- はじめに (理科における発展・補充的な学習の考え方) /日置 光久
- 第3学年 「発展・補充」の学習のポイント
- /村山 哲哉
- (1) 第3学年の発展的な学習
- (2) 第3学年の発展的な学習における活動例
- (3) 第3学年の補充的な学習
- (4) 第3学年の補充的な学習における活動例
- 第3学年【A領域】生物とその環境
- 1.「植物の育ちと体のつくり」〈A―(1)〉 /傳幸 朝香
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 2.「昆虫の育ちと体のつくり」〈A―(1)〉 /山元 一哉
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 第3学年【B領域】物質とエネルギー
- 1.「光の性質」〈B―(1)〉 /安田 仁昭
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 2.「乾電池と豆電球」〈B―(2)〉 /阪元 聡
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 3.「磁石の性質」〈B―(3)〉 /藤ア 博隆
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 第3学年【C領域】地球と宇宙
- 1.「日なたと日陰」〈C―(1)〉 /井上 正裕
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 第4学年 「発展・補充」の学習のポイント
- /村山 哲哉
- (1) 第4学年の発展的な学習
- (2) 第4学年の発展的な学習における活動例
- (3) 第4学年の補充的な学習
- (4) 第4学年の補充的な学習における活動例
- 第4学年【A領域】生物とその環境
- 1.「季節と生き物」〈A―(1)〉 /引間 和彦
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 第4学年【B領域】物質とエネルギー
- 1.「空気と水の性質」〈B―(1)〉 /渡邊 文生
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 2.「物の温まり方」〈B―(2)〉 /松岡 孝子
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 3.「電気の働き」〈B―(3)〉 /山本 光
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 第4学年【C領域】地球と宇宙
- 1.「月と星」〈C―(1)〉 /鈴木 康史
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 2.「水のすがた」〈C―(2)〉 /岡村 廣
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 第5学年 「発展・補充」の学習のポイント
- /村山哲哉
- (1) 第5学年の発展的な学習
- (2) 第5学年の発展的な学習における活動例
- (3) 第5学年の補充的な学習
- (4) 第5学年の補充的な学習における活動例
- 第5学年【A領域】生物とその環境
- 1.「植物の発芽と成長」〈A―(1)〉 /村山 哲哉
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 2.「植物の結実」〈A―(1)〉 /二宮 由美子
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 3.「動物の誕生」(課題選択)〈A―(2)〉 /谷岡 義高
- 1.〈魚の誕生〉発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.〈魚の誕生〉絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.〈人の誕生〉発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 4.〈人の誕生〉絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 5.評価規準/ 6.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 7.発展と補充の学習プラン/ 8.発展と補充の活動プラン
- 第5学年【B領域】物質とエネルギー
- 1.「物の溶け方」〈B―(1)〉 /及川 明文
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 2.「てこ」〈B―(2)〉 /田口 明正
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 3.「物の運動」(課題選択)〈B―(3)〉 /塚田 昭一
- 1.〈ふりこ,衝突〉発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.〈ふりこ〉絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.〈衝突〉絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 4.評価規準/ 5.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 6.発展と補充の学習プラン/ 7.〈ふりこ〉発展と補充の活動プラン/ 8.〈衝突〉発展と補充の活動プラン
- 第5学年【C領域】地球と宇宙
- 1.「天気の変化」〈C―(1)〉 /中島 晃兒
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 2.「流れる水の働き」〈C―(2)〉 /五十嵐 泰司
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 第6学年 「発展・補充」の学習のポイント
- /村山 哲哉
- (1) 第6学年の発展的な学習
- (2) 第6学年の発展的な学習における活動例
- (3) 第6学年の補充的な学習
- (4) 第6学年の補充的な学習における活動例
- 第6学年【A領域】生物とその環境
- 1.「動物の体のつくりと働き」〈A―(1)〉 /山谷 陽子
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 2.「植物の養分」〈A―(2)〉 /奥村 豊美
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 3.「生物と環境」〈A―(2)〉 /佐々木 昭弘
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 第6学年【B領域】物質とエネルギー
- 1.「水溶液の性質」〈B―(1)〉 /三田 幸司
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 2.「物の燃え方」〈B―(2)〉 /弘 あかね
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 3.「電流の働き」〈B―(3)〉 /牧 弘樹
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 第6学年【C領域】地球と宇宙
- 1.「土地のつくり」〈C―(1)〉 /相場 博明
- 1.発展コース・補充コースへの見極めのポイント/ 2.絶対評価のテスト(発展コース・補充コースへの見極め問題)/ 3.評価規準/ 4.本単元における発展的な学習と補充的な学習/ 5.発展と補充の学習プラン/ 6.発展と補充の活動プラン
- 【コラム】
- 理科における個に応じた指導の基本的な考え方/ 日置 光久
- 理科における発展的な学習と補充的な学習の基本的な考え方/ 日置 光久
はじめに
(理科における発展・補充的な学習の考え方)
平成10年12月に改訂された学習指導要領は,子どもたちに〔生きる力〕を育成することを基本的なねらいとしている。改訂の基本方針は,次のようなものである。
(1) 豊かな人間性や社会性,国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること。
(2) 自ら学び,自ら考える力を育成すること。
(3) ゆとりのある教育活動を展開する中で,基礎・基本の確実な定着を図り,個性を生かす教育を充実すること。
(4) 各学校が創意工夫を生かし特色ある教育,特色ある学校づくりを進めること。
この方針に基づき,全ての子どもが共通に学習する内容として基礎的・基本的な内容の厳選を行った。このことにより,教師にも子どもにも時間的・精神的なゆとりがもたらされ,その中で一人一人の子どもに応じたきめ細かな指導や学習が可能になってくる。一人一人の子どものよさや可能性を伸ばし,主体的な学習の充実が図られることになる。各学校においては,学習指導要領のねらいを実現するために,基礎・基本の確実な定着を図り,個性を生かす教育を充実することが求められている。
理科で培うべき力
理科で培うべき力を考えるために,学習指導要領を見てみよう。というのは,学習指導要領は全ての子どもが共通に学習する基礎的・基本的な内容を示したものだからである。
学習指導要領における理科の目標は,次のようになっている。
自然に親しみ,見通しをもって観察,実験などを行い,問題解決の能力と自然を愛する心情を育てるとともに自然の事物・現象についての理解を図り,科学的な見方や考え方を養う。
これは,次のように分けて考えることができる。
・自然に親しむ
・見通しをもって観察,実験などを行う
・問題解決の能力を育てる
・自然を愛する心情を育てる
・自然の事物・現象についての理解を図る
・科学的な見方や考え方を養う
(1)「自然に親しむ」理科
理科の教科目標の冒頭に「自然に親しむ」という文言が置かれていることの意味は重要である。理科の学習においては,子どもが「自然に親しむ」ことが最初に意識されなければならないのである。「自然に親しむ」ことは,全ての理科学習の基盤となるのである。
ただし,注意しなければならないのは,子どもが自然に親しんでいればそれで理科の学習が成立しているという誤った思いこみである。「自然に親しむ」ことは理科学習の基盤であり,内容や方法ではないのである。「自然に親しむ」は,むしろ教師側が意識しなければならない理科学習の環境の設定や状況の構成であり,理科の目標を実現する「場」としての意味合いが強い。そこには,教師の目的意識があり,学習というベクトルが存在する。子どもを指導・支援していく方向性が包含されているのである。
(2)「見通しをもって観察,実験などを行う」理科
現行の学習指導要領では,子どもが見通しをもって観察,実験などを行うことを重視している。「見通し」をもつことは,次の3つの視点から考えることができる。
・自己責任の原則:子どもが自らの予想や仮説に基づいて観察や実験を進めることにより,その結果に対する自らが導き出したものとしての認識が深まる。そのため,子どもの中で予想や仮説と結果を意識的に比較して考察しようという態度形成が促進される。これは,主体的な問題解決の活動を保証するものである。
・確証・反証の原則:子どもがもつ予想や仮説とそれに基づいて行われた観察,実験の結果との間には,両者が一致する場合と一致しない場合の2つの可能性が考えられる。両者が一致した場合は,子どもは自らの予想や仮説を確認したことになる。両者が一致しなかった場合は,子どもは自らの予想や仮説を見直したり,あるいは観察や実験の方法や手順を振り返ったりして,再検討を行うことになる。本来,両者の価値は,問題解決という点からは対等で,等価なものである。
・自然観の転換:多様で重厚な事象の集合体として自然をとらえるならば,子どもは観察,実験を通してその事象のもつ特性を把握していくと考えられる。そこでは,自然の特性は人間とは無関係に自然の中に存在するという考えが,暗黙のうちに包含されている。観察や実験は,このような自然の特性を「発見」する方法として位置づけて考えることが,これも暗黙のうちに期待されていた。しかし,子どもの「見通し」を重視した新しい自然観では,自然の特性は自然の中に存在するというよりも,人間がそれを見通しとして発想するものであると考えることが妥当である。このように考えると,観察や実験も見通しとして子どもが発想した自然の特性を検討し,承認する手続きということになる。
(3)「問題解決の能力を育てる」理科
理科では,各学年ごとに中心となる問題解決の能力を示している。それらは,次のようなものである。
・第3学年:自然の事物・現象の違いに気付いたり,比較したりする能力
・第4学年:自然の事物・現象と関係する要因を抽出する能力
・第5学年:制御すべき要因と制御しない要因を区別しながら,観察,実験などを計画的に行っていく能力
・第6学年:多面的に追究しながら結論を導く能力
これらの問題解決能力は,それぞれ上位の学年の能力育成の基盤となるものである。また,一連の問題解決の活動の中では,それぞれ相互に関係し合いながら育成されていくものである。素朴な内容依存の学習から,潜在構造としての問題解決の能力を明確に意識した学習を目指す必要がある。
(4)「自然を愛する心情を育てる」理科
理科では,多様な自然の事物・現象を扱う。そこでは,様々な植物を栽培したり,動物を探したりするなど,多様な活動が展開される。そのような過程を通して,生物を愛護しようとする心情が養われる。また,生物が生きていくためには,水や空気,食べ物あるいは太陽のエネルギーなどが不可欠であることを学び,自らの生活と比較しながら考えることにより,自然のすばらしさや巧みさ,奥深さに気付き,自然を尊重する心情が深められていく。さらに,地震や火山などの自然災害によって大きな土地の変化がもたらされることや,自然環境と人間との適切な共生の手だてを考えたりすることにより,自然に対する畏敬の念が芽生える。これらは,広く理科で育てる「自然を愛する心情」と考えることができる。
(5)「自然の事物・現象についての理解を図る」理科
見通しをもった観察,実験などを通して,問題解決の能力や自然を愛する心情の育成を図りながら,自然の事物・現象についての理解が図られる。これは,単純な知識の帰納ということではない。問題解決の活動や子どもが自然と触れ合い心情を形成するという過程に支えられて,それらを1つの理解として知識化して整理するということである。そのため,受動的に知識を覚えるというよりも,様々な活動や体験,心情を背景として自ら知識をつくるという側面が強調される。これは,先述した自然観の転換とも深く関係している。「覚える」知識から「つくる」知識へと,知識観の変換を行うことが重要である。
(6)「科学的な見方や考え方を養う」理科
(1)〜(5)までの活動やその結果育成される問題解決の能力や自然を愛する心情,自然の事物・現象についての理解をもとにして,子どもは1つの自然というものに対する見方や考え方を構築していく。それらは学習が進むにつれてつくりかえられ,変容していく。そして,より科学的なものへ構築し直されていく。還元すれば,子どもが習得する方法や手続き,それによって得られる結果及び概念が全体としてダイナミックに再編成されていくということである。それは,子どもにとって新しい世界が見えてくるということであり,説明可能な世界が広がるということである。
理科における発展・補充的な学習
上述のように,理科で培う力について考えてきた。理科における発展・補充的な学習は,すなわちこのような理科で培う力を,より発展的に伸ばしたりあるいは補充で確かなものにしたりすることにほかならない。ただし,理科で培う力は,「育成された・育成されていない」,「できた・できない」といった単純な2項関係でとらえることは必ずしも妥当ではないし,また可能でもない。それは,学習の中で見通しをもった観察や実験の具体の活動の中で,あるいは観察,実験の結果を整理したり,発表し合ったりしている具体の子どもの姿を通して検討される必要がある。このように考えると,理科における発展的な学習あるいは補充的な学習は,全く異なったものとは限らないことがわかる。子どもの状況によって,その課題がその子どもにとって発展的な位置付けになったり補充的な位置付けになったりすることがあり得る。子どもの実現状況をよく把握し,子どもにとっての発展的な学習,補充的な学習を注意深く充実させていく必要がある。
子どもの実現状況は,評価規準で示される。評価規準は,評価の観点の趣旨を受けて作成されている。周知のように,評価の観点は次の4つである。
・自然事象への関心・意欲・態度
・科学的な思考
・観察・実験の技能・表現
・自然事象についての知識・理解
これら4つの観点で子どもの学習の実現状況を把握し,評価規準に則って評価を行っていく。評価規準は,学習指導要領の目標と内容を4つの観点に沿って整理・分析したものである。それゆえ,子どもの学習指導要領の実現状況を見ることが可能になるのである。当該の単元や内容の評価基準によって,学習指導要領の目標や内容を実現していると考えられる子どもの状況は,「おおむね満足できる状況」と表現される。このような子どもに対しては,学習指導要領を実現しているのであるから,さらに発展的な学習に進んでいくことが期待される。また,学習指導要領の目標や内容を実現していないと考えられる子どもの状況は,「努力を要する状況」と表現される。このような子どもに対しては,学習指導要領を実現していないのであるから,補充的な学習を行い,学習指導要領の実現を目指す必要がある。
「おおむね満足できる状況」と判断された子どもは,さらに発展的な学習に進むことができるが,そこでの発展的な学習は様々な内容を考えることができるであろう。そして,それは日常生活や上位の学年での学習に開かれているという意味で,オープンエンドな性格をもち合わせていることもあるであろう。しかしながら,「おおむね満足できる状況」を基礎・基本とした場合の発展であるので,子どもの実現状況と関係付かないものは,発展的な学習とは呼べないことに留意しなければならない。また,「努力を要する状況」と判断された子どもは,「おおむね満足できる状況」へ向けての教師の教師の支援の基に補充的な学習を行うことになるが,そこでの子どもの状況は多様であることに留意しなければならない。それは,「努力を要する状況」と判断された子どもは,「おおむね満足できる状況」を実現していないということであって,実際には様々な実現状況が存在するからである。教師は,子どもがどこで,どのように,「おおむね満足できる状況」を実現していないのかをよく把握し,指導を工夫する必要がある。
発展,補充的な学習は,一人一人の子どもの姿を大切にした個に応じた指導の中でなされるものである。そのため,TTや少人数指導,個別指導,グループ別指導等,多様な指導形態が工夫される必要がある。理科においては,伝統的に観察,実験を中心にしたグループ別指導が多く行われてきたが,これからは目的に応じて柔軟に集団を組み替えるなどの工夫を行い,個に応じた指導をいっそう充実させることも考えられる。
発展,補充的な学習は,あくまで個に応じた指導の一環であり,一人一人の子どもの学びを充実させるものなのである。
/日置 光久
-
明治図書
















