- まえがき
- T 「子どもの勉強観」を変えるとっておきのネタ
- 一 勉強観を変えた教師
- 二 授業は勝負である
- 三 調べることは本当に面白い
- U 「聞く技能」がすべての学習の基礎・基本
- 一 ユーモアのある「聞き方技能」を育てる
- 二 「はてな?」発見が「見る」ことへ発展
- 三 面白い教材を提示して「はてな?」発見の訓練をする
- 1 「はてな?」発見ができるか
- 2 面白い教材を提示する
- 四 「子ども研究」で今問われている課題
- 1 子どもの「変化」をとらえる目
- 2 記録をとらずに記憶する
- V 誰がこんな子どもにしたのか
- 一 過保護は子どもの目をダメにする
- 「おりこうさんだから、おとなしくしていてね」
- 親も教師も好きな子ども
- 「これを見てごらん」
- 「いい子だから─」はこわいことば
- 二 親(教師)が変われば、子どもも変わる
- 子どもは親の鏡
- 子どもは教師の鏡でもある
- 二重面相を育てる親(教師)
- 頭でっかちな現代っ子
- W ユニークな見方・考え方を育てる方法
- 一 見方をきたえる
- 本当の姿を見ているか?
- 「驚き」をもって見ているか
- 手でみる
- 足でみる
- 頭でみる
- 心でみる
- みる力を育てる
- 二 自分の生活をもたせる
- 四年生の子どもの一つの実態
- ゆさぶり
- 子どもの反応
- 「自分の生活」をもっている子ども
- 三 本をたくさん読ませる
- 小さい時ほど本好きになりやすい
- 本を好きにする方法
- 本を読ませる意味
- 四 くり返し見せる工夫
- 固定観念をくずす見せ方
- 書くこととつなぐ
- 心の中を字にする
- 五 ユーモアのある見方を育てる
- ユーモアのある見方・考え方
- ユーモアは小さい時ほどよく育つ
- ユーモア不足の大人
- X こんな見方・考え方を育てたい
- 一 身のまわりが見える目
- 一年生でもこんなに見える
- 人の温かさが見える子ども
- 二 一枚の絵がこんなに豊かに見える
- 1 「長篠の戦」の絵
- 絵を見直す契機
- 戦場の旗は「勤務評定」用
- 火縄銃の有効距離はどのくらい?
- 鉄砲一挺の値段は?
- 三千挺の鉄砲を三隊に分けたわけ?
- 当時の合戦は「雨天順延」
- 鉄砲がまたたく間に広まったわけ?
- 武田の騎馬隊の強さの秘密
- 農民は「高みの見物」
- 裸の武将が戦っているのはどうして?
- 鉄砲を防ぐ工夫
- 2 検地の絵は「下田」か?
- 絵の読みとり
- 検地の絵にぬけているもの
- 3 源氏物語絵巻
- 源氏物語絵巻を読む
- 子どもの自由研究
- 三 実物の裏が見える目
- 1 さとうきびから沖縄の気候が見える
- 一七本のさとうきび
- 節の間隔のちがい
- さとうきびは北向きに倒れる?
- さとうきびで沖縄の気候がわかる?
- さとうきびを作るわけ
- ハウス園芸
- 2 三十三間堂の地下が見える
- 3 奈良・京都に寺が多いわけ?
- 子どもの考え
- 権力者は土建業者か?
- 南無妙法蓮華経の意味?
- 4 りんごジャムから流通経路が見える
- 四 歌や物語の裏の意味が見える目
- 1 「ずいずいずっころばし」の本当の意味?
- 2 お江戸日本橋七ツ立ちするわけ?
- 3 一寸法師のモデルは誰か
- 五 ことばの語源が見える目
- 1 「下らないもの」
- 2 「はたらく」
- 六 人のくらしが見える目
- 1 人の心理をよむ
- 2 生き方を考える
- Y 見ることは生きること
- 一 経験欠乏症候群からの脱皮
- 「見る」ということ
- 自分の目で見る
- 二 求められる「学習」観の転換
- 学校で成績をあげるには
- よい子イメージの転換を
- あとがき
まえがき
今に限らず、いつの時代でも教育界に向けられる目は厳しい。それは、社会の人々が日本の将来のために有為な人材を育ててほしいと願っているからである。教育のあり方が、国の将来にかかっているからである。この社会の要請に、今の日本の教育界は応えているといえるだろうか。ちょっと心もとない感じがしている。
学力低下、学級崩壊、マナー不足の子どもの続出。それに何よりも授業の質の低下が指摘され、教師の研修も、初任研からとうとう十年研までしなくてはならなくなった。社会はどんどん変化しているのに、教育界は旧態依然としてなかなか変わらない。
子どもたちは、面白くもおかしくもない授業に耐えかねて、小・中学生まで新聞に投稿するまでになっている。ある高校生は、「教師の質の悪化はすさまじい。もっと生徒本位の授業を考えてほしい」と、悲鳴とも思えるような投稿をしている。これは、子どもたちの「声の代表」とわたしは受け止めた。これとの関係か、大阪では学力不足と認定された教師が分限免職になった。
こうした社会的状況を「社会からの要請」と受け止め、「指導力アップ術シリーズ巻」を、この機に出すことにした。今ほど教師の指導力が注目されている時代はないからである。
まず、「授業とは何か」ということを明らかにしながら、今求められている「真のプロ教師像」を究明してみた。それはただの指導技術ではダメである。プロ教師は、深く確かな内容と、子どもに対する深い愛情の裏づけのある人でなくてはならない。
保護者たちは、担任教師の実力を、いろいろな面から常に観察している。昔ながらの授業をしていたのでは、たちまち「指導力不足」のレッテルをはられる時代である。こうならないよう、教師は常に研修にはげまなくてはならない。そのお手伝いを本シリーズでしてみたいと考えたのである。
授業を面白くし、子どもに実力をつけるには、教材の把握はもちろんであるが、学級の質が大きくものをいう。学級づくり、それも楽しい学級づくりをしながら、子どもが「はてな?」を発見し、それを追究することに熱中し、ひいては「追究の鬼」といわれる子どもを育てたいのである。
長年の経験を生かして、学級づくり、授業づくり、授業がうまくなるレシピを書いた。教材開発のしかた、子どもに調べる力のつけ方なども明らかにした。平成一四年度から総合的学習が本格的に実施に移された。これについても今までいろんな提案をしてきたが、今回のシリーズの中でも、「こうすれば必ずうまくいく」という内容と方法を明らかにし、それを提案している。やり方によっては、総合は実に面白い。力もつく。
今の教師たちに足りないのは、実力だけではなくユーモアも足りない。ゆとりがない。もちろん、保護者にも足りない。このギスギスした社会をユーモアで乗り切ってほしいと願い、この面の提案もした。
要するに、本シリーズは、授業論、学級経営論、教材開発論、総合的学習論、指導技術論、そして、ユーモア教育論等々、現時点での私の総力をあげて総合的に取り組んだものを提案したものである。一読されて御指導いただければ幸いである。
二〇〇三年六月吉日 /有田 和正
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明治図書
















