- まえがき
- ◆はじめる前に …Getting Started
- ◆さあ,はじめよう! …Making the Project
- 事例集
- 1 5! 10! 15!…ねっ☆ Counting to 50 by 5's
- 2 あっ,ごみ袋だ!! いや,たこだった Kite
- 3 うまく運べるかな? Crane
- 4 おしゃべりくまくん パクパク Paper Bag Bear
- 5 おもい入れ紙皿 Paper Plate Work
- 6 くるくるパック Sprinkler
- 7 この形,何に見えるかな? Alphabet Pictures
- 8 これでどこでもスラスラ書けるよ Memo Pad
- 9 サンタさんティッシュとって! Santa Tissue Box
- 10 ストロー吹いてデザイン Straw Paintings
- 11 だれの卵? A Chick Hatched from an Egg
- 12 ちいさいワッ! おおきいワッ! Ring Toss
- 13 ドアノブにもバレンタインデー St. Valentine's Day Doorknob
- 14 どうしてくっついているのバッジ Crown Cap Badge
- 15 ぬれてもだいじょーぶ Waterproof Boat
- 16 パーティ パーティ Party Decorations
- 17 パタパタ鳥 Flapping Bird
- 18 パッ! ラ,シュートッ!! Parachute
- 19 ひなだるま Snowman Ohinasama
- 20 プレゼントが楽しみ Christmas Stocking
- 21 ぼくの手 どこまで とぶのかな Beanbags
- 22 ぼくんダー,カレンダー Calendar
- 23 ホワイトクリスマス ペン立て Pen Stand
- 24 ポンでっぽう Pistol
- 25 ミニ ムービー Mini Movies
- 26 わゴムはここよ!! Rubber Band Holder
- 27 わっ!! 変わった!! Quick-change picture
- 28 何が買えるのかな 自販機 Vending Machine
- 29 干支かざり Mouse
- 30 巨大スネークがいく Flying Snake
- 31 合体飛んでクリップ Flying Paper Clips
- 32 私のドリームタウンはこんな感じ! My Dream Town
- 33 紙こうもり ぶらぶら Halloween Bat
- 34 紙なのに笛 Paper Whistle
- 35 紙皿天使 Angel
- 36 昇り降りするクモ A spider going up and down
- 37 折り紙おひなさま Dolls through the Girls' Festival Season
- 38 洗剤能力 Indian Ink Design
- 39 早くこいこいクリスマス!! December Calender
- 40 点字で名前を書くと… My name in Braille
- 41 飛び出た! 七面鳥だ!! Turkey Pop-Out Card
- 42 木工ツリー Wooden Christmas
- 43 目はここで,口はここ… Fukuwarai
- 44 目もまわる紙コップ Propeller Plane
- 45 ポータブル イースターラビット Easter Rabbit
- 46 風といっしょに走ろう Portable Pinwheel
- 47 ゆれるクリスマス Lantern
- 48 バランスって難しいね Certain Centers
- 49 わりばし発射機 いけーっ!! Catapult
- 50 記号が絵 Drawing
- 51 小麦粉で粘土ができるの? Making Play Dough
- 52 へびのびっくり箱 Jack in a box
まえがき
子どもにどんな英語を与えたいか? どんな英語を聞かせたいか? 彼らの人生のはじめにどんな英語に触れさせたいか? ……という大人が子どもに「よかれ」と考えた英語を与える発想をやめたとき,子どもに与えたい英語が「見えてくる」。大人が子どもに「よかれ」と考えた英語は,子どもが発した欲求ではない。「勉強」としての英語を経験した大人が,英語をやるからにはこれらは必要であろうと「決めた」ものだ。
何かを作るということ,つまり工作をするということは,子どもの興味・関心がそこに集中することになる。子どもは「勉強」「覚えなければ」という強制された緊張感から解放される。そこで語られる英語は「勉強」の対象ではなく,自分の作りたいものを実現するために必要な「道具」になり,「機能としての英語」という認識が無意識のうちに子どもの中に形成される。“What color of crayon do you want?”と先生が聞いて,子どもが“Yellow, please.”と答えたら,これは「色」の勉強ではない。子どもは黄色いクレヨンが必要なのだ。子どもはそこを黄色で塗りたい。先生もそのことを聞いている。工作での英語のやり取りは,工作を完成させていくのに切実かつ不可欠なやり取りになってくる。
先生は工作を完成させるのに必要な英語をどんどんしゃべる。言われている生徒の方は,目の前で工作が展開されているのだから,その英語が何についてか,何を指示・命令しているのかが,日本語の説明・解説・訳なしに,目で見ておおざっぱに理解できる。個々分からなくても,全体にこんなことを言っているんだということが分かり,反応する。しかも,子どもは先生の英語を日本語に訳していないので,その反応は「即座」だ。
「どうやってくっつけるのかな?」「どこを折るのかな?」「次はどうするのかな?」「絵は自分の好きなのを描いていいのかな?」「色は?」など,作品が完成に向かう過程は,子どもにとって,創造に関わる楽しい時間となる。たくさん聞くうちに英語の音・リズムに慣れ,その内容が分かるようになる。英語への動機付けとして,「工作」はうってつけと言える。聞けば聞くほど,使えば使うほど「機能としての英語」が磨かれていく。
先生が“Today we use a piece of paper. Take your ruler and measure 8cm from an end. Draw a line. And then, cut along the line. Cut as straight as you can.”と言う。「見れば分かる」という工作の利点に助けられて,子どもたちが先生の英語に反応している。紙を取り出し,定規で端から8pを測り,線を引き,その線にそってできるだけまっすぐにはさみで切っている。英語を聞き続けていられるだけでもすごいと思うが,これが英語を全く知らずにはじめた子どもなのだと思うと,畏敬の念すら覚える。私たち大人が全く知らない言葉においても,子どもは同様にやってしまえるだろうと思うと,畏敬の念は益々増す。大人は英語を聞くと無意識のうちに日本語に訳す。そのように学校教育で訓練された。そしてその訳した日本語をたよりに理解しようとする。訳せないところは,理解できないということになる。また大人は英語を「分析」してかかる。「measureはここでは動詞で使われている。」「endはここでは,『終わり』という意味ではなく,『端』という意味か。」など。しかし子どもは先生から発せられた英語を「固まり」として全体的にとらえる。分析より先に体が動く。
普段の英語教室のあい間に,年中行事にあわせて時折やっていた図画工作がはじまりで,ついには「英語で工作」という教室を立ち上げるに至った。4年前のことだ。本書の英語はアメリカ人の先生が,その教室で子どもたちに語りかけたもので,まさに英語を母国語とする人にしか発することのできない自然な表現である。これこそ子どもたちに聞かせたい絶妙な英語表現である。
子どもを「観察」していると「見えてくる」ものがある。クラスが終わると子どもは外に出る。ふと気がつくと子どもたちが庭の一角で何かやっている。泥んこだ! 水浸しだ! 自分たちで工夫しながら何かやっている。静かだ! さっきまでのクラスでは,うるさくて注意するのに忙しかった同じ子どもたちとは思えない。黙々とやっている。こうしよう。ああしよう。こうなったらこうしよう。スコップが要る。木の枝が要る。水を流そう。川ができる。葉っぱを浮かべよう。これはダムだ。もっと広げよう。深くしよう。工夫しながらみんなの頭がフル回転している。子どもは放っておくと泥遊びをするようにできているのだ。子どもは作ることがうれしいのだ。作っていて楽しい子どもには,泥んこも,水浸しも気にならない。これが子どものやりたいことだからだ。子どもは作りたがっている。
いつか子どもは「成長」して,泥んこを嫌がるようになる。水浸しになったらあとが困ると思うようになる。これらをいとわない「能力」があるうちに英語も与えたい。子どもの時にしか実現できない能力を引き出したい。
2002年10月 /箕浦 永生
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- 明治図書