- まえがき
- 序にかえて
- 1章 心がおどる授業とよい授業
- §1 よい授業とじょうずな授業
- §2 よい授業のための要件
- 1 資料の選択と活用
- (1)資料の選択について
- (2)資料の活用について
- 2 話合い
- (1)道徳の授業における話合いについて
- (2)学級経営とのつながりについて
- (3)「話合い」の工夫について
- 3 教師の構え
- (1)待つ心
- (2)受け止める態度
- (3)ゆとりの心
- 2章 心がおどる授業と子ども理解
- §1 子ども理解について
- 1 基本的理解
- 2 技術的理解
- 3 共感的理解
- (1)子どもの次元に近づく
- (2)子どもの不安や悩みを受け止める
- §2 子ども理解の進め方
- 1 欠席簿を出席簿に
- 2 自由な時間のふれ合いの中で
- 3 サインを受け止める
- 4 再生の願望を大切に
- 5 グループ活動への指導
- 3章 心がおどる授業のための教師の工夫
- §1 指導過程について
- 1 導入について
- 2 展開について
- 3 終末について
- §2 指導の方法の中から
- 1 説話について
- 2 役割演技について
- (1)指導過程への位置づけ
- (2)効果を高めるために
- (3)教師の留意事項
- 3 板書について
- (1)板書は子どものためにする
- (2)板書は子どもとともにする
- (3)板書計画を大切にする
- 4 子どもが「書く」活動について
- (1)ワークシートを活用する場合
- (2)道徳ノートを活用する場合
- 5 教室の環境づくりについて
- (1)学級の人的環境づくり
- (2)教室の物的環境づくり
- 6 子どもの変容の評価について
- (1)基本的な考え男
- (2)具体的な方法例
- (3)子どものホンネについて
- 4章 教師自身の心がおどる体験の重視
- §1 電車の中で
- §2 大島の人々との交流
- 1 思いやりへの思いやり
- 2 一枚の千円札
- §3 サスペンデッドゲーム
- §4 先生二人,教え子二人のクラス会
- §5 いい町だと思ってください
- §6 わが父のこと
- §7 すもう日記
まえがき
私が道徳教育を研究する方々の仲間に入れていただいたのは,二つめの勤務校である東京都大田区立大森第三小学校のころ,年齢は20歳台のおわりのころでした。そして,校内研究の中でよき先輩に育てられ,地区の道徳研究部で顔をおぼえられるようになったころ,研究部の大先輩から「あなたは“よく考える教師”というより“よくやる教師”だね。これは大切だよ。」と言われたことがあります。よく分からないのにあれこれ理屈をこねるより,すなおに実践を積んでいくことが大切という意味だったと思います。
もちろん,“よく考える教師”としての理論的な追究がその後に必要なわけですが,それから30年,私のつたない道徳教育についての研鑽の歩みは,まさしく“よく考える”より“よくやる”ことに終始して今日に至りました。
まずやってみる,指導を受ける,またやってみる……,授業研究,研究レポートなど,目をかけてくださる先輩にめぐまれてよく積み重ねました。「ザルで水を汲んでも,一晩かければ四斗樽に一杯になる」――そんな営みが私の歩みだったと思います。
それでも,振り返れば楽しくてしかたがなかった30年です。これは,ご縁のあった同僚の先生方の協力や時が変わってもいつも私といっしょになって授業を作り上げてくれたたくさんの子どもたちのおかげです。また,道徳主任並びに地区の研究部員のとき,そして東京都の教育研究員や教員研究生の時代,東京都や全国の小学校道徳教育研究会における活動の時代,さらには校長として2回の文部省道徳教育推進校の研究のときなど,本当にたくさんの先生方から温かいお導きやお励ましをいただいたおかげです。こうしたおかげで今日の私があります。ご恩を深く,大切に思います。
本書は,“あまり理論は追究できないけれど,よく実践に取り組む教師”,言うならば“ごくあたりまえに道徳教育に取り組んできた教師”が,「子どもだちと心を合わせた生活をしよう」,「子どもたちとともに心がおどる授業を作り上げよう」と道徳教育にかじりついて30年間やってきたこと,あたためてきた思いなどをまとめたものです。お読みいただく方々に何か訴えるものがあったとしたら,何かお役に立つものがあったとしたら,これに過ぎるよろこびはありません。
最後になりましたが,長い間お心をかけていただき,今回,つたない私の道徳教育への取り組みのまとめについてご尽力くださった明治図書の仁井田康義氏に,心から御礼を申し上げます。
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- 明治図書