- まえがき
- 序にかえて
- 第1章 子どもたちへの熱き思い
- 教師として
- 1 つらい別れをしよう
- 2 子どもたちよ,ガキ大将になれ!
- 人間として
- 3 差別のない世の中をめざして
- 4 みんななかよく
- 親への想い
- 5 心の旅
- 6 独りぼっちはいや
- いじめと向き合って
- 7 だれも分かってくれない
- 8 人をいじめたことがある
- 第2章 心に残るあの授業
- 1 資料のよさを最大限に生かす
- より深い感動を…〜「花さき山」〜
- 2 教師の信念を前面に出す
- 教師の想いを語る〜「きよみちゃん」〜
- 3 教師の感動が授業を創る
- 感動を伝えたい〜「字が書きたい」〜
- 4 実在の人物が登場する
- 先生の友達が現れた〜「あつしくん」〜
- 5 子どもの実態を取り上げる
- 生き物を飼うって〜「かわいそうなぞう」〜
- 6 家族の「思い」にひたる
- 涙の終末から学んだこと〜「ぽくのお母さん」〜
- 7 二人のための授業
- 日記でつけた心のつぼみ〜「いのりの手」〜
- 8 あえて「死」をぶつける
- 死はタブーなのか〜「オマイラさんを救え!」〜
- 9 子どもに揺さぶられた授業
- 子どもに学ぷ〜「なくした かぎ」〜
- 10 子どもの声を詩に編む
- 一枚の葉書から〜「友の肖像画」〜
- 11 子どもが課題を設定し進行する
- ぽくたちがプロデューサー〜「ブランコ乗りとピエロ」〜
- 12 道具を駆使し,役になりきる
- 殿様、道徳の時間ですよ〜「あめと とのさま」〜
- 常に子ども理解に努める教師でありたい
- 子ども理解 こんなことに気をつけよう
まえがき
本書「『生きる力』を育てる感動と感化の道徳授業」は,道徳指導研究会(略称,道指会)と称する私たちの研究会のレポートの一つである。
本会は発足から今まで,初代の主宰故古島稔先生,そして久保千里先生を中心に「道徳指導の評価について」「道徳授業のつまずきを考えよう」「子どもの感動とは何か,それを生かすには」「子どもの生きる力を育てるには」などなど,道徳教育という土台の上で実践をもとに数々のテーマに取り組んできた。その間,常に「小手先の研究であってはならない。全身で汗するような研究をしよう。」と努力してきたが,時を経,実働のメンバーは変わっても,研究への取り組みの姿勢は連綿と引き継がれている。
今回のレポートは,個人が主体的に課題に立ち向かう資質・能力や,豊かな人間性などを中身とする“生きる力”の育成の重大さが改めて言われる中で,子どもの心の教育の核とも言える道徳の授業における教師の指導性の大切さを再確認し,子どもたち一人一人が生き生きと自らの道徳性を伸ばすための指導がいかにあるべきかを,実践を通して追求したものである。
“生きる力”とは言うまでもなく,“一人一人の生きる力”である。したがって“生きる力”の育成には一人一人の個性を尊重し.その伸長を図ることが基盤となる。すなわち,子ども自身が自らの生き方の課題に正対し,人間としてよりよく生きたいと志向し,努力するように指導がなされることが肝要である。ここにおける指導は,いわゆる押しつけではない。子どもたち一人一人のかけがえのない個性を大切にする教師の援助・助言であり,相互に「我と汝」の関係の上に立つ心のふれあいである。こうした指導の営みは・子どもたちに「心がゆさぷられる」「魂にふれる」といった感動体験をもたらし,感化を生むであろうし,またそのことが,教師にとっての感動や感化を生むと考えられる。とくに道徳の授業が,子どもと教師の“魂のふれあう”感動と感化の基盤の上で営まれるとき,それはまさに“一人一人の生きる力”を育てる大きな“力”となるであろう。
今回のまとめは視野も狭く未熟でもあるが,感動と感化に関してメンバー各自の熱き思いや,子どもたちと一体となって心を躍らせた体験を,様々な角度から練り上げたものである。お読みいただいてご批正,ご指導を頂戴できれば幸いである。 終わりに,本道指会の歴史を生き生きとつないでくださった先輩の先生方に,そして未熟なレポートのまとめに際し,陰に陽に終始適切な助言,尽力をくださった明治図書の仁井田康義氏に心からの感謝を申し上げる。
編著者代表 /荻原 武雄
-
- 明治図書