人権教育教材集1
夜明けの人々

人権教育教材集1夜明けの人々

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人間としての暖かさを子どもに伝えたい。

本書はテレビゲームやインターネットなど身の回りに遊べるものがすぐ手に入る現代の子どもたちに、そこからでは伝わらない人間としての温かさと、人として何が大切かを分かりやすい物語にして伝えるものである。


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ISBN:
4-18-626904-1
ジャンル:
人権教育
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 180頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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まえがき
低学年の教材
◇まほうの花シリーズ(れんさく @)
チエちゃんのきもち 【ていがくねん・さべつ】
◇まほうの花シリーズ(れんさく A)
ちょうちょになった一ねん一くみ 【ていがくねん・こくさいりかい】
子ぐまのクーちゃん 【ていがくねん・せいかつ】
まつり【ていがくねん・さべつ】
あきら【ていがくねん・なかま】
中学年の教材
こうもり山【中学年・差別】
曲がったキュウリ【中学年・生活】
◇総合学習シリーズ @
巻きずし【中学年・国際理解】
◇総合学習シリーズ A
牛の乳しぼり【中学年・差別】
◇総合学習シリーズ B
どじょうすくい【中学年・差別】
大じいちゃんとスーパー【中学年・生活】
高学年の教材
夜明けの人々【高学年・差別】
お爺さんとみんなの木【高学年・平和】
焼き鳥屋と魚屋 【高学年・生活】
勝男とおばあちゃん 【高学年・生活】
目玉焼き 【高学年・女性差別】
いじめ 【高学年・いじめ】

まえがき

 わたしは、きみたちと同じ小学生から「おじいちゃん」とよばれるようになった。だから、家庭や学校のせいかつが、きみたちとだいぶちがうように思う。

 きみたちは今、テレビやビデオ、テレビゲームなど、楽しいことがたくさんある。学校ではパソコンを使ってインターネットなどで、いろいろな子どもや大人とかいわできる。ケイタイ電話をもっている子がいるかもしれない。わたしが子どものころは、そんなべんりなものはなかった。テレビやビデオのような楽しいものもなかった。

 でもわたしは、きみたちがうらやましいと思わない。どうしてだろうか。

 わたしが子どものころ、学校からかえったら、友だちと竹トンボを作ったり、水てっぽうを作り、だれの作ったものがよくとぶか、きょうそうしてあそんだ。よくとばないものは、じぶんで作りなおした。

 きみたちは、あそぶものがちかくにたくさんある。竹トンボや水てっぽうも、できたものがうられている。食べるものは、たくさんそろっていて、お父さんやお母さんにおねがいして、なんでも手にいれることができる。すぐ近くに、コンビニやスーパーマーケットがある子がおおいだろう。

 でも、わたしは、きみたちがうらやましいと思ったことがない。どうしてだろうか。

 わたしたちの給食がはじまったのは、小学四年生のときだ。それまでべんとうを持っていった。でも、べんとうを持ってこない子もいた。わたしも、そのひとりだった。家に米がなくてべんとうのご飯をたいていないからだ。そんな日の昼やすみは、家まで走ってかえり、ふかしたさつまいもをたべたり、柿を食べて学校にもどった。

 べんとうをもってくる子がうらやましかった。でもわたしは、だんだん走るのがとくいになった。とくに、マラソンがとくいで、いつもトップクラスにいた。どうしてそうなったか、そのころはきづかなかったけれど、昼やすみに、家まで走ってかえったからだと、今は思っている。

 勉強がよくできる子も、たくさんいた。いちばんよくできる子が、級長だった。胸に「級長」のバッチをつけていた。そのバッチが、うらやましかった。でも、学校がおわって、みんなとあそぶときは、わたしが作った竹トンボが級長のよりよくとんだ。水てっぽうも、わたしのほうが、じょうずに作った。そのときは、級長がうらやましがった。

 わたしが小学校にあがるまえ、おばあちゃんが元気だった。日なたぼっこをしながら、おばあちゃんが、いろいろな話をしてくれた。あとで思うと、その話が、今のテレビやインターネットと同じだと思う。でも、すこしちがうところがある。きみたちは、スイッチをいれると、テレビやインターネットを見ることができる。それは、おばあちゃんの話より、面白くて楽しいかもしれない。でも、おばあちゃんは、わたしに何かをつたえたかったり、おしえたかったりして、いっしょうけんめい話してくれる。だから、おばあちゃんの、あたたかい気持がつたわってくる。そのあたたかさが、うれしい。おもしろいだけではない。楽しいだけでは、ないのだ。

 本をとおしてだけど、おじいちゃんになったわたしが、そんなあたたかさを、できるだけ、きみたちにつたえたいと思っている。


  二〇〇四年十一月   /川元 祥一

著者紹介

川元 祥一(かわもと よしかず)著書を検索»

作家・ルポライター

1940年に神戸市に生まれ,岡山県津山市で育つ。人権問題,特に差別問題をテーマに創作・研究・フィールドワークを続ける。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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