目次
- はじめに
- Ⅰ 個性が伸びる理科教育
- １ 自己実現をめざす子どもを育てる
- ２ 自ら学ぶ意欲を育てる
- Ⅱ 理科学習の個性化と学習課題づくり
- １ 理科学習の個性化をめざして――子どもとともに創る理科の授業――
- (1) 私たちのもとめる理科学習の個性化
- (2) 理科学習の個性化と学習課題
- (3) 理科学習の個性化のために―そのポイントを探る―
- ２ 個性が伸びる学習課題づくり
- (1) 子どもと教師の交互作用による学習課題づくり
- (2) 学習課題づくりを進める教師の役割
- Ⅲ 個性的な追求を促す学習課題づくり
- １ 学年発達のちがいによる学習課題づくり
- (1) 感動を味わう活動の中で学ぶ学習課題―低学年―
- (2) 興味・関心のある事象から変化のきまりを見い出す学習課題―中学年―
- (3) 知的興味のある事象から未知のものを探る学習課題―高学年―
- ２ 学習課題を導くための３つの方策
- (1) 子どもを引きつけるための効果的な事象提示
- (2) 学習意欲を喚起する事象提示の工夫
- (3) 学習課題へ焦点づける発問の工夫
- Ⅳ 理科学習の個性化と学習課題づくりの実践
- １ 活動意欲を高める学習課題づくりとその展開
- §１ 表現活動を生かした「むしさがし」の学習課題づくり（１年）
- §２ 体験活動を生かした「かわいいどうぶつ」の学習課題づくり（１年）
- §３ 五感をはたらかせる活動を通した「水にとかす」の学習課題づくり（２年）
- §４ 製作への期待感を醸成する「おもりでうごくおもちゃ」の学習課題づくり（２年）
- 低学年における学習課題例
- ２ 興味・関心を深める学習課題づくりとその展開
- §１ ことわざを確かめる観察から興味・関心を深める「雲と天気」の学習課題づくり（３年）
- §２ 継続した観察から興味・関心を深める「きせつと生き物」の学習課題づくり（３年）
- §３ 飼育活動を通して興味・関心を深める「虫のからだ」の学習課題づくり（４年）
- §４ 栽培活動を通して興味・関心を深める「ジャガイモの育ち方」の学習課題づくり（４年）
- §５ 事象の見直しを通して興味・関心を深める「物のとけ方」の学習課題づくり（４年）
- 中学年における学習課題例
- ３ 未知のものを探る学習課題づくりとその展開
- §１ カード法の活用による「食塩水のこさと重さ」の学習課題づくり（５年）
- §２ 事象の比較から追求意欲を高める「火と空気」の学習課題づくり（５年）
- §３ 既有の知識と事象の見直しから追求意欲を高める「もののあたたまり方」の学習課題づくり（６年）
- §４ 自由な試行活動を通した「物のもえ方」の学習課題づくり（６年）
- §５ ビデオ，スライドの活用による「地層」の学習課題づくり（６年）
- 高学年における学習課題例
- Ⅴ 個性の伸長と探究心
- おわりに
はじめに
最近，国民の各界各層において教育に関する論議が活発となり，21世紀の社会を担う子どもたちのために，個性を重視した教育の必要性が叫ばれている．一人ひとりの個性を重視することは，教育の当然の目標であるはずなのに，最近になってこの点が強調されるのは，最近の学校の現状がこの目標とはかけはなれているためであろう．一人ひとりの個性がお互いに尊重され，友だちとともに学ぶ喜びが体験でき，それが基礎となって将来への生きる力，生きる喜びにつながっていくような教育の創造が急がれねばならない．
本校においても，数年前より，上のような願いのもとで，一人ひとりの個性を育てる方途を求め，研究を続けてきた．本書「理科学習の個性化と学習課題づくり」は，このような努力によって得られた成果の一端である．特に理科という教科において，一人ひとりの子どもが学習活動に主体的に取り組み，個人の持ち味をフルに発揮しながら，しかも友だちと協同して追求できる子どもに育てるには，どのような学習課題づくりをすればよいか，という点に焦点を当て実践研究が試みられた．
今後さらに検討すべき課題や，研究が不十分な点も多く残されているが，本書を一つの土台としてさらに研究を進めていきたいと考えている．読者諸賢からの忌憚のないご批判とご教示をお願いしたい．
おわりに，本書の出版に際し，ご懇切な指導・助言とご寄稿をいただいた広島大学学校教育学部教授恩藤芳典先生，並びにご寄稿をいただいた井藤芳喜先生，また川尻小学校長大成一之先生をはじめとする三原理科教育研究グループの先生方，並びに多くの先生方に心からお礼を申しあげる．なお，本書の出版の機会を与えてくださった明治図書樋口雅子編集長のご厚情に対し，心からの謝意を表したい．
1986年１月 広島大学附属三原小学校長 ／河合 伊六
-
明治図書
