- プロローグ
- 第1章 生活科の精神と教師の役割
- 第1節 新しい生活科で大切にしたい教師の構え
- 1 願う学習像
- (1) ★啄同時 (そったくどうじ:★はJIS規格外の文字のため省略)
- (2) 学びとる主体と呼びかける主体
- 2 学習材選びと生活科教師の出番
- (1) 「子ども発」の誤解
- (2) 例えば,生き物の飼育の学習で
- (3) 必然なき型は醜い
- (4) 教師による素材の掘り起こし
- (5) 素材に秘められている可能性に自覚的であれ
- 3 授業における「攻め」と「受け」
- (1) 「見取り」と「発問」
- (2) 「メダカの学校」の勘違い
- 4 生活科教師の役割
- (1) 「黒子」としての生活科教師
- (2) 本来「黒子」は
- (3) 脚本以上の映画はできない
- (4) 「主役」としての生活科教師
- (5) 子ども主役の舞台裏
- 第2節 生活科の精神
- 1 生活科の「不易」と「流行」
- (1) 意欲と思いやり
- (2) 「気付き」と生活科
- (3) 言葉と体験
- (4) 現代的課題への対応
- 2 戦後教育史における生活科の位置づけ
- (1) 生活科と低学年社会科
- (2) 社会科の変遷と生活科の誕生
- 3 「教えること」と「学ぶこと」の止揚
- (1) 「教えること」と「学ぶこと」
- (2) 東井義雄の「教科の論理」と「生活の論理」
- (3) 斎藤喜博の「可能性を引き出す」
- 第3節 新しい生活科で大切にしたい視座
- 1 生活科の精神と「活用」
- 2 生活科カリキュラムの構築
- (1) 新たな問いが生まれ,気付きが深まる
- (2) 対象への見方が深くなる
- (3) 獲得した視点を活かす場ができる
- 3 単元の創造
- (1) ねらいと学習材
- (2) 小刻みな問題解決の連続
- (3) 単元の「終わり方」を再考する
- 4 一単位時間の展開
- (1) 「出席」と「参加」は違う
- (2) 導入は?
- (3) 発問は?
- (4) 比較を促す学習形態の工夫
- (5) 偶然の演出を
- 5 授業と授業の間の活用
- (1) 自分のハテナが具体的になる健康観察
- (2) ハテナを解決する健康観察
- (3) 自分のハテナを増やす健康観察
- 第4節 自分自身への気付き
- 1 自分への気付きを意識させる
- (1) 自分の成長に気付く喜び
- (2) 平成20年度版学習指導要領では
- 2 自分自身への気付きを促すために
- (1) 単元の終末段階で
- (2) 一単位時間の授業の中で
- 第2章 新しい生活科学習の姿
- 第1節 働く人への気付きを大切にした実践例
- 〜単元 「きゅうしょくしつをしらべよう」(第1学年)〜
- 1 本単元の背景と子どもの事実
- 2 授業づくりの視点
- 3 単元の目標
- 4 単元の計画
- 5 活動の実際
- 6 考察
- 第2節 科学的な見方や考え方の育成に視点をあてた実践例
- 〜単元 「走れ!ビー玉くん」(第2学年)〜
- 第3節 公共物や公共施設の利用を通して安全の仕組みに着目させる実践例
- 〜単元 「しんかんせんを見に行こう」(第1学年)〜
- 第4節 比べる活動を中核とした実践例
- 〜単元 「ほしがきを作ろう」(第1学年)〜
- 第5節 単元間のストーリーを大切にした実践例
- 〜大単元 「もなかのおやつを作ろう」(第2学年)〜
- エピローグ
プロローグ
仲間と力を合わせながら,ホースや雨樋,空き箱などを組み合わせて長く転がるビー玉の道作りに燃えた二年生の子ども達。約一ヶ月もの間,特別教室を借り切って作ったビー玉の道は,子ども達どうしのぶつかり合いから生まれた知恵の結晶です。
いよいよ発表会の日がやってきました。ビー玉が無事ゴールまで転がるか,自分のチーム,友達のチームに関係なく,ビー玉が転がる様を祈るように見守る子ども達の姿に私は心打たれました。発表会は大成功でした。
後は片付けです。ここで子ども達は私の予想外のことを言い出しました。「片付けるのはイヤだ!」と駄々をこねるのです。本当に涙目になっている子さえいます。日頃「聞き分けがいい」子ども達が駄々をこねている姿に当惑しつつも,これほどまでにビー玉の道が子ども達の心を占めていることに今更のように気付きました。
生活科の教室でのこのような子ども達の言葉や表情に出合うたびに,私はこの教科の魅力と可能性を感じます。ただ残念なことに,その魅力がまだ十分に知れ渡っていない空気も同時に感じます。「生活科は,やっても力がつかない」という言葉で簡単に片づけられてしまう,あの空気です。
「生活科はきちんとやれば力がつく」ということ,そのために教師は何を大切にすべきか,ということをまだまだ論理的に未熟な部分がありますが,皆様とともに考えてみたいという一念から本書を執筆しました。
本書は,生活科の教室を更に魅力のあるものにするために,教師が「呼びかける主体」であるべきだ,ということを提案したものでありますが,私の不備や未熟について御指摘・御批判をいただけるなら,どんなにありがたいことでしょう。忌憚のない御意見をお願い申し上げます。
なお,本文中の子どもの名前は全て仮名です。
2009年1月 /内藤 博愛
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- 明治図書
- 給食室探検の導入をそのまま使いました。子どもたちの興味をうまく引き出せたように思いました。2018/7/150代・小学校教員