体育授業づくりへの挑戦1やる気と力を育てる体育の授業

投票受付中

いま,体育で何が求められているのか/輝く子供たち/楽しく取り組む体操の授業/鉄棒の力をつける実践を目指して/だれもが「できた」喜び。


復刊時予価: 2,497円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-724805-6
ジャンル:
保健・体育
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 152頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

刊行にあたって
はじめに
T いま,体育で何が求められているのか
/西 順一
1 子供を取り巻く生活環境
2 「楽しい体育」の現状を見直す
(1) 「運動の楽しさ」について/ (2) 「体力の向上」について/ (3) 「めあて学習 」(子供主体の授業)について
3 やる気と力を育てる体育
(1) やる気と力を育てる教育とは/ (2) やる気と力を育てるための方策
U 輝く子供たち(3〜6年)
/倉田 孝明
1 スポーツテストの結果を見ての驚き
2 朝の運動を開始するにあたって
(1) 開始するにあたって/ (2) 朝練の内容と実態/ (3) 朝練の変遷
3 輝きだした子供たち-----だれもが驚いた菱田君の変容
(1) 実践後のスポーツテストの結果/ (2) 肥満児童がこう変わった/ (3) 続けることの大切さ/ (4) 目覚めた子供たちの強さ
4 やり抜くことの大切さ!(7年間の実践を通して)
(1) その後の朝練/ (2) 実践で学んだこと/ (3) 菱田君の卒業後の感想
V 楽しく取り組む体操の授業(高学年)
〜柔軟性を高めるための工夫〜 /高橋 孝夫
はじめに
1 柔軟性の実態と指導上の問題点
(1) 児童の柔軟性の実態/ (2) 柔軟性を指導する上での問題点
2 柔軟性を高めるための指導(帯状の時間配分で)
3 なわを使った体操(柔軟性を中心に)
おわりに
W 鉄棒の力をつける実践を目指して(低・中学年)
/関山 英二
1 逆上がりのための基礎運動を探る
(1) はじめに/ (2) 研究の意図/ (3) 研究の方法/ (4) 結果と考察
2 基礎運動を取り入れた固定施設遊び
(1) 固定施設を使った遊びの重要性/ (2) 指導にあたって/ (3) 実践例(対象 低・中学年)
3 実践の結果と考察
X だれもが「できた」喜びを味わえる跳び箱運動(中学年)
/林田 弘之
1 なぜ,跳び箱運動に基礎感覚づくりが必要なのか
2 楽しく競争しながら力をつける馬跳びあそび
(1) ねらい馬跳び(実践例3年)/ (2) 100回馬跳び競争(実践例3年)
3 だれもが意欲的に取り組む場づくり(実践例3年)
(1) 跳び箱あそびの展開計画/ (2) 意欲的に活動する「ジャンプサーキット」/ (3) かっこいい開脚跳びに挑戦/ (4) 馬跳びができない子供への配慮
4 自分の活動のふりかえりを生かす評価活動
おわりに
Y 完走の喜びを味わう持久走
〜走の運動(第1学年)の実践から〜 /八嶋 純子
1 子供の実態
2 楽しく走る工夫
(1) ロープのコースを走る/ (2) ジャンケンマン登場/ (3) めあての持ち方/ (4) カセットテープレコーダーの使用
3 授業の実践
4 考察
Z ゲーム感覚で学べる走り幅跳びの基礎・基本(高学年)
/芦川 隆
はじめに
1 走り幅跳びとは
2 走り幅跳びの事前研究
(1) 「ねらい幅跳び」の実践から
3 「輪ねらい幅跳び」の考察と実践
(1) 「輪ねらい幅跳び」の意図・特徴/ (2) 「輪ねらい幅跳び」の実践/ (3) 実践の結果と考察/ (4) 実践後の問題点
おわりに
[ だれもか楽しめるドッジボール
/朝倉 努
1 男女差はあるのだろうか〜ドッジボール運動における触球数の比較〜
(1) ドッジポール触球数の調査方法/ (2) 調査結果
2 運動能力はどうちがうだろうか
(1) 投力はどうだろう/ (2) キャッチする技能はどうだろう/ (3) 運動能力の結果はどうだろう
3 どんなコートを喜ぶだろう
(1) コートの形によるドッジボール触球数/ (2) ポールに触れた回数ほどうだろう/ (3) 結果はどうだろう
4 レベルアップのために
5 力を高めるドッジボール〜得点制で興味をさらにアップ〜
(1) 等質グループによるミニドッジポール(低・中学年)/ (2) 興味のでるドッジボール(低・中学年)/ (3) サーピスエリアで興味アップ(中学年)--投力の低い子を救う--/ (4) 考察
6 まとめ
\ だれもが活躍できるポール運動
/長村 功之
1 すべての子供が体育(ポール運動)が好きなわけではない
2 集団スポーツ(ボール運動)では一人一人に楽しさや喜び,満足感を与えてやるのが難しい
3 全員がポール運動を楽しんでいるように見えるのは教師の錯覚である
4 だれもが活躍できるボール運動の実践例
(1) ローテーションドッジポール(2年生)/ (2) ローテーションラインサッカー(3年生)
] 共通体験に基づく表現運動(中学年)
/津浦 景子
はじめに〜表現運動の問題点〜
(1) 表現運動は実践されているか
1 表現運動の授業をやってみよう
(1) 楽しくできる題材選び/ (2) 導入の工夫/ (3) 上手に動くポイント
2 実践例「チョウになって飛ぼう」〜理科・「チョウの一生」から(3年生)〜
(1) 授業をするにあたって/ (2) 単元指導計画/ (3) 本時の授業/ (4) 授業後の自己評価カードから見た児童の反応
3 実践の結果と考察
(1) 実践の結果〜自己評価カードから〜/ (2) 考察
おわりに
XI 表現運動で育てたい心と力
〜6年生の実践から〜 /綱川 雅子
はじめに
1 「表現運動で育てたい心と力」とは
2 「表現運動が好き」と言う子供に育てる工夫
(1) 表現運動を好きにする3つのポイント/ (2) 楽しさを味わわせる題材構成
3 実践例「洗濯しよう!」の授業から〜身近なところに題材を取って〜
4 成果と今後の課題
おわりに

はじめに

○ 体育方法研究会(通称「金曜会」)の歩み

 私どもの研究会は,小学校体育の教材及び指導法に関する実証的研究を目的として,昭和51年に発足した。以来,20年間,毎月1回(金曜日)の研究会を定期的に継続してきた。会員はここ数年約30名で,定例研究会の参加者は常時15名前後である。研究会の活動は,教材研究,指導法の研究,実技研修など,常に現場の問題に密着したテーマを中心に,個人発表または運動種目別の実技研修という形で行われてきた。

 本研究会が発足以来行ってきた主な活動は,次の2点である。

 1点目は,「楽しく充実した体育授業」を目指す教材研究である。その成果は『小学校 運動教材550とその扱い方』(学校体育誌,昭和55年5月号別冊)として出版された。その後も研究会独自で新たな研究成果を盛り込んだ改訂版を自費出版し,現在では,第8版『小学校 楽しい体育の教材研究−ひとりひとりの意欲的学習を目指して−』と版を重ねてきている。

 2点目は,夏期体育実技研修会の開催である。この研修会は,栃木県内の小学校の教師を対象に,日頃の研究成果を本会会員が指導者となって研修するもので,昭和63年8月に宇都宮大学附属小学校を会場に,第1回研修会を開催して以来,今年で10年目を迎える。

 この他,これまで2回にわたって栃木県教育研究奨励事業のグループ研究部門に応募し,『各種運動における基礎・基本とその指導法』(昭和61年度)と『意欲・技能・体力を重視した体育の授業づくり』(平成6年度)の二つの実践研究報告書をまとめている。

 本書に収録された実践は,個人の自由研究が主体となっているが,多かれ少なかれ,これまでの研究会の歩みを反映したものとなっている。その考え方を集約したものが本書のタイトルである。

○ なぜ,「やる気と力を育てる体育」を重視するのか

 今日の急激な社会変化に伴う子供の「心身の歪み」や「体力」の低下が,今や大きな社会問題となりつつある。

 折しも,学校週五日制を前提とする次期学習指導要領の基本方向をまとめた中央教育審議会は,その答申の中で今後の教育の基本方向を示すキーワードとして「生きる力」を提起した。「生きる力」は,3本の柱から成っており,その一つが「たくましく生きるための健康や体力」である。また,教材の厳選を進める次期学習指導要領の内容が論議される中で,改めて体育の存在価値が問われようとしている。

 このような状況にもかかわらず,現実の体育授業の中には,「運動の楽しさ」を重視するあまりに「体力の向上」を軽視し,「個に応じた教育」を重視するあまりに「基礎・基本技能」を軽視し,さらに「自主的学習」を重視するあまりに教師の「指導」は少ない程よい,といった誤解さえも見受けられる。

 これら両者の関係は,本来,対立的に捉えるべきものではなく,両者を如何に関連づけるかが,これからの体育に求められている課題と考える。

 私たちの体育実践は,流行に捉われることなく,目の前の子供たちの現状からスタートし,今の子供に欠けている体力づくり,基礎・基本技能の習得,誰もが楽しめる教材づくりや場づくりの工夫等によって,子供一人一人が運動を「楽しみ」「やる気」をもって活発に学習活動に取り組む授業づくりを目指してきた。

 本書に収録された各実践は,何回もの追試を経てその有効性が実証済みというものばかりでなく,また,授業者自身が十分に納得のいく実践ばかりとは言い難いが,読者に少しでも参考になることを願っている。

 最後に,このような機会を与えて下さった明治図書に謝意を表したい。


  1997年9月   /西 順一

    • この商品は皆様からのご感想・ご意見を募集中です

      明治図書

ページトップへ