- プロローグ
- 第1章 F.F.の魅力
- 第1節 F.F.で自分の目標にタッチダウン
- 1 F.F.を教えることで(教材的価値)
- (1) 戦術学習に適した教材
- (2) ボールを持たないプレーヤーの動き
- (3) ボールゲームの動きが「わかる・できる」
- 2 F.F.で1〜6年生の間に保障する学習内容
- (1) 用具はこれだ
- (2) コートのラインを覚えよう
- (3) ポジションは4つ
- (4) ルールを理解しよう
- (5) 身につけたい個人技術
- 3 F.F.のルールはこれだ
- (1) 楽しそう,でも?
- (2) みんなでルールをつくる
- (3) 3〜6年生のルールの実際
- 第2節 F.F.で身につく技能
- 1 ライスボールを投げてみよう
- (1) まず,ライスボールと対話してみよう
- (2) 確かな投捕球をするために!
- (3) 投捕球の数値目標
- (4) より実戦に近い動きづくり
- 2 4色フラッグ取りゲーム
- (1) 4色フラッグ取りゲームとは
- (2) 4色フラッグ取りゲームのルール
- (3) 実際の対戦(勇気の場合)
- (4) 集団思考場面
- (5) 実際の対戦(奈保の場合)
- 3 こんな動きを試してみよう
- (1) 型から入って型を破れ
- (2) F.F.で基本となる「3つの動き」(4年生での実践)
- (3) 3つの動き・練習の過程
- (4) アレンジした作戦
- 第2章 作戦づくりと学習カードの実際
- 第1節 こんな作戦を立てて試してみよう
- 1 作戦づくりとは
- (1) ボールゲームの作戦
- (2) 作戦づくりの過程
- 2 作戦づくりの実際
- (1) 勝の作戦づくりの過程
- (2) 吉正の作戦づくりの過程
- 第2節 学習カードの活用
- 1 「何を」「いかに」書かせるか
- 2 学習カードの実際
- (1) 1年生:フラッグおにごっこ
- (2) 2年生:フラッグおにごっこ
- (3) 4・5・6年生:フラッグフットボール
- 第3章 各学年での実践事例
- 第1節 F.F.小学校6年間のカリキュラム
- 1 1・2年生での指導・学習内容
- 2 3年生での指導・学習内容
- 3 4年生での指導・学習内容
- 4 5年生での指導・学習内容
- 5 6年生での指導・学習内容
- 第2節 1年生から実践できるF.F.
- 1 和男の6年間の成長
- (1) 「教科担任制」のメリット
- (2) 和男,6年間の変容・成長の実際
- 第3節 各学年での実践事例
- 1 1年生:フラッグおにごっこ
- 2 2年生:フラッグフットボール
- 3 4年生:フラッグフットボール
- 4 5年生:フラッグフットボール
プロローグ
「大上さん,何でも10年続けたら本物になりますよ」
今から17年前,大学院で指導していただいた小林篤先生(現・兵庫教育大学名誉教授)の言葉です。ある日のゼミで,奈良女子大学附属小学校の岩井邦夫教諭(現・東海学園大学)の「忍者体育」の実践を基に,体育科教育のあり方について論議しました。
岩井氏は「忍者体育」を開発し,1983年から研究実践を継続されていました。ゼミで論議した年が,岩井氏の忍者体育実践10年目にあたり,先の小林先生の言葉となりました。その言葉は私の琴線に触れ,現在でも力強く語られた言葉が心に残っています。
私は12年前に広島大学附属小学校に赴任しました。
本校は教科担任制を採用しており,専科として思う存分体育ができると意気揚々でした。しかし反面,担当時間数(週18時間)も多く,内容の浅い体育学習になってしまうのではないかという不安もありました。
そんなとき出会ったのが本書で紹介するフラッグフットボールです。
4月のある日,研究室で仕事をしていました。すると,外から6年生の活気のある声が響いてきました。そのかけ声は,今までにあまり耳にしたことのない次のような内容でした。
「右のスペースが空いてるぞ,走り込め」
「フランカーにパスしろ。ノーマークだ」
「ラン,ランだ。ガードしろ」
「ランかパスか,どっちでくるかわからんから警戒しろ」
「ナイス! タッチダウン」
これらの声を聞き,いったいどんなゲームをしているのだろうかと思い,すぐに外に出て見学させてもらいました。
驚きました。クラス全員の子どもが輝いて見えました。プレーヤーとして,応援者として,各係として,全員がゲームに参加し夢中になっていたのです。また,プレーが終わるごとにチームで集まり肩を寄せ合いながら,動きや作戦を練ったり指示を出し合ったりする姿に感動しました。
その授業を見たとき,「これだ! フラッグフットボールを10年間実践しよう」という強い衝動にかられました。
その後,本校の研究会では一貫して「フラッグフットボール」(以下,「F. F.」とする)の授業を公開し,研究発表を行ってきました。友人の中には,「また! F. F.か」とあきれる者もいますが,「何でも10年続けたら本物ですよ」という小林先生の言葉を信じ,必ず続けて実践しようと心に誓い本日に至っています。
(写真省略)
実は,今回の学習指導要領の改訂でボール運動領域の内容として,F. F.が取り上げられることを期待していました。前回の改訂が行われた平成10年からF. F.の実践をスタートし,授業実践を積み重ね,その教材的価値を主張してきたからです。F. F.は全ての児童に保障できる学習内容が含まれており,小学校体育科のカリキュラムに導入すべく,実践・研究の成果を発信してきました。
今回の改訂では,ついに長年の願いがかなうことになりました。
中学年「ゲーム」領域・高学年「ボール運動」領域でゴール型の例示として,F. F.が取り上げられました。
第3学年及び第4学年の目標及び内容
E ゲーム 1 技能 ア ゴール型ゲーム
[例示]
○タグラグビーやフラッグフットボールを基にした易しいゲーム(陣地を取り合うゴール型ゲーム)
第5学年及び第6学年の目標及び内容
E ボール運動 1 技能 ア ゴール型
[例示]
○タグラグビー,フラッグフットボール
本書は,F. F.の魅力にのめり込み,子どもと歩んだ12年間の拙い実践をまとめたものです。ただ,この実践を通して,「F. F.で教師も子どもも変わる」ということは自信を持っていえます。一人でも多くの先生,指導者の方々にF. F.の魅力をお伝えできればと願っています。忌憚のないご意見をお願い申し上げます。
なお,本文中の人名は全て仮名を用いました。
/大上 輝明
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明治図書
















