- まえがき
- 1 What is “英語活動”?
- ■「コミュニケーション能力の素地」とは何か
- ■中学校英語と小学校英語,違いは何か
- ■「素地」と「基礎」
- ■「コミュニケーション能力の素地」を定義する
- ■「推測・類推」と「反応」
- ■小学校外国語活動の目標を書き直す
- 2 こんな授業が「コミュニケーション能力の素地」を養う
- ■language-basedの授業とcontent-basedの授業
- ■language-basedの授業の問題点
- ■コミュニケーションの三要素
- ■Making SentencesとMaking Meaning
- ■Making Sentencesの授業
- ■Making Meaningの授業
- ■授業づくり三つのポイント
- 3 実録・英語活動の授業
- ■『英語で漢字』
- ■『世界の国を旅しよう』
- ■『色で遊ぼう』
- 4 評価をどうするか
- ■文部科学省の通知
- ■ふりかえりカード
- ■子どもはこんな感想を書く
- ■教師はこんな感想を書く
- 5 「英語ノート」の○と×
- ■「英語ノート」の○
- ■「英語ノート」の×
- ■「英語ノート」はアレンジして使う
- 6 小中連携は必要か
- ■井戸端会議はやめよ
- ■小中連携を語る条件
- ■funな授業は中学校にとって迷惑?
- ■オープンスペースでの授業は×?
- 7 授業力を鍛える
- ■英語活動を支える教師の力
- ■PPPからPPPへ
- ■授業のための英語
- ■英語力はこう鍛える
- 参考文献
- あとがき
まえがき
平成10年告示の学習指導要領で,「総合的な学習の時間の取扱い」として,次の配慮事項が示された。
国際理解に関する学習の一環としての外国語会話等を行うときは,学校の実態等に応じ,児童が外国語に触れたり,外国の生活や文化などに慣れ親しんだりするなど小学校段階にふさわしい体験的な学習が行われるようにすること。
これ以降,日本全国でさまざまなかたちの「英語活動」が試行されてきた。その呼び名も「英語活動」であったり「英会話活動」であったり「英会話」であったり,まさに「なんでもあり」の状態であった。
平成20年,新学習指導要領が示され,5,6年生での外国語活動が必修化された。目標と内容が明示されたのである。「なんでもあり」の英語活動は終わった。
しかしである。教室の現場は「何でもあり」の状態から抜け出ていない。「学習指導要領,ちゃんと読んだの?」と疑問を抱かざるを得ないような授業がいまだに堂々と行われているからである。
典型的なのは次のような状況である。
ALTに丸投げ
授業の素人であるネイティブスピーカーが,思いつき程度のアイディアで子どもにゲームをさせている。学級担任は見ているだけ。小学校の教室はゲームセンターではない。
次のような状況も出始めた。
民間の英語塾教師に丸投げ
丸投げされた民間の英語塾教師は,自分の教室で行っている「英会話」の授業を小学校の教室でそのまま行っている。英語塾教師がそうするのは当然のことだろう。丸投げしている学校が悪いのである。小学校の教室は,英語塾でもなければ英会話教室でもない。
誤解のないように言っておくが,ALTや英語塾教師の力を借りるなと言っているのではない。むしろ,積極的に活用するべきである。問題なのは,「学習指導要領」すら読んでいない学校教育の素人に授業を丸投げし,学級担任が思考を停止してしまっていることである。
これから主流になるのは次だろう。
「英語ノート」を唯一の教材とした,「英語ノート指導資料」掲載のプランに忠実な授業
しかし,上のような授業を続けていると,おそらくは英語嫌いの子どもが量産されることになる。文科省が「英語ノート」を作ったことは大きな成果ではある。しかし,そこで扱われている活動,そして指導展開には,問題もまた多いからである。
「英語活動」でどのような子どもを育てるのか。
そのために,どのような授業をつくっていけばよいのか。
本書は,上を明らかにするための試みである。
/渋谷 徹
多くのアイデアが導き出せるおすすめの著書3部作である。