてきた。そのため笠原小学校では,英語の免許の有無や教師の年齢に関係なく,どの学年・学級でも学級担任により,または学級担任とALTとで日常的に英語活動が実施されている。
前記したように,文部科学省の研究開発学校の指定を受けたため,英語活動(E学習)の年間授業時数は,1学年と2学年が35時間,3学年から6学年は70時間で実践してきた。本書では,そうした実践の中から,第2章でE活動の実践例を,第3章で英語活動の実践例を,第4章で英語活動の指導細案を示す。
ところで,笠原小学校の英語活動を参観された方の大半は,子どもの姿に驚かれる。子どもたちがとても生き生きしているのである。また,英語活動はオールイングリッシュで進むことも珍しくない。それでも子どもたちは,英語活動が他教科での既習事項をもとにした学習内容であるので,よく理解し,英語で積極的にコミュニケーションを図っていく。
ある時の6年生の英語活動では,子どもたちが世界の国を紹介していた。一人の子どもがイタリアを紹介するのに,「Italy is pizza.」と言った。もちろん,イタリアはピザではない。しかし,「イタリアではピザが有名です」といっているのではないかと想像がつく。つまり英語活動では,恥ずかしがらずに話そうとする意欲を育てること,これが最も大切であろう。
笠原小学校の6年生は修学旅行で奈良市に行き,そこで出会った外国人に積極的に英語を使って話しかける。これも「笠原型コンテント・ベイストの手法」による英語活動の成果ではないかと考えている。
小学校英語活動が,いよいよ本格的に開始される。本書がその一助になれば幸甚である。
2009年4月 岐阜県多治見市教育委員会 教育長 /村瀬 登志夫
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- 明治図書