- はじめに
- 本書の意図と構成
- 第1章 日本の伝統音楽にチャレンジしよう
- 〜おと・からだ・ことばのリンクをめざして
- 1 伝統音楽/伝統文化って何?
- 〜授業プラン設計のための教師のつぶやき
- 2 伝統音楽をどうやって授業する?
- 〜実践のための3つのキーワードと5つの柱
- 3 越境する音楽文化
- 〜日本からアジア,そして世界へ
- 第2章 「伝統音楽」で音楽の世界がもっと広がる授業プラン17
- その1 わらべうたあそびで授業びらき
- 〜からだまるごとで日本を感じよう!<1〜2年>
- プラン@ 足じゃんけん「チョッパー」〜新しい友だちと仲良くなろう
- プランA 友だちあてっこ「もぐらどん」〜子ども同士の関わりを増やそう
- その2 ことばあそびで仲間づくり
- 〜子どもは即興の天才! コミュニケーションの魅力<1〜2年>
- プランB ことばあそび「いちじくにんじん」「おいしい おいしい」〜日本語のリズムを楽しもう
- プランC つくりうた「ねえねえ聴いてよ いいはなし」〜自分の気持ちを友だちに伝えよう
- その3 江戸囃子でアンサンブルに挑戦
- 〜唱歌で楽しむ地域の音楽<2〜4年>
- プランD 江戸囃子で唱歌のアンサンブル「天テレツクツク…」〜和楽器の音の重なりを体感しよう
- プランE 江戸囃子・神楽の生演奏にのって獅子舞に挑戦!〜ホンモノに触れて自分の地域を好きになろう
- その4 和太鼓から発展したダイナミックな音楽物語
- 〜総合と伝統文化がタイアップ<3年>
- プランF 地域の文化に触れる「大江戸発見ウォーキング」〜総合「地域学習」と「伝統文化」を結び付けよう
- プランG オリジナル音楽物語「宇宙船地球号」〜それぞれの発想を生かしてつなごう
- その5 箏(こと)の魅力を味わおう
- 〜聴いて あそんで つくってみよう<4〜6年>
- プランH 箏(こと)の多彩な音色と唱歌を味わおう〜歌唱・器楽・鑑賞のリンクで
- プランI 箏(こと)で弾き語りを楽しもう〜「さくら」から音あそび&音楽づくりへ
- その6 雅楽をもっと楽しもう
- 〜鑑賞とワークショップで体感する日本の音<5〜6年>
- プランJ 雅楽の楽器の魅力に浸る〜雅楽の演奏家に学ぼう
- プランK 聴いて真似する「越天楽」〜雅楽のおもしろさを感じよう
- その7 保護者も専門家も巻き込んでつくった子ども歌舞伎
- 〜「伝統音楽」で小学校の思い出づくり<6年>
- プランL 130人の協働による歌舞伎「毛抜」〜「伝統音楽」の総仕上げで歌舞伎上演にチャレンジ
- その8「日本の楽器」壁新聞作り
- 〜「知る楽しみ」が味わえる調べ学習<5〜6年>
- プランM 壁新聞「私の好きな日本の楽器」〜日本の楽器の魅力を友だちに紹介しよう
- その9 ゴング文化の神髄 インドネシアのガムラン
- 〜アジアの隣人から「世界の音楽」へ<5〜6年>
- プランN インドネシアの音楽 ジャワ・ガムランに親しむ〜アジアの音楽文化を鑑賞しよう
- プランO 「鉄琴まねっこジャワ・ガムラン」に挑戦〜ガムランの音のコミュニケーションを楽しもう
- その10 満員御礼! お箏(こと)に太鼓に篠笛が大活躍
- 〜表現の場を校内に広げよう<全学年>
- プランP お昼のミニコンサート〜表現することを楽しもう・生演奏を聴いて新しいことを発見しよう
- 付 録
- 日本の伝統音楽の主な種類と楽器
- 授業に役立つ参考資料〜日本の伝統音楽を知ろう
- 用語解説&索引
- おわりに
- 授業で使える基礎知識
- 箏(こと)
- 日本の音組織&音階
- (発展)「日本の音階」で音楽づくり
- 楽器分類
- ガムラン
- Column
- @くらしの中の子どもの歌「わらべうた」〜「唱歌」〜「童謡」
- A小学生におススメのわらべうたや民謡
- B日本人は歌が好き!〜「和楽器」は「器楽」だけじゃない!
- C伝統音楽に由来するおもしろい言葉
- D日本の民謡のリズム:「八木節様式」と「追分様式」
- E日本の楽器の数え方〜「箏が1台!?」は恥ずかしい!
- F古今東西,楽器の旅〜そっくりな楽器を発見!
- G日本の楽器の不思議な音〜「ズレ」と「ノイズ」の美学!
はじめに
○ 音楽文化と食文化〜梅干しの嫌いなイマドキの子ども
音楽文化は食文化に似ていると思う。何を「おいしい」と感じるかは民族や文化によって違うし,個人の好みによっても異なる。初めて梅干しを食べた欧米人の多くがすっぱさに閉口するように,西洋的なドレミの音楽を聴いて育ったイマドキの子どもたちが,日本の伝統音楽をいきなり聴いて違和感を覚えたとしても不思議ではない。しかし,子どもの時すっぱいと思った梅干しも苦いと思ったコーヒーも,慣れるとおいしくなる。実は音楽も同じだ。
○ 開かれた耳を〜日本の伝統音楽もおいしい!
大切なのは,心を開くように,耳も身体も開いていくことだと思う。私たち自身,大学ですばらしい先生方に出会い,その導きで日本やアジアの音楽について学び始めてから,それまで正直あまり好きではなかった演歌がテレビから流れても「美空ひばりって,こんなにうまかったのか」と聴き方のツボが解るようになっていった。また,授業で能楽のお囃子の唱歌を習い,その後で能楽堂へ鑑賞に行くと,不思議なことに能管がドレミではなく「オヒャラーイホウホウヒ〜」と聞こえてきて自分でもびっくりした。自分にとって「異文化」だった日本の伝統音楽が,少しずつ「おいしい」ものに変わっていったのだ。
その後,大学を卒業した私たちは,一人は小学校の教師となり,現場で日本の伝統音楽を含む様々な実践を重ねてきた。もう一人は大学院でインドネシアの音楽を学んだ後に高校の音楽教師となり,「世界の音楽めぐり」というテーマで授業を模索してきた。現在は大学の教員養成課程で,小学校の音楽科教育にも携わっている。
この本は,そんな大学の同窓生二人が,自分たちの体験と実践例をもとに,「日本の音楽にもチャレンジしたいけれど,どこから手を着けてよいかわからず困っている」という先生方に少しでも役立てていただければとまとめたものである。実践例に偏りもあるし,日本音楽の専門家でもない私たちゆえに勉強不足で用語の誤り等も多々あるとは思うが,読者の皆様から色々とご教示いただければ幸いである。
/川口 明子・猶原 和子
-
- 明治図書