国語科授業改革双書28聴く力を鍛える授業

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話を聞かない子・聞けない子が急増する現状の中で、子どもの聞く能力の実態調査をもとに、聴く力の育成に向けての新しい国語教育の創造を提言。


復刊時予価: 2,926円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-657309-3
ジャンル:
理科
刊行:
対象:
小・中・高
仕様:
A5判 212頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
T 主体的に聴く力を鍛えよう
一 「聞く」とは能動的な行為である
二 聞く力の現状と問題点
三 「聞く」から「聴く」へ、さらには「訊く」へ
四 どんな聴く力をいつ鍛えたらいいか
五 聴く力を鍛える言語環境づくり・教材づくり
U 論理的に聴く耳を鍛える授業改革案
一 小学校中学年
1 小学三年生
友達の思いを引き出そう
2 小学四年生
スピーチに題をつけよう
3 小学校中学年 日々の授業と聴く力の指導
「対談」を楽しみ友達の考えを聴き取ろう
入門期のメモ指導
二 小学校高学年
1 小学五年生
友達の考えの背景にあるものを引き出そう
聴き取ったことを作文に書こう
2 小学六年生
友達の言いたいことを聴き取り、自分の考えをもとう
自分の考えと比べながら聴こう
3 小学校高学年 日々の授業と聴く力の指導
目的意識や必要感をもって聴く
三 中学校
1 中学一年生
意見の聞き合いを通して「聴く力」の育成を図る
マップメモを作りながら聴こう!
2 中学二年生
聴いて動こう!
自分に必要な情報を取捨選択しながら聴こう
3 中学三年生
インタビューを始めよう
グループ質問形式で考えを聴き出そう
4 中学校 日々の授業と聴く力の指導
活用期のメモ指導
イメージマップで聴いたことを確かめる
仲間の調査発表を、主体的に聴く
四 高等学校
1 高校生
ディベートの技術を活用して、
テレビの討論系番組を批判的に聴く
2 高校生 読みの学習と主体的な聴き取りの指導
V 授業づくりのための理論的根拠
一 「思考」の発達―国語教育の中の輪郭
二 聴く力の育成と一般意味論
三 「聴く力」の理論的背景としての批判的思考
あとがき
資料 「聞き取り調査」の概略
執筆者紹介
会員名簿

まえがき

 最近多くの教育現場から、「話を聞かない子どもたちが増えている」と報告されるようになった。話を聞かないというよりも、話を聞くことができない、と言った方がよいかもしれない。小学校、中学校、高等学校、大学のどの教育状況を見ても、「話が聞けない」という現実がある。意志として聞かないのではなく、聞こうとしても聞けないという能力の問題である。私たち『声とことばの会』の例会においても、その度合いがますます悪化しているという実感をうったえる声が少なくない。

 『声とことばの会』は、子どもたちのことばの教育問題について、「音声」に注目しながら実践的研究を続ける会である。一九九〇年四月に発足し、現在は東京・群馬・愛知の三つの都県で月例研究会を続けている。例会で、参加者自らの声を鍛える実技練習と教室の言語実態をふまえた教育実践の検討などがなされている。多様な問題意識を内包する活発なやりとりの中で中心となる話題は、先のような話が聞けない現状をどのようにとらえ、どう対処すべきか、ということである。

 そこで、一九九四年・五年の二年間にわたり、会員の総力をあげて、子どもたちの聞く能力の実態調査を行った。

 その結果、聞く力は自然に育つものではないことがわかった。また、聞く力が思考力と深く結びついていること、意図的・計画的な学習の継続が必要であること、などが明らかになった。わが国の国語教育の歴史の中では、聞くことの重要性が指摘されていても、継続している実践の報告がないという事実も明らかになった。日常生活の行動の一つとして素直に聞くことがしつけとして強調されてきたこと。また、それと関連して国語教育の現場でも、相手の発言を謙虚に受け止めるという態度の面のみが主張されてきたことなどである。つまり、聞く能力そのものには、ほとんど目が向けられていなかったのだ。

 国際化する社会に参加し、情報化社会を生き抜くためには、自己の論理を組み立てながら、同時に相手の考えや思いを理解するような、音声言語能力が必要だ、といったことが近年よく言われるようになった。主体的にまた批判的に聴く力の育成が求められている。人の話を聴く力は、人と人とがかかわりあいながら生きていくために必要不可欠なものである。「人の話を聴く」ということは、正確に聞くことと同時にその信頼性や価値を判断して的確に聞くことでなければならない。二十一世紀という未来を担う子どもたちには、その意味での論理的な聴き方が求められている。このことを、私たちは直視しなければならない。

 一方、今、日本の子どもたちは、テレビに浸り、ファミコンやコンピュータに育てられている。その子どもたちも、「ことば」を発しているのだ。そのことばを、どのようにキャッチしていったらよいか。子どもたちの声を私たちはどのように受け止めたらよいか。それをただ非難し、否定するだけでは、何も解決されない。私たちは、教室の言語実態を把握しつつ、教室の実践の可能性を追究していかなければならない。

 本書は、教室の言語実態の調査に基づき、新しい国語教育の創造に向けての提言とするものである。


   /声とことばの会

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