- まえがき
- 第1章 中学校音楽科の評価設計のポイント
- 1 評価の意義について
- 2 音楽科における評価
- 3 指導計画と評価計画
- 4 音楽科における評価の観点
- 第2章 指導目標と評価のポイント
- 1 音楽科における目標に準拠した評価導入の意義
- 2 評価の機能
- 3 観点の考え方
- 4 観点別学習状況の評価実施上の問題点
- 5 観点別学習状況の評価を総括する方法
- 第3章 評価が生きる授業
- @ 事例 アカペラのアンサンブルに挑戦 〜歌唱表現:「花」のグループ学習〜
- A 事例 民謡に親しむ 歌って奏でる谷茶前 〜体験により深まる多様な音楽性〜
- B 事例 「韓国の民謡 アリランを歌おう」
- C 事例 みんなでつくるイメージ魔王 〜器楽によるイメージ表現活動〜
- D 事例 「私たちのおひな様」
- E 事例 「楽曲にあった表現の工夫をしよう」
- F 事例 リレーでつなぐ即興的表現ローテーション 〜表現する能力を育てる創作活動〜
- G 事例 「アジアの民族音楽に親しもう」
- H 事例 モルダウをもっと深くとらえよう 〜音楽の諸要素と標題とのかかわり〜
- I 事例 「長唄を創ろう」
- J 事例 音と画面のシンクロ イメージシーンづくり 〜音素材を用いたイメージを育てる学習〜
- 第4章 実技テスト・ペーパーテスト,評価の工夫
- 1 評価の場面の設定
- 2 評価者と被評価者
- 3 評価の方法
- 4 評価規準の設定
- 5 各題材における評価基準の設定
- 6 各観点の評価の場面と方法
- 7 定期考査を観点別評価に生かすには
- 8 評価,評定の工夫
まえがき
平成14年度から,現行の学習指導要領が完全実施されることとなり,それにともなって,学校における教育評価も目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)で行われることとなった。
それから今日に至るまで,各学校現場では新しい評価の研究に明け暮れるとともに,その精度を高めることに努めてきた。少しずつではあるが,家庭での理解も定着しているかに思える。
しかし,これまで中学校現場では,高校受験のための評定の問題があり,研究を進めるにしても評価規準・基準の設定や,それらを評定にどのようにしてつなげるかなどに議論が集中し,何のための評価なのかということが置き去りにされていた感がある。
教育評価は,あくまで生徒の学力の保障を目指すとともに,教師側の教育活動を見直し,生徒の学習活動に見通しを与えるものでなければならない。
もとより,教育は生徒の人格のを目的とし,未来社会にたくましく「生きる力」を身に付けさせるために行われる営みである。その根底には,生徒の幸せを祈るという思いが込められていなければならない。
そこで,本書では日常の授業実践を通して,生徒にどのような資質や能力を育てたいのか,そのためにはどのような目標を設定すればよいのか,そしてどのように評価して教育活動の質を高めていくのかを,具体的に示している。
本書は,既刊の,
・「中学校学習指導要領の展開」(音楽科編)
新しい時代の学力づくり授業づくり
・新しい題材・指導法・学び方で創る 資質・能力を育てる
中学校音楽科編
の内容やポリシーを十分に意識して作成されている。
本書は,生徒のための評価活動が,評価のための評価にならないように,そして先生方が日常の授業に具体的に生かせるようにという観点に立ち,歌唱・器楽・創作・鑑賞・和楽器・音素材の各事例が取り上げられている。また,授業と評価の展開例は,次のような構成で明確に示されている。
@ この授業で育てたい資質・能力
A 指導目標と評価のポイント
B 指導計画
C 評価計画(評価規準)
D 観点別評価規準と具体的評価基準
E 指導と評価の展開
※ 表は,平成5年度の文部省から出された中学校音楽科指導資料,学習指導と評価の改善に準じたものとした。
本書は,激変期にある教育現場の要請を踏まえ,学習指導に示された目標にそった事例をバランスよく選定し,どこの学校でも,どの教師でも実態に応じた指導と評価活動ができるように分かりやすく書かれた現場主義の本である。
またこの先,学習指導要領が改訂になろうとも,音楽科教育の指導と評価の本質を記してあるので,時代が変わっても応用することができる。
本書の作成に当たっては,日常からあくまで生徒に目を向けた授業実践に,日常からたゆまぬ努力と工夫を重ねておられる先生方に,その研究成果を執筆していただいた。終始熱心にご協力くださった先生方に心から感謝を申し上げたい。また本書が,現場で生徒のためにがんばっておられる先生方の授業の実践や工夫・改善の指針となり,激変期にある音楽科教育の発展にいささかなりとも寄与することができるように,心から願っている。
2005年9月 /彌政 きょう介
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- 明治図書