- まえがき
- T 逆転現象の授業はいじめ・差別の温床を駆逐する!
- 1 なぜ,今,逆転現象の授業が必要なのか?
- 〜いじめや差別の温床を駆逐しよう!
- (1) なぜ逆転現象が必要なのか
- (2) 失意の子どもへのいとおしさ
- (3) いじめや差別の温床を駆逐するために!
- 2 討論の授業の良さを脳科学の視点から説明する
- 〜なぜ,討論の授業をめざすのか
- (1) なぜ,討論の授業をめざすのか
- (2) 15年前の向山氏の主張
- (3) 討論によって変わる子どもたち
- (4) 脳科学者が行う治療法――「社説法」
- 3 優れた発問の浮かび方
- 〜逆転現象の起きる発問は,どのようにして浮かぶのか
- (1) どのようなことを考えて発問づくりを行うのか
- (2) 逆転現象の起きた「発問」群
- (3) 「二者択一を迫る」問い
- (4) 子どもの認識傾向を踏まえた「意表をついた」問い
- (5) 「子どもの内部蓄積」と「新しい刺激」との接点を問うもの
- 4 発問作りのポイントは「内部情報」と「新しい刺激」の接点を突くことにある!
- 〜「過熱水蒸気」4〜6年・発展教材と授業化1
- (1) 発問は突然ひらめく
- (2) 水で焼く
- (3) 発問の検討――「理詰め作業」
- 5 討論の授業で「読解力」を伸ばす!
- (1) 討論の授業の良さ
- (2) 6年「電磁石」で討論
- U 6年編「女の子も熱中させる理科実践」
- 1 子どもの仮説を取り上げ,3度の逆転現象が起きる発問の構成
- 〜6年「ものの燃え方」
- (1) 一つの結果だけでは納得できない
- (2) 第7時「彩加の仮説を取り上げる」
- (3) 第8時「なぜ,ろうそくの火は消えるのか」
- 2 「心臓」のはたらきを見える形にする
- 〜体重計の針は,止められるか?
- (1) 工夫をすれば針は止まるのか
- (2) 脈を見せる?!
- 3 豚の小腸で,「消化」の意味を授業する
- 〜6年「ヒトや動物の体」
- (1) 消化の意味は分かりにくい
- (2) 小腸は二重構造になっている
- (3) デンプンの粒と糖分の粒の比較
- (4) 小腸から染み出すのは,どちらか
- 4 ヒマラヤ山脈が日本の文化に与えた影響
- 〜6年「大地のようす(地層)の発展学習」
- (1) 大地のようす(地層)の学習の難しさ
- (2) 昔,海底だったという証拠を触らせる
- (3) ヒマラヤ山脈の与えた影響
- (4) ヒマラヤ山脈にぶつかった偏西風の行方
- 5 子どもを熱中させる自由試行と討論
- 〜6年「電流のはたらき」(2003年度の実践)
- (1) 事前の実態調査をしてみて
- (2) 3時間に及ぶ自由試行
- (3) 更に2時間に及ぶ自由試行
- (4) 6時間目「逆転現象が起きる!」
- (5) 7時間目「いよいよ討論!」
- (6) 8〜9時間目「いろいろなもので電磁石を作る」
- 6 偶然の発見を授業に活かす「対応術」
- 〜6年「水溶液に溶けているものを調べる」
- (1) 一人の女の子の発見
- (2) 水溶液に溶けているもの
- (3) アンモニア水の気体を集める
- (4) アンモニア水の後に調べた水溶液
- V 5年編「感動の実録! 逆転現象のドラマ!」
- 1 植物にもオス・メスはあるのか?
- 〜5年「花から実へ」@
- (1) 単元に入る前の調整
- (2) 既習事項と重ねて「問う」
- (3) カボチャの花を見せる
- 2 花粉のはたらきに目を向けさせる発問
- 〜5年「花から実へ」A
- (1) トレーシングペーパーの威力
- (2) 元気のないカボチャの雌花
- (3) 教師に耳打ちさせる
- (4) 花粉のはたらきに着目させるには
- 3 台風の誕生をシミュレーションして討論の授業
- 〜5年「天気の変化・台風」
- (1) 空気砲で導入
- (2) 台風の発生する秘密に迫る!
- (3) 台風のエネルギーの源は水蒸気である!
- 4 太陽の動きをシミュレーションする
- 〜5年「気象」太陽の高度と気温の関係
- (1) 1日の気温の変化をグラフ化する
- (2) 人工の太陽でシミュレーション
- (3) 逆転現象の起きる発問
- (4) 太陽の高度を実際に測定しよう!
- (5) 気温はなぜ遅れるのか?
- 5 「流れる水のはたらき」全5時間
- (1) 流水実験の場所を確保する
- (2) 1時間目「子どもたちが熱中して遊んだ!?」
- (3) 2時間目「内側と外側では,どちらが削られやすいのか?」
- (4) 家が流されてしまう!――流水実験
- (5) 3時間目「流れが速いのは,どこか?」
- (6) 「川の観察に出かける」
- (7) 4時間目「外側の流れが速い原因は何か?」
- (8) 5時間目「川の石が丸いのはなぜ?」
- W 4年編「理科って楽しい! と言われるこの実践!」
- 1 チョウは,サクラに止まるのか?!
- 〜4年「植物を注意深く観察させる」とっておきの発問
- (1) いきなり「歌詞」を板書する
- (2) サクラの枝の突先に,花は咲くのか
- 2 夏,サクラの小枝の伸びを問う
- 〜4年「夏の自然観察」
- (1) 枝先に限定して観察させる
- (2) 観察に出る前の演出
- (3) 意外な測定結果に,驚く子どもたち
- (4) 教室にもどって
- 3 サクラに異常発生!「モンクロシャチホコ」を授業にかける
- (1) 異常発生! 謎の毛虫軍団?
- (2) 授業にかける!
- (3) 害虫はどちらか?
- 4 晩秋の「サクラの観察」と「モンクロシャチホコ」
- (1) 11月初旬の「サクラの観察」
- (2) モンクロシャチホコはどこだ?
- 5 ヘチマは,夜伸びるのか,昼伸びるのか?
- 〜4年「夏のしぜん」
- (1) ユニークな意見を取り上げる
- (2) ヘチマは,どの部分が伸びるのか
- 6 「ものの温度とかさ」全発問・全指示(6時間)
- (1) 単元に入る前に行わせたい体験
- (2) 1時間目「いくつもの現象を見せ,体験させる」
- (3) 2時間目「シャボン液が膨らむのはなぜ?」
- (4) 3時間目「牛乳を温めるとどうなるのか?」――液体の導入
- (5) 4〜5時間目「ジュースは温めるとどうなるのか?」
- (6) 6時間目(前半)「金属の球の温度とかさ」
- (7) 6時間目(後半)「鉄道のレールの伸びを実感させる」
- 7 有名な向山実践「空気はちぢむか」の追試をする!
- 〜4年「空気や水をとじこめると」
- (1) 「空気はちぢむか」を追試する
- (2) 単元の導入
- (3) 持ってきた子はたったの3名
- (4) 2時間連続の自由試行(第2〜3時)
- (5) 注射器を貸してください
- (6) 注射器を与える
- (7) 指名なし発表
- X 発展学習にお奨め! 全5時間のシナリオ
- 1 逆転現象のドラマがうまれる3年「日なたと日かげ」の授業
- 〜子どもの認識傾向をとらえて授業を組み立てる
- (1) 向山実践の追試
- (2) 1時間目(前半)「校庭全体でかげふみ遊び」
- (3) 1時間目(後半)「輪を使ってできるかげ」
- (4) 2時間目「向きを変えた人のかげは動くのか?」
- 2 CO2削減技術「サルファーフリー」燃料を授業する
- (1) 世界に誇るべき日本の新技術
- (2) 二酸化炭素の排出が少ないエンジン
- (3) ディーゼルエンジンの生みの親
- (4) ディーゼル・ハイブリッド車誕生!
- (5) ディーゼル車への規制
- (6) 燃料に含まれる硫黄分
- (7) 理想的な燃料「サルファーフリー」燃料
- (8) 世界にさきがけて開発した技術
- 3 過熱水蒸気の可能性を授業する
- (1) 餅が膨らむ原因
- (2) 蒸気機関の歴史
- (3) 水蒸気の力はもう古いのか?
- (4) 過熱水蒸気の未知の力
- 4 朝食と成績の関係を科学的にアプローチする!
- (1) 朝食と成績の関係
- (2) 脳の使うエネルギーは,何パーセントか?
- (3) 脳の使える唯一のエネルギー
- あとがき
まえがき
あの子はできない子だ。/クラスでかしこいのはあの子だ。/あの子には勝てっこない。/一番,ダメなのは,アイツだ。……
このような固定観念が,クラスに蔓延してはいないだろうか。
教育界をゆるがす「いじめ」や「差別」の根源には,このような固定観念がクラスに蔓延していることにある。
教師は,子どもたちに向かってよく次のようなことを言う。
「いじめはいけません」
「差別は人として許されません」
「みんな同じように可能性があるのです」
「教室は,間違う子のためにあるのです」
このような美しい言葉をいくら唱えても,子どもの固定観念を変えることはできない。
美しい言葉だけが,子どもたちの頭の上をむなしく素通りしていくだけだ。
いつもできる子はできる。
できない子はできないまま。
このような授業からは,いやらしい差別の構造を破壊することはできない。
それどころか,差別やいじめの温床がますます広がってしまう恐れがある。
教師は,授業の中でこそ,一人ひとりの持つ可能性を示してやらなければならない。
時には,できる子が間違い,普段できない子が正解だったというような事実を示してやらなければならない。
時には,多数派の子が間違い,少数派の子が正解だったというような逆転現象を見せつけてやらなければならない。
このような授業を通じてこそ,学問や真実は,多数決では決まらないことを学ぶ。と同時に,どの子にも可能性があることを学ぶのである。
このような授業を受ける子どもは謙虚になる。
ひきつっていた顔がおだやかになり,友だちをいじめたり,差別したりするような子にはならない。
ところで,逆転現象の授業は,しばしば討論の授業の中から生まれる。
このことは何を意味するのだろうか。
いつの日か,向山学級や大森学級のような討論のできるクラスにしたい……。そう願う教師は多い。
高段の芸といわれる「討論の授業」。
これは,教師の永遠のあこがれなのだ。
討論の授業には,知的緊張感がある。
討論の授業には,血の騒ぐようなエネルギーがある。
あの独特の雰囲気は,他の授業にはけっしてあり得ないものだ。
なぜ教師は,討論の授業をめざすのか。
なぜ,討論の授業は良いのか。
このことを,もっと突き詰めて考えるべきだ。
本書では,なぜ討論の授業をめざすのか,脳科学の視点から考えてみた。
また,本書では,逆転現象の起きる発問の共通点を探ることで,どのようなことを考えながら発問が浮かんでくるのかについても考察してみた。
ご批評いただければ幸いである。
2008年1月4日 /小林 幸雄
また、書名にあるように、逆転現象が起こる発問がびっしりと詰まっていて子どもたちが熱中します。
現場で、子どもたちの疑問を取り上げ、それを次の授業の中に生かしていったことが伝わってきます。
理科で悩んでいる若い先生方にも、自分の理科の授業を変えたいと思っているベテランの先生方にも必読の一冊だと思いました。