- はじめに
- 第1章 井戸端会議でよく出てくる話
- 1 賞味期限の話
- 2 ダイエットの話
- 3 天気の話
- 4 エコ話
- 5 電気・ガス・水道の話
- 「気になる」話1 生活習慣病の話
- 第2章 とっても便利なものの話
- 6 デジタルカメラの話
- 7 電話の話
- 8 時計の話
- 9 電球の話
- 10 テレビの話
- 「気になる」話2 レアメタルの話
- 第3章 ほんとにちょっとこわい話
- 11 地震の話
- 12 台風の話
- 13 温暖化の話
- 14 火事の話
- 15 洗剤混ぜ合わせの話
- 「世界一」な話1 生物編
- 第4章 世のために尽くした人の話
- 16 物理に貢献した人の話
- 17 化学に貢献した人の話
- 18 生物学に貢献した人の話
- 19 地学に貢献した人の話
- 20 人類の危機を救った人の話
- 「世界一」な話2 地形・自然現象編
- 第5章 似ているけれどちがう話
- 21 重力と質量の話
- 22 紫外線と赤外線の話
- 23 野菜と野草の話
- 24 熱と温度の話
- 25 恒星・惑星・衛星の話
- 「へぇー」な話1 爆弾と平和の話
- 第6章 小さいけれどすごい話
- 26 細胞の話
- 27 遺伝の話
- 28 微生物の話
- 29 原子・分子の話
- 30 ナノテクノロジーの話
- 「へぇー」な話2 太陽の話
- 第7章 遠い・遠い話
- 31 山と海と空の話
- 32 恐竜の話
- 33 極点の話
- 34 宇宙の話
- 35 生命誕生の話
- 「?」な話1 大陸の話
- 第8章 何とも不思議な話
- 36 ものが空中に浮く話
- 37 氷の話
- 38 成長の話
- 39 錯覚の話
- 40 立体画像の話
- 「?」な話2 星占いの話
- 第9章 夢のような話
- 41 ロボットの話
- 42 クローンの話
- 43 新エネルギーの話
- 44 発見(化学)の話
- 45 宇宙開発の話
- 「?」な話3 タイムマシンの話
- 補 章 理科漢字検定
- 1 漢字検定 物理編
- 2 漢字検定 化学編
- 3 漢字検定 生物編
- 4 漢字検定 地学編
- 5 漢字検定 動物編
- 6 漢字検定 植物編
- 漢字検定 解答編
- 参考にしたい本・サイト
- 著者からの一言
はじめに
現在も国際的な調査であるOECDの学習到達度調査(PISA)の結果が話題になっています。日本では,科学教育に携わる者のみならず,多くの教育関係者が,2000年以来の調査結果に敏感になっています。そのPISAで取り扱われている「科学的リテラシー」は,略述すれば,次のような能力と言えます。すなわち,「科学が関連する諸問題について証拠に基づいた結論を導き出すための科学的知識とその活用」であり,「科学の特徴的な諸側面を人間の知識と探究の一形態として理解すること」です。また,「科学とテクノロジーが我々の物質的,知的,文化的環境をいかに形作っているかを認識」することと,「思慮深い一市民として,科学的な考えを持ち,科学が関連する諸問題に自ら進んで関わる」ことでもあります。今ここでは,調査結果を分析して,日本の成績についてとやかく批評するつもりはありません。しかし,どの項目も,これまでの日本の科学教育が重要に考えていた内容であるように思えます。むしろ,筆者の感覚からすれば,これらの項目は,日本の科学教育がめざす目標にあてはまることであり,これまで当たり前のように考えてきました。ところが,最近では,このような形で,改めて国際的な視野からの提言と要請がなされてきています。それをどう受け止めればいいのでしょうか。私的な見解としては,日本の科学教育が自己点検をするよい機会を得たと解釈すればよいと考えています。つまり,世界各国で,さまざまな科学教育が展開される中,日本の強化・補強したい観点が確認できたと言えるのではないでしょうか。
そういう考えに立てば,科学に対して興味・関心を抱くという点においては,もう少し想像性に富んだ「語り」や「読み聞かせ」に,注目してもいいのではないでしょうか。「お話を聞く」ことは,科学的な体験に次いで,子どもが出会う本物に近い科学であり,一人ひとりが自由に想像できる能動的な楽しみが含まれているように思えます。
では,そういった「お話」の語りや読み聞かせ等によって,本当に理科好きの子どもは育つのでしょうか。その解答を得ようと,いろいろと考える中で,ふと思い出したことがあります。それは,「脱線話」についてです。筆者は,小学校時代から,理科の授業中の「脱線話」が好きでした。担任の先生が,当時話題になっているサイエンスを熱く語ってくれるからです。今思えば,好きだった理由は,自分では何となくしか理解できていないサイエンスのホットな話題について,わかりやすく解説してもらっていたからでしょう。お話を聞いた後も,友だちと続き話をしたり,家に帰って調べてみたりしたことがあります。話を聞いていたとき,頭の中で想像がどんどん膨らみ,明るい未来が予見されるようで,とてもハッピーな気持ちになっていたことが思い出されます。例えば,人類が月に到着した話を聞いたとき,とても刺激を受けました。
「人類が月に足跡を残したんだって。」
「へぇ,足跡がつくんだ。地面は,やわらかいんだな。」
「陽のあたる所は,熱くて何百度にもなる。」
「でも,地面は,溶けない。」
こんなことを思いながら,精一杯,自分の知識と照らし合わせ,感じ取っていた筆者がいました。そして,そこで得られた知識は,自分にとって一つのエピソードとして深く心に刻み込まれています。
こうした経験は,その知識を単に受け入れるだけでなく,他の事象・現象を見ても,そのちがいを探そうとしたり,新しく学んだ内容をその話に関連付けようとしたりすることにつながるようです。「学びは,知識の組み替えである」とよく言われるように,教室での「お話」が契機となって,子どもの頭の中では,どんどん知識の組み替え作業が起きているのです。さらに知識の組み替えは,単に一定の知識の組織を変えていくだけではなく,そこに新たな事物・現象を受け入れる準備もなされているようです。物を引っ掛けるフックのようなものが,いくつもできていく感じです。
繰り返しになりますが,科学に関する知識の理解や能力向上において,「お話」をしたり,「お話」を聞いたりする学びのきっかけがあってもいいのではないでしょうか。そして「脱線話」に花が咲くための話題提供があってもかまわないのではないでしょうか。そこに,本書の意義を見出すわけです。話を知っていても,他の人から聞くと,なおよくわかる場合があります。それまで,十分に理解し切れていない点も聞くことによって整理され,はっきりとわかる場合です。あるいは,他の人に話をすることによって,自分自身が,よくわかることもあります。そうした機会を得るための話題提供が本書です。しかし,浅学な者同士が筆を走らせている点,内容的に不十分な箇所が多々あるかと思います。読者の皆様のご指導をいただければ幸甚です。
最後になりましたが,本書の企画・出版にあたり,明治図書出版(株)の石塚嘉典様には,多くのアドバイスをいただきました。また,校正では,飯島トミ様に大変お世話になりました。ここに改めてお礼を申し述べます。
2008年7月 編著者 /溝邊 和成
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- 明治図書