- まえがき
- T エネルギー教育と科学的思考力
- 1 エネルギー教育の目的
- (1) なぜエネルギー教育が必要なのか
- (2) エネルギー教育のねらい
- @ 事実を知る
- A 比べる
- B 未来につなげる
- 2 科学的思考力
- (1) 科学的とはどういうことか
- (2) 科学的思考力
- 3 新学習指導要領とエネルギー教育
- (1) 新学習指導要領の内容
- (2) エネルギー教育で身に付ける力
- @ 多面的・総合的に考える力
- A 因果関係を把握する力
- B 見抜く力
- C 問題解決の方法を見いだす力
- D メリット・デメリットを考える力
- E 科学的な事実に基づいて判断する力
- (3) エネルギー教育と科学的思考力
- U 最新のエネルギー教育の授業 (1)
- 1 電気自動車の仕組みが分かれば未来も変わる
- (1) 電気自動車
- (2) 原理の応用
- (3) 授業の構成
- (4) 実際の授業
- 2 太陽光発電のメリット・デメリットを考える
- (1) クリーンエネルギーと太陽光発電
- (2) メリット・デメリット
- (3) 授業の構成
- (4) 実際の授業
- 3 風をエネルギーに変える風力発電 太陽光発電のメリット・デメリットをもとに考える
- (1) 風の利用
- (2) 3年生に新しく入った単元
- (3) 授業の構成 〜学習したことをもとに考える〜
- (4) 実際の授業
- 4 逆転の発想 〜振動力発電〜
- (1) エネルギーはどこにでもある
- (2) 思いは実現する 〜小学生の頃のアイデアから〜
- (3) 実際の授業
- V 最新のエネルギー教育の授業 (2)
- 1 エネルギーシステムが変わる 〜地産地消から個産個消へ〜
- (1) エネルギーシステムの転換
- (2) 食育の方法を関連させる
- (3) 実際の授業
- 2 日本の森とエネルギー
- (1) 日本の森
- (2) エネルギー源としての森
- (3) 実際の授業
- 3 バイコロジーとまちづくり
- (1) バイコロジー
- (2) 自転車とまちづくり
- (3) 実際の授業
- 4 緩和と適応
- (1) 緩和と適応
- (2) 日本人の知恵とこれからの生活
- (3) 実際の授業
- W 科学技術創造立国を支える取り組み
- 1 2つのオリンピック
- (1) 日本の技術と創造を支える2つのオリンピック
- (2) 技能オリンピックの成果
- 2 科学オリンピックを授業で取り上げる
- (1) 実際の授業
- (2) スポーツ以外の競技
- あとがき
まえがき
以前私の住む町を含む広い地域で停電がありました。年の瀬が押し迫る寒い時期でした。日本の停電はすぐに復旧するということが世界的にも有名ですがそのときはなかなか復旧しませんでした。すると,私の住む町にわざわざ遠くからストーブを求めて多くの人達がお店にやってきました。私の住む町は全国的にも有名なストーブの会社があるので他の店よりもたくさんあるだろうと思ったのでしょう。では,どうしてストーブなどを買い求めに来たのでしょうか。それは現在のストーブの多くはファンヒーターが主流で電気がないとつかないものばかりだからです。停電では全く用をなさなかったのです。そこで,昔のようなマッチでつけるタイプを買い求めに来たというわけです。私はこのことを教訓として昔ながらのストーブを捨てずに1台だけ置いておくことにしました。
拙宅は建ててから10年ほど経っていますが,その屋根に6畳ほどのガラスのパネルが上がっています。夏場はガラス面で暖められた空気を温水利用し,お風呂やシャワーに使います。ガラス面の空気は常に出入りしているので家の中は意外と涼しいのです。また,秋から春にかけては家の中の暖房に使います。暖められた空気を床下に送り,各部屋に送風する仕組みになっています。雪が降るまでの間,日中太陽が出ているときなら家の中が暖かいのです。家を建てた当時,ハウスメーカーは太陽光発電についてはまだまだ消極的でした。まして雪国のことですから家族はガラス面を屋根にのせることさえ反対でした。しかし,この10年ほどの間は太陽の恩恵を随分と受けることができましたし,家族は天候や電気の節約などに関心を持つようになったようです。今なら即ソーラーパネルを取り付けるでしょう。
エネルギー問題と言うと実に遠くのことのようで身近な暮らしにはあまり関係のないことのように受け取られがちですが、意外と私達の身近に起こり,そして関心の持てることなのです。
さて,エネルギーに関わる取り組みはものすごい勢いで変化しています。
なぜなら,エネルギーに関することは国の存亡に関わりますから,政治主導で進められます。一旦決まったことは即実行に移されます。
また,エネルギーを生み出す最先端技術はまさに日進月歩です。
次々と新しい技術が生み出され,それをもとにした取り組みがなされます。
となれば,1年前や半年前の情報や技術さえ過去のものになります。
エネルギー教育で取り扱う内容やデータも同じことが言えます。
学校の図書室にある環境やエネルギーの図鑑や本に記されている内容の一部は使えなくなっています。
最近,書店ではエネルギーに関連した様々な書籍が目を引きます。
・電気自動車に関連するもの
・自然再生エネルギーに関するもの
・エネルギーと環境に関するもの
・エネルギーと経済を論じたもの
・スマートグリッドに関するもの
経済書をめくれば必ずエネルギー問題について触れています。
新書にもエネルギーについて論じているものも多く見られます。
ところが,教育書においてはあまり多くは見られません。
日本をはじめ世界の国々がエネルギー問題に関心を注ぎ,これから先の新たなエネルギーを模索しているのです。地球温暖化とも大きく関わってきますから楽観できないのです。
多くの先生方がエネルギー教育を取り上げて授業を行い,子ども達にエネルギーの現状と未来のあり方について考えさせる必要があります。
そこで,本書はエネルギー教育を通して科学的思考力を育てる授業をいくつか提案します。原子力や核融合,新しいこれからのエネルギーなどについても取り上げなければなりませんが自然再生エネルギーを中心に授業を組み立てました。
また,最近では図解入りの新書などがよく見られます。エネルギー教育はどうも難しいと思われる方にも手に取って読んでもらえるようにそれぞれの章にいくつか「図解」を入れました。
授業についても解説についてもまだまだ不十分な点が多くあります。
皆様方からの御批正をいただければ幸いです。
2010年12月 /高野 久昭
正に渾身の1冊である。
本著には,エネルギー教育の授業についての
具体的な発問・指示と資料が掲載されている。
これ1冊で私のようなビギナー教師にも追試ができる。
なぜか。
特別な準備が必要ないからである。
校内や身近にあるもので,エネルギーについて学ぶことが
できる授業ばかりである。
教室においておくと,たいへん便利な1冊であることは
まちがいない。
その上で,高野氏に2つのお願いをしたい。
@タイトルに「科学的思考力」とある。
だから,子どもたちの思考場面の描写や実物ノートの
掲載を,より充実してほしい。
A今回は「エネルギー教育」であった。
次の著書では,別の内容での「科学的思考力を育てる」
授業提案をしていただきたい。できるだけ,早急に。
Aについては,科学の進歩のスピードは
とてつもなく速い。
本著の内容は,現在は最先端であるが,
1年後にはどうなっているか。
だからこそ,高野氏の次回の著作の早くの刊行が
待たれるのである。