- まえがき
- 一 斎藤喜博に挑戦―万葉集の授業
- 1 悲劇の皇子・有間皇子を題材にした授業
- 2 斎藤喜博との違い
- 3 「有間皇子と万葉集」の指導案
- 二 小林一茶の知られざる世界を授業化する
- ―小林一茶の二面性の授業
- 1 知られざる俳句に潜む一茶の二面性
- 2 会場全体を惹きつける授業の導入と終末
- 3 「小林一茶の俳句」指導案
- 三 先行実践を疑え! 正岡子規の「赤蜻蛉筑波に雲もなかりけり」の授業
- 1 サークル員の授業
- 2 先行実践の授業
- 3 「筑波」を調べる
- 4 扱う対比を変える
- 四 向山一門ライセンスセミナーで提案した代案授業「日本人の○○○」
- 1 日本人の美徳を何で授業するか
- 2 「日本人の◯◯◯」の授業展開
- 五 TOSS授業技量検定で五段を取った授業「世界を一周した日本人」
- 1 「近代日本の国づくりはこの旅から始まった」への疑問
- 2 夏のセミナーテキストでの仕掛け
- 3 向山洋一氏がすごみを感じた授業
- 六 古代のロマンが蘇る「海を渡った縄文人」の授業
- 1 縄文人から人類の出現へ
- 2 豊富な写真資料を使ってWEBコンテンツで授業を進める
- 七 憲法記念日での問題提起「救国のトリック 日本国憲法の授業」
- 八 一〇〇周年記念に行う日露戦争 二つの授業
- 1 日本の教科書はこれでいいのか! 「教科書が語る日露戦争」
- 2 日本海海戦に焦点をあてた日露戦争の授業
- 九 日本にも大停電は起きる!? 「BLACKOUT」の授業
- 一〇 日本の今日的課題「領土問題」を授業化する
- 1 沖ノ鳥島で日本の未来を授業する
- 2 領土問題のポイントを訴える「北方領土」の授業
- 一一 問題提起のある授業はこう創る
- 1 教材との出合い
- 2 ブリッジを架ける
- 3 ムダを極限まで省け
- 4 授業時間は八割、あとの二割は対応力
- 5 さらなるレベルを目指す―授業の組み立てを学ぶ
- 6 美しく終わる
- あとがき
まえがき
過去何回か模擬授業を行ってきた。
参加者の規模は五〇名から一〇〇〇名とさまざまであった。
五〇名であろうが一〇〇〇名であろうが授業に軽重はない。一〇〇〇名の参加者の前での授業であっても、授業者は参加者全員の顔が見えなければ話にならない。一〇〇〇名の中のたった一人の手の動きが見えなければ話にならない。
参加者が多いから焦ったとか緊張したというのではまだまだレベルが低い。反対に授業者は参加者全員を授業に巻き込むことができなければならない。
一〇〇〇名ものセミナーでは子ども役が二〇名ほどいるが、子ども役だけを相手にしているようでは、これまたレベルが低い。
名の知れた有段者の授業は、子ども役だけでなく会場全体とのやりとりがある。やりとりがなくても空間支配力で包み込む凄さがある。会場の空気が変わるのである。
このような有段者も最初の授業はレベルの低い授業であったはずだ。おそらくTOSS授業技量検定のD表にさえ手が届かない授業であったはずである。
私自身もそうであった。人前で模擬授業をするようになったのは、ここ四、五年のことである。偶然舞い降りてきたチャンスを逃がさずに、未知の世界に勇気を出して入ったからこそ、大舞台での授業を経験することができるようになった。
模擬授業をするたびに鍛えられたような気がする。それまでは教材研究に何十冊もの本を読むということがなかった。
一、二冊読んだだけで授業をしていた。それが、多くの先生方の前で何回も授業をしていると、つまらない授業をすることができなくなった。
と言っても誰も知らない内容の授業を作るのは至難の業である。そうではなく、知っていることでも新しい提案、主張があれば、多くの参加者が驚いてくれる、参加してよかったという感想を残してくれる。そのような授業をめざすようになった。
問題提起のある授業はそうできるものではない。しかし、教材研究をコツコツ毎日続けていれば、ある日突然神が舞い降りてきて、このような授業を作りなさい、問題提起はこれですよと囁いてくれるようになる。
神が夢の中で囁くのである。そのような世界が現実にあるのだ。
本書には私が過去何回か行った模擬授業の中でも、特に問題提起を意識して作った授業だけを集めた。
第一巻にも模擬授業を多く収録したが、本書に収録した模擬授業は、第一巻に載せた授業以後の模擬授業である。新しく目にする授業も多いと思う。拙著を読んで、問題提起のある授業に挑戦される先生方が多く現れることを願っている。
二〇〇六年五月吉日 /松藤 司
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- 明治図書