- はしがき
- 問題編
- Q1 地球規模の問題 ―GLOBAL ISSUES―
- Puzzle1.クロサイのサイナン
- Puzzle2.ラッコをダッコ
- Puzzle3.コスタリカの山火事
- Puzzle4.オーストラリア人は日焼けがきらい
- Puzzle5.地球温暖化
- Puzzle6.買い物に来ておどろいた
- Puzzle7.モンゴルの試み
- Puzzle8.煙が目にしみる
- Puzzle9.酸性雨
- Puzzle10.森林が消えていく
- Q2 日本のこと(文化) ―外国人にはどう映る?―
- Puzzle11.ホワイトデーを知らないの!?
- Puzzle12.サイズ違いで「まずい」ことに
- Puzzle13.日本のお風呂は気に入りませんか?
- Puzzle14.「よろしく」はよろしくないの!?
- Puzzle15.さぬきうどんの秘密
- Puzzle16.スイス育ちは気むずかしいの?
- Puzzle17.がんばって食べたのに…
- Puzzle18.電話の声は,別人(?)の声
- Puzzle19.「すみません」―どうしていつもあやまるの?
- Puzzle20.ほめたつもりがたいへんなことに…
- Puzzle21.目を見て話そう
- Puzzle22.「おほほ」―笑うとき口を手でかくすのはなぜ?
- Puzzle23.応援団長は男子? 女子?
- Puzzle24.LサイズはMサイズ?
- Puzzle25.日本人って勝手なの?
- Q3 外国のこと(文化)をもっと知ろう
- Puzzle26.ニジェールの女の子はおませなの?
- Puzzle27.モンゴル人はたくさん食べる?
- Puzzle28.モンゴルのかまどの神様
- Puzzle29.好ききらいではないんです
- Puzzle30.4つのお正月??
- Puzzle31.オーストラリアへのおみやげで困った
- Puzzle32.シンガポールはFine City!
- Puzzle33.インドのあいさつ
- Puzzle34.音楽対決!「カナダ」vs「日本」
- Puzzle35.私,観光ガイドじゃありません
- Puzzle36.ところ変わればマナーも変わる
- Puzzle37.ブータンのお産
- Puzzle38.アンデスの髪の手入れ
- Puzzle39.イヌイットたちの夕食はいつ?
- Puzzle40.スコットランドのキルト
- Q4 クイズで学ぼう ―あなたはどのくらい知ってるかな?―
- Puzzle41.東アジア漢字クイズ(その1)
- Puzzle42.東アジア漢字クイズ(その2)―カタカナのおかげです―
- Puzzle43.お菓子クイズ(洋菓子編)
- Puzzle44.お菓子クイズ(和菓子編)
- Puzzle45.国名・地名:英語で言うとどこかわかる?
- Puzzle46.国名:漢字で書くとどこかわかる?
- 解答・解説編
はしがき
本書の姉妹書である『英語で活動させる国際理解教育パズル60選』(明治図書)は,「英語を楽しんで勉強しながら,同時に,コミュニケーションをするときに文化がどういう働きをするかについて学んでもらう」ことを目的として書きました。さいわい,この『国際理解教育パズル60選』が好評でしたので,今回は小学校高学年の人たちを含むさらに多くの人たちに,国際理解について学んでもらう目的で本書を書きました。
したがって,日本語も少しやさしくし,英語は使用しないことにしました。そして,楽しみながら気軽に勉強してもらえるように,パズル形式にし,ヒントとして迷路などをつけたことは『国際理解教育パズル60選』と同じです。また,国際理解教育の中心的な部分である,「異文化理解」や「グローバル・イシューズ(地球規模の問題)」に関する問題を解いた後,第2部の解説編にある,くわしい説明を読んでもらえるようにしました。小学生には少々難しいこともあると思いますが,そのときは先生方がこの解説をふまえて,それぞれのクラスの実状に合わせて説明をしていただければよいのです。
国際理解のもっとも難しいところは,異文化(=別の文化)の人といっしょに暮らしたり,仕事をしたりするときにどうするかであると言われています。単なる観光旅行で外国へ行くとき,日本へ来た外国人に何かたずねられたとき,あるいは学校や地域での数時間程度の交流のレベルでは,大きな問題が起こることはめったにありません。しかし,異文化の人と仕事をし,本格的なコミュニケーションが必要になると問題が起こってきます。互いに悪意はないのに,文化のちがいや生活条件のちがいのためにスムーズなコミュニケーションができなくなるのです。
たとえば,多くの人がアメリカへ留学します。アメリカの学校では,先生は生徒をとにかくほめます。ほめられた生徒はうれしそうに"Thank you."と言いますが,留学生のなかにはほめられたら謙遜するという文化で育った人もいます。そのような場合には,先生はほめ,生徒は謙遜して"No, no."と言う。またほめる,"No."と言う。やがてどちらも気まずくなるということも起こってきます。お互いが相手の文化を知っていれば,ほめられた方が"Thank you."と言うか,ほめた方は"No."と言われてもニッコリ笑って次へ進むことができ,何も問題は起こらないと思います。
この例は,タイの女学生がアメリカへ英語の勉強に行ったときのことです。つまり,タイの文化とアメリカの文化の間で起こったことです。ですから,ここで私たちはタイの文化やアメリカの文化の一端を学んだことになります。しかし,実際には,どのような文化の人とコミュニケーションの必要性が出てくるかわかりません。とすると,すべての文化について知る必要が出てきそうですが,そのようなことは不可能です。
ですから,先ほどの例のように話している者同士が何かおかしな具合だなと思ったら,「これはきっと何か文化上の行きちがいがあるのだ」と考えて,相手に自分の立場を説明し,相手の立場もたずねるという姿勢が重要になります。そのためには,共通のことばが必要です(本書ではこのことばの問題にはふれません)。
もうひとつ,国際理解でやっかいな問題は,誤解が解けて相手の意図がわかっても,なかなか気持ちの上でしっくりいかないことが多いということです。私がアメリカへホームステイ団を引率して行ったときのことです。帰国の日,約1ヶ月お世話になった家の16歳の娘さんが,空港で私のほほにお別れのキスをしてくれました。彼女にとってキスすることは,私がお別れのあいさつとしてお辞儀をするのと同じことだとわかってはいました。しかし,みんなの前でそうされたとき,「人前であいさつとしてキスをする」という日本文化になじまない行動を受けて,私はとても落ち着かなかったのを今でも思いだします。それほど自分が育った文化の影響は大きいということです。
それだけに,これからを生きる若い人には少しでも早くから異文化間コミュニケーションに慣れ,自分の文化になじみのないような場面におかれたときでも,気持ちの上で余裕をもって誤解を解き,最後にはコミュニケーションを成功させることができる人になっていただきたいと思うのです。そのための第1歩として,自分にとってはふしぎ,場合によっては不愉快と思える異文化の人の行動も,それにはそれなりの合理的な理由があることを知ってほしいのです。また,「グローバル・イシューズ」でも,それぞれの国・地域で,それぞれの困難さのなかでどのようにその解決に取り組んでいるかを知ってもらいたいと思っています。私たちはそういうことを願って本書を書きました。
なお,今回は小学生のみなさんにも読んでもらうということで,表現の面で小学校関係の峰本雅世,樽本十郎,東山善迪,高畑慧の各氏のお世話になりました。
最後に,この本の出版に際しては明治図書編集部の樋口雅子・勝村千賀子氏にたいへんお世話になりました。ここに深く感謝申し上げます。
2001年9月 著者しるす
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- 明治図書