- はじめに
- T 規律のない授業とは
- 1 チェック1 常に「やかましい」クラスはあやしい
- 規律のない授業ケース@ 勝手なお喋りが横行する
- 規律ある授業のつくり方@
- 授業の始まり(終わり)の挨拶を止める
- 規律ある授業のつくり方A 作業指示を取り入れろ
- 片々の技術@ 授業の始まりは教科書チェックから
- 片々の技術A 国語なら漢字スキルという手もある
- 規律ある授業のつくり方B 「点」ではなく,「線」で指導せよ
- 2 要するに話が長いのだ
- 3 チェック2 全員が必ずやってくる?
- 規律のない授業ケースA 宿題が揃わない
- 片々の技術B 提出物の集め方にも型をもて
- 片々の技術C 言い訳を許さない
- 4 あなたの番じゃない
- 規律のない授業ケースB 子どもが教師の話をさえぎる
- 片々の技術D 可能な限り短いフレーズで対応せよ
- 片々の技術E まず学級に大きな指示を与えよ
- 規律ある授業のつくり方C 教えるべき「型」を教師がもて
- 5 ゴミが散乱する
- 規律のない授業ケースC
- 教室の床に信じられない物が落ちている
- 片々の技術F まず教師が拾う
- 6 ノートが大変だ
- 規律のない授業ケースD ノートを見せられない
- 7 結局「規律のない授業」とは指導をしない授業である
- U 規律ある授業とは
- 1 「右を向け」と言えば,全員が右を向く
- 2 黄金の三日間は生命線だ
- 3 実際の「規律ある授業」 〜国語の授業〜
- 4 普通の漢字確認の時間だが
- 5 クラブ活動の最初の1時間目 〜授業と同じ〜
- 6 全員を巻き込む技術
- V 規律ある授業を支える7箇条
- 1 基礎体力をあげるための7箇条
- その1 担任する児童の名前を覚えよ
- その2 笑顔を練習せよ
- その3 驚きは練習せよ
- その4 靴箱を見よ
- その5 ロッカーを見よ
- その6 机の中を見よ
- その7 追試せよ
- 2 授業の腕をあげるための7箇条
- その1 授業をする際は,TOSS授業技量検定D表の評定項目を意識せよ
- その2 授業の原則の「確認の原則」を強く意識せよ
- その3 授業の原則の「空白禁止の原則」を強く意識せよ
- その4 授業の原則の「一時一事の原則」を強く意識せよ
- その5 授業の原則の「所時物の原則」を強く意識せよ
- その6 授業の原則の「趣意説明の原則」を強く意識せよ
- その7 授業の原則の「指導評価」を強く意識せよ
- W 規律ある授業をつくるために
- 1 新 授業の原理・原則
- (1) 1時間の授業に安定した流れがある
- (2) 発問指示は何度くり返しても同じ言葉で言える
- (3) 作業指示・活動内容が明確である
- (4) 説明がシンプルであり言葉が極めて短い
- (5) 個別評定があり多くの子を褒めている
- (6) きれいでていねいなノートを全員が書いている
- (7) 授業の流れが骨太であり脱線をしない
- (8) 変化のあるくり返しで全員を習得させている
- (9) 授業時間がのびない
- (10) いつも笑顔で子どもをどならない
- 2 「規律ある授業」の下準備 これくらいは
- X 教師の指導力
- 1 小1プロブレムって何だ?
- 2 モンスターペアレント?
- 3 いや,教師の指導力だ
- おわりに
はじめに
私事で恐縮である。
一昨年の6月に学校で倒れ,意識不明になった。
そのまま5ケ月の入院となり,病院は2つの医院をまたいだものとなった。
昨年の4月から校務に復帰し,現在まで無事に勤めている。
入院当初から「すごい回復力ですね」とか「こんな回復は奇跡的です」と先生方から言っていただいた。
リハビリ中に職員の方を子ども役にして,模擬授業もした(内容はかなりいいかげんだったと思う)。
とにかく一所懸命だった。
いや,一所懸命と言うより,必死だった。
必死と言うより,もがいていた。あがいていた。
自分の思い通りに動いてくれない身体に,1人地団駄を踏むことが何度となくあった。
情けなくて涙が出た。
だれにも見られないようにトイレで泣いた。
今は,おそらく外から見ると「普通」に戻ったのだと思う。
この文章もパソコンで打っている。
他のだれにも遜色はないスピードだと思う。
3,4,5年の算数TT,4年と5年の書写,5年生の理科を受けもたせてもらっている。
時には1時間目から6時間目まで,2階と3階を行き来し,あたふたとしながらも大きなミスなく,仕事をこなしている(と思う)。
知らない人が見たら,病気のことなど分からないだろう。
それでも「障害」は残る。
それこそ特別支援を要する子どものように,「軍手を2枚はめて」作業するようなものである。
昨年の1月から3月。つまり,復職の直前。
群馬,東京,新潟でたて続けにTOSS授業技量検定を受けた。
そこには最高のリハビリがあった。
しかし,結果は散々なものだった。
当然である。TOSSは実力の世界だ。
その場に立ったら言い訳はきかない。
また,しようとも思わない。
「障害」の残る身には,コンテンツの操作さえ重労働だった。
ミスも,多岐にわたり,多種多様にあった。
そんな中,3月の新潟で向山洋一氏に声をかけて頂いた。
正直,何を言われたのかは覚えていない。
しかし,氏の言葉,氏の笑顔に,私は涙した。
あふれる涙を止めることはできなかった。
会場のトイレに駆け込んだ。
涙は次から次へとあふれ,しばらくの間,トイレから出られなかった。
だれよりも,向山氏に声をかけられたことで救われた。
苦しかった入院生活も,必死だったリハビリも,家で悶々として過ごした日々も……。全てが涙と一緒に流れていった。
「規律」の中でこそ,子どもたちは「自由」を勝ち取る。
担任を離れているからこそ,腹の底からの実感として分かることを本書には綴ってある。
本書は,新潟で昨年の8月に行われたワンポイントセミナーのプロット審査で,江部満氏にプロットを拾ってもらったから日の目を見た。
江部氏には感謝の気持ちでいっぱいである。
また,この日を迎えられたのは,入院中にずっと付き添ってくれた家族のおかげである。感謝は言葉にならない。
全ての人に感謝の気持ちをもって。
平成22年12月 新潟向理研代表 /冨山 一美
たくさん刊行されている。
その中でも一押しなのは,本著である。
なぜ,一押しか。
それは,冨山一美氏個人が著したものだからである。
つまり,富山氏のこれまでの教職経験や教師修業が
ぎゅっと凝縮された一冊なのである。
だから,一冊の重みが違う。
読み応えがある。
特に,
「はじめに」
「V 規律ある授業を支える7カ条」
「W 規律ある授業をつくるために」
は極めて具体的だ。
これが教職経験と教師修業がなせる文章なのだ。
ぜひ,若い先生,悩まれている先生に読んでほしい。
私も,そのような教師の一人である。