英語授業改革双書32
英語好きにする授業マネージメント30の技

英語授業改革双書32英語好きにする授業マネージメント30の技

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新指導要領で聞く・話すが強調されているが、書くも大事。要はバランスだとする著者が、学習のハングリー状態を生徒にどう起こしていくか授業マネジメントの極意を紹介。


復刊時予価: 2,673円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-715900-2
ジャンル:
外国語・英語
刊行:
18刷
対象:
中学校
仕様:
A5判 176頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

読者のみなさんへ
まえがき
第1章 自ら伸びようとする力を育てる原理―生徒編―
1. 野菜や稲が生き生きとする原理
(1) 「土壌作り」から学ぶ/ (2) 「苗作り,うね作り」から学ぶ/ (3) 「排水」の原理/ (4) 「挿し木」の原理
2. 3人の先生から学んだ,生徒が生き生きとする原理
(1) バスケットボール部を全国大会に!/ (2) 教師のビジョンの確かさが生徒たちを伸ばす!/ (3) 歌声が学校中に響き渡る!/ (4) 3人の指導から何が学べるか
第2章 英語好きにする授業マネージメント
1. 私を変えた,ある出逢い
2. 英語が好きになる原理
3. 英語を好きにするには学習規律が欠かせない
4. 集中力を高めるコツ
(1) 課題をクイズ形式にする/ (2) 時間を設定する
5. 知的にハングリーにする
6. コンテクストを意識させる
7. 思わずしたくなるようにするコツ
(1) 「自己紹介」を変える/ (2) コミュニケーション能力を育てる導入例
第3章 英語を好きにする教師
1. 全ては教師のビジョンで決まる
2. 教師年表を作ってみよう
3. 教科書の素材を創造的に扱う
4. 英語は実技教科だ!
5. 教師のセルフ・エスティームを高める
6. 教材分析の力をつける
7. 教師の話し方,説明の仕方を魅力的に
(1) 教師の語りを変身させる/ (2) 知的にハングリーにする
8. つまずきの指導こそ腕の見せ所
(1) つまずきを楽しむ余裕をもつ/ (2) 音と文字が結びつかない/ (3) 繰り返す習慣をつける/ (4) 単語が書けるようになるしつけ/ (5)ケンの話なんかつまらない
9. 具体的なつまずきへの対処法
(1) リーディングは全ての基本/ (2) 読みのつまずきにどう対処するか/ (3) Sの区別をつけるには
10. どの子も書けるようにする指導
(1) 教師が「書き方」を教えていない/ (2) 書けない生徒の指導をどうするか/ (3) 生徒たちがイメージをもちやすい言い方
第4章 タスク中心のシラバスで英語が好きになる
1. タスク中心の授業で生徒が変わる
2. 学びの磁界を作る
3. タスク化する観点
4. タスクを成功させる条件
5. 書きたくなる課題とは何か
(1) コンピュータでチャットする/ (2) 遊び心のロールプレイ
6. 読み手を意識させるコツ
7. コンテクストを意識させるスキット作り
(1) 発展させられるような仕掛け/ (2) 青写真を描く
8. 3年間を見通したタスク中心のシラバスをつくる
9. シラバスづくりで配慮すること
第5章 テストで英語を好きにする
1. テストは統合型学習
2. テストで自信をつける
(1) 暗記中心のテストをやめる/ (2) 訂正ノートで自信をつける/ (3) テストを楽しませるコツ/ (4) テストをコミュニカティブにする
3. 自己評価能力の規準を高める
(1) 総合問題を作らない/ (2) ひっかけ問題を作らない
4. テストをこう使う
(1) 自分だけの設問づくり/ (2) 思わず書きたくなる問題にする
5. 小テストを変身させる
(1) 書きたくなる小テストに/ (2) 楽しくなる間違いさがし/ (3) 継続は力なり!
6. テスト後の感想にみる「英語が好きになる原理」
7. 生徒がやる気になる時の原理
第6章 生徒を英語好きにする評価とは
1. 音読テスト
2. リスニング・テスト
3. コミュニケーション・カードを使った評価
4. 言語や文化の知識・理解の評価をどうするか
5. 評価を意識したテストをどう作るか
6. 自己評価能力を高める
7. 評価の規準(具体的な評価の下位項目)を決める
第7章 自ら伸びようとする力を育てる原理―教師編―
1. 教師が生き生きとする原理(1) ―校内研修編―
(1) 尾木直樹先生の授業を見て目が点に!/ (2) 野口芳宏先生の授業で目からウロコが!
2. 教師が生き生きとする原理(2) ―歴代校長編―
(1) 「厳しさこそ温かさ」を教えていただいた辻先生/ (2) 実践を理論化することの大切さを教えていただいた溝口先生/ (3) 夢とビジョンをもつことの大切さを教えていただいた河西先生/ (4) ものごとの本質を見極めることを教えていただいた砂田先生
3. 教師が生き生きとする原理(3) ―「学び方を身につける学習」編―
(1) なぜ学び方を身につける学習が必要なのか/ (2) 学び方を身につける学習の波及効果
あとがき

まえがき

 新しい指導要領のキーコンセプトは,「聞く・話す活動の充実」。

 ただ,聞く・話す活動だけに終始していては,力はつかない。

 やはりバランスが大切。

 たくさんの言語を独学でマスターしたシュリーマンも言っているように,やはり音読がすべての学習の基本であるように思う。深い内容の文や秀逸な詩を,覚えてしまうくらいに何度も音読をすると,頭にinputされていき,それが他の3つの技能(聞く,書く,話す)の下地となる。ちょうど,氷山の海の下に隠れている大きな部分を作ると考えればいいだろう。

 また,書くことも思考を整理する。論理的な意見が言えるようになる。目的をもって書くことで読み手を意識できるようになる。これは,コミュニケーションの第一歩だ。

 要は,4つの技能をバラバラに指導するのではなく,それぞれ「聞いたことを話す」「聞いたことを書く」「書いたことを話す」「読んだことを話す」のように活動をリンクし,生徒たちが必要感を感じるactivityにすることだ。

 新学力観が導入された時に,「楽しい授業」が現場で誤解されたような気がする。

 まず,単発のゲームが横行するようになった。ゲームを使うことは喜ばしいことだが,そこに目的がなければ子どもを混乱させるだけである。

 子どもたちの実態を踏まえ,どの場面で取り入れれば効果があがるのかを吟味した上で使うのであれば,インパクトがあるだろう。しかし,残念ながら,ほとんどは忙しさからか,本からコピーしたものが無計画に使われているようだ。

 単に文法を学ぶためのゲームでは,中学生,高校生という知的好奇心が旺盛な子どもたちを満足させることはできない。深まりがないと飽きてしまうからだ。Information gapからopinion gapへ,そしてreasoning gapへと発展していかなければ学びは楽しくはならない。思考を伴う,自分の意見を言うことがゲームの中に生かされれば,活動に必要感が生まれてくる。

 また,授業中,子どもたちがわいわい言いながら活動していれば,内容はともかく,コミュニケーションに積極的でよいと評価された。研究授業でも,ALTとのTTでショーのような授業が盛んに行われた。

 かくして,うわべだけの楽しさを追い求めた結果,学習規律が崩れていった。成績が二極化していった。現場は,ますます混乱していった。音読やディクテーションなどの不易な部分が古い指導法にとらえられて,すっかり影をひそめてしまった。

 見かけの楽しさではなく,もっと学びに「広がりや深まり」がなければ気づきは生まれない。気づきがなければ,本当に「わかった」という気持ちにはならない。楽しくはならない。つまり,知的にハングリーになっていなければ,それは本当の学習意欲ではないということである。

 今回も,「聞く・話す指導の重点化」「実践的コミュニケーション」ということばが一人歩きをして,現場で「英会話」的な指導に目がいきがちになると怖い。

 教育はシステムではなく,人(教師)がなすものである。教師が変わらなければ,英語の授業は楽しくはならない。


 私は,英語を好きにするコツは3つだと考えている。

 まず教師がビジョンをもつこと。次に,教師が遊び心をもつこと。最後に,教師が英語が大好きであるという姿勢を生徒に見せ続けることである。

 さて,本書は大きく分けて次のような構成になる。

 1章では,「自ら伸びようとする力を育てる原理」についてご紹介した。読者のみなさんへのメッセージとお考えいただきたい。

 2章では,生徒が英語を好きになる原理について考察してみた。知的にハングリーにして,思わずしたくなるように仕掛けるコツをご紹介した。

 3章では,教師のビジョンの持ち方と力量の高め方について提案した。やはり,これが「英語好きにする」源であるように思う。

 4章では,必要感のある活動をどうつくるかという観点でいろいろなスキルをご紹介した。先を見通したタスクとシラバス作りが,わかる・楽しい授業づくりへの大きなターニングポイントになる。

 5章では,テストや評価方法を変えれば,英語を好きにすることができるということを提案した。テストを楽しみ,テストで自信をつけるようにするのがコツだ。

 6章では,評価の具体,自己評価能力を高める評価のあり方について述べさせていただいた。評価を意識した問題づくりについて提案した。

 7章では,自ら伸びようとする原理の教師編として,私が影響を受けた方々をご紹介した。どの方も授業を好きにさせてきたプロである。

 全体を通して,なるほど,こうすれば授業を楽しくやれそうだというイメージがもてるように書いたつもりである。もし,この本が,読者のみなさんの生徒たちが英語っていいなと思うきっかけとなれば,こんなにうれしいことはない。


  1999年11月   著者記す

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      明治図書

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